交通事故を防止するためにできる対策|企業ができる5つのこと
交通事故は、ドライバーの命だけでなく、企業の社会的責任や信頼性に大きな影響を与えます。
とくに、ドライバーの過労による交通事故は、企業の責任が問われるケースが多く、交通事故の防止対策は必要不可欠です。
また、従業員に対して、安全運転意識を高めるために、事故が発生しやすいルートの共有や運転指導を実施することも重要です。
そこで本記事では、交通事故が発生する原因や、ドライバーができる交通事故の防止対策、企業が取り組むべき事故防止対策について解説します。
目次 / このページでわかること
1.交通事故が発生する原因
交通事故を防止するためには、事故原因を把握し、ドライバーや車両の安全を守る対策作りが重要です。
そこで本章では、交通事故が発生する原因や特徴について解説します。
交通事故の8割は人的要因
交通事故は、多くの要因が複雑に絡み合って発生しますが、大きく分けると
- 人的要因
- 環境要因
- 車両要因
の3つに分類されます。
とくに「人的要因」は交通事故の原因の8割を占め、ドライバーや自転車、歩行者による「ながら運転・脇見運転・居眠り運転・飲酒運転・信号無視」などによって交通事故が引き起こされています。
これらはすべて、安全運転の意識や心がけがあれば、本来、防止できるものです。運転する際は、気をゆるめず安全運転を心がけましょう。
死亡事故の半数は安全運転義務違反
安全運転義務違反とは、道路交通法第70条で定められている「安全運転の義務」を怠った際に、科される罪状です。
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
引用元:道路交通法 第70条(安全運転の義務)|e-Gov法令検索
令和3年中の交通事故発生件数は30万5,196件で、そのうち死亡事故は2,583件でした。
さらに、死亡事故の違反内容を見ると、安全運転義務違反が死亡事故全体の53.6%(1358件)を占めていることがわかりました。
安全運転義務違反 1,358件(53.6%) | 漫然運転 | 353件 | 13.7% |
---|---|---|---|
運転操作不適切 | 334件 | 12.9% | |
安全未確認 | 297件 | 11.5% | |
脇見運転 | 257件 | 9.9% | |
その他 | 144件 | 5.6% |
なお、死者数は前年と比較して7.2%減少していますが、死者数の57.7%は高齢者です。
近年、高齢者ドライバーによる交通事故や、道路の横断中に高齢者が車両と接触する事故が発生しているので、近くに高齢の方がいる場合は、注意喚起を行ってください。
2.交通事故を防止するための行動と対策
交通事故を防止するためには、ドライバーだけでなく、歩行者や自転車もそれぞれの立場から対策をとることが重要です。
本章では、ドライバーや歩行者、自転車が行うべき対策について、それぞれの立場から詳しく解説します。
ドライバーの交通事故対策
ドライバーができる交通事故対策は「事故が発生しやすい状況を知ること」です。
交通事故には発生しやすい場所・時間帯・時期があります。
市街地の交差点
全交通事故の約76%が市街地で発生しており、とくに交差点で発生した事故が占める割合は約55%となっています。市街地は、人通りが多く、狭い道も多いため、走行する際は十分気をつけましょう。
朝、夕方、夜間
朝の8時台・夕方の18時台は、交通量が増え、事故が発生しやすい状況が作られます。一方で、夜間は、交通量が減るため、スピードを出しやすく、暗い視界の中で危険に気づくのが遅れる傾向があります。
7〜8月、12月
夏場はお盆休みなどの連休が多いため、観光地や帰省先への移動が増え、交通量が増加し、事故のリスクが高まります。また、12月は積雪や路面の凍結によるスリップ、日照時間の短さにより、視界が悪くなることから、事故が発生しやすい時期となっています。
もし、今後交通事故が発生しやすい状況で運転をする場合は、危険意識を高めて、慎重な運転を心がけてください。
歩行者・自転車の交通事故対策
歩行者や自転車が行うべき、交通事故の防止対策は以下のとおりです。
- 交通ルールを守る(横断歩道をわたる、信号を守る、自転車は左側を走行するなど)
- 夜間・早朝は、反射板やライトをつける
- ながら歩き、ながら運転はしない
- 交通量の多い道路を避ける
- 道路に急に飛び出ない
歩行者や自転車が絡む事故は、交通ルールが守られていないために発生する傾向が強いです。基本的な交通ルールを遵守するだけで、事故のリスクを大幅に減らせるので、できることから取り組みましょう。
3.企業が行うべき交通事故防止のためにできる5つの対策
企業が交通事故を防止するには、従業員へ安全運転の重要性を啓発したり、具体的な取り組みを行ったりすることが必要不可欠です。
そこで本章では、企業が行うべき交通事故防止の対策について5つ紹介します。
安全運転宣言や交通事故防止ガイドラインの策定
安全運転宣言とは、企業や団体組織が、交通安全への取り組みを強化するために、社内外へ掲げた宣言のことです。安心安全な交通環境の構築に向けて、積極的に社会に貢献する姿勢を示す手段にもなっています。
また、ガイドラインを作成することで、自社のルールや行動指針を明確化し、従業員の安全意識を向上させるメリットがあります。さらにガイドラインをもとに、定期的な研修や運転指導を行うことで、交通事故のリスクを下げることが可能です。
安全運転管理者・運行管理者の任命
法律に基づき、安全運転管理者や運行管理者を任命することは、交通事故の防止に効果的です。
【安全運転管理者】
ドライバーの健康状態や酒気帯びの確認、運転日報などの記録書類の整理、社内教育の実施を担う。
【運行管理者】
バス・トラック・タクシーなどの緑ナンバーの事業所に配置する必要がある役職。ドライバーの過労運転を考慮した運行計画の策定と実施、乗務員の健康状態と酒気帯びの確認を行う。
安全運転管理者や運行管理者が、ドライバーだけではカバーしきれない事務的な仕事を行ったり労働状況を管理したりすることで、ドライバーの負担を減らし、事故防止に繋げることができます。
関連記事:『安全運転管理者とは?選任義務から罰則、業務内容まで詳しく解説』
『運行管理者とは|業務内容や必要資格、安全運転管理者との違いを紹介』
徹底したアルコールチェックの実施
国土交通省では、これまでの飲酒運転による悲惨な交通事故の発生をふまえ、2023年12月から、白ナンバー車におけるアルコール検知器を使用したアルコールチェックを義務化しています。
企業がアルコールチェッカーを導入し、運転前に必ずチェックを行うことで、飲酒運転を未然に防止することが可能です。
最近は、クラウド管理が可能なアルコールチェッカーが普及しており、手間だった日報の作成などが簡単に行えるようになりました。また、なりすまし防止機能がついている検知器も多く、従業員による替え玉の防止にも効果的です。
安全運転管理サービスや車両管理サービスの導入
安全運転管理サービスや車両管理サービスを導入することで、リアルタイムでの運転状況の把握、走行ルートの指示などが行えます。安全運転管理サービスや車両管理サービスには、デジタコ・ドライブレコーダーなどがあります。
とくにデジタコの場合、車両の急ブレーキ・急加速、アイドリング回数なども把握できるため、ドライバーの運転の癖を見つけ、運転指導が行えるため、危険運転のリスクを下げることが可能です。
従業員にポスターや社内メールで安全運転を意識させる
従業員に安全運転を意識してもらうためには、普段からポスターや社内メールで、わかりやすい事例やメッセージを共有することが大切です。
注意喚起・月別の安全運転目標などを記載し、ポスターは毎日目のつくところに貼ったり、メールの場合は、お昼休憩などの決まった時間に送信すると確認しやすくなります。
また、運転前の点呼で、安全運転目標を共有するのも効果的です。事業所の環境に合わせて対応を変えてみてください。
4.まとめ|交通事故を起こさないためにできることを実践しよう
本記事では、交通事故が発生する原因、「ドライバー」「歩行者や自転車」「企業」の3つの立場で取り組める交通事故の防止対策について解説しました。交通事故を防ぐには、それぞれの立場で責任を持った行動をとることが重要です。
ドライバーは、アルコールチェッカーの利用や安全運転意識の向上を徹底し、歩行者や自転車は、交通ルールの遵守につとめましょう。また、企業は、車両の運転支援システムを活用するなど、ドライバーの負担を減らす対策も有効です。
それぞれの立場で今できることから実践し、安心安全な社会を目指しましょう。