動態管理とは|取り組むべき理由やメリット・動態管理システムの機能や選び方を紹介

近年、運送・物流業界を中心に注目を集めている「動態管理」ですが、具体的な業務内容や役割についてご存知でしょうか?
動態管理とは、車両の現在地や周辺状況をリアルタイムで把握し、業務の効率化や安全管理を支援する業務やシステムを意味します。
車両管理や運行管理と似ている点がありますが、違いを理解することで、自社の課題解決に必要な管理方法やITツールの導入が可能です。
コストの削減、業務効率の向上、コンプライアンス強化につながるため、近年では、運送・物流業界だけでなく、建設、警備、訪問介護などの業種でも活用され始めています。
そこで本記事では、動態管理の基本から導入のメリット、車両管理や運行管理との違い、活用されている業界、さらに動態管理システムの選び方や導入時の注意点をわかりやすく紹介します。
目次 / このページでわかること
1. 動態管理とは|企業が取り組むべき理由
業務の効率化や安全管理の強化が求められる運送業界において、「動態管理」は欠かせない取り組みとなりつつあります。
アルコールチェックや労務管理が厳格化する中で、車両やドライバーの動きをリアルタイムで把握することは、コンプライアンス強化や、業務効率向上の面において有効に働きます。
そこで本章では、「動態管理とは何か」という基本から、なぜ企業が積極的に導入すべきなのかについて詳しく解説します。
動態管理の意味
動態管理とは、車両・ドライバー・貨物の位置情報、稼働状況などをリアルタイムで把握・管理する業務を指します。
主にGPSやクラウドシステムを活用し、現場の「今」を把握することで、業務の効率化やトラブル対応をサポートします。
すでに、物流、建設、警備、訪問介護など、移動が多い業種では、積極的に導入されています。
企業が取り組むべき理由とは
動態管理の導入により、リアルタイムで車両やドライバーの位置情報を把握できるため、事業所から最適なルート指示が可能です。
これにより、燃料コストの削減やドライバーの身体的・精神的な負担軽減が期待できます。
さらに突発的なトラブル対応、顧客からの緊急の依頼、イレギュラー発生時に柔軟に対応できるため、顧客満足度の向上にも貢献します。
以前から運送業界では、車両に専用の車載器を取り付けて動態管理が行われていましたが、専用ソフトをインストールしたパソコンで、膨大なデータを確認する必要があり、多くの手間とコストがかかっていました。
しかし近年は、スマホやドライブレコーダー、アルコールチェッカーを活用した動態管理システムが導入され始めており、すべて自動で記録・管理されるため、より効率的に安全性を高めながら、動態管理が行えるように進化しています。
2. 動態管理|運行管理・車両管理・走行管理との違い
動態管理に似た業務で、「運行管理」「車両管理」「走行管理」があります。
それぞれの目的や業務内容は下の表のとおりです。
目的 | 主な機能や特徴 | |
---|---|---|
動態管理 | 効率的な業務運営やコスト削減、ドライバーや車両の安全確保を目的とする。 | リアルタイムで取得した位置情報や周辺状況をもとに最適ルートを指示したり、到着時間を調整する。取引先からの急な依頼や、災害時・渋滞時に迅速な対応が可能。 |
運行管理 | 安全確保の観点から、過労運転や過積載の防止などを目的とする。 | ドライバーの休憩場所の確保・管理・保守、運転指示書の作成、点呼やアルコールチェックの実施・記録・保存、ドライバーへの指導・監督などを行い、事故のリスクを低減する。 |
車両管理 | 社用車を安全かつ効率的に運用・管理することが目的。 | 車両管理台帳の作成、定期的なメンテナンスや点検の実施、保険や税金の管理や見直しを行い、事故のリスクを低減し、コストを最適化する。 |
走行管理 | 交通事故の防止、運行コストの削減が主な目的。 | 急発進・急ブレーキ、速度超過などの運転診断(危険運転)の記録・分析を行い、ドライバーへの運転指導に役立て、事故リスクを回避する。走行距離や走行時間をリアルタイムで確認し、安全性の向上を図る。 |
動態管理は、リアルタイムでの追跡に特化し、配送の可視化と運送ルートの最適化に貢献します。
運行管理は法律に基づいたドライバーの労務・健康管理が中心で、主に運行管理者が業務を担い、安全性の確保やコンプライアンス強化の役割を果たします。
車両管理は車両の資産価値を守るための定期点検や整備の記録が中心で、走行管理はドライバーの運転傾向を把握し、安全運転指導や事故のリスク回避に活用されます。
4つの管理業務は、機能や特徴が重なっている部分もありますが、それぞれ目的が異なります。
どれも運送・物流業界の業務効率化と安全性の向上に欠かせない取り組みです。
関連記事:
『車両管理とは?業務内容や企業にもたらすメリット・車両管理システムについて解説』
『運行管理者とは|仕事内容や必要な資格・安全運転管理者との違いを解説』
3. 動態管理で得られる4つのメリット
動態管理は、運送業において、単なる位置情報の把握にとどまらず、企業に多くのメリットをもたらします。
そこで本章では、動態管理で得られる4つのメリット、「事故リスクの低減」「業務効率の向上」「コスト削減」「法令遵守の徹底」について解説します。
事故リスクの低減
動態管理によって、急ブレーキやスピード超過などの危険運転が発生した地点を把握でき、ドライバーの運転特性に応じた安全指導が可能になります。
また、危険運転の発生地点を「ヒヤリハットマップ」として、全ドライバーに共有することで、事故の予防や注意喚起にも効果的です。
社用車による事故はドライバーの命を脅かすだけでなく、企業の社会的信頼の失墜にもつながるため、動態管理を適切に行い、事故リスクを低減することが大切です。
関連記事では、運転中のヒヤリハット事例や、企業におけるヒヤリハット対策、万が一、事故を起こした場合の対応手順などを紹介しているので、あわせて参考にしてください。
業務効率の向上
リアルタイムで車両の位置や進行状況が把握できるため、遅延や渋滞への迅速な対応が可能です。
事業所からドライバーに効率的な配送ルートを指示できるほか、適切な人員配置を実現でき、ムダな待機時間や走行時間を削減できます。
結果として、業務全体の効率が飛躍的に向上し、ドライバーの身体的・精神的負担軽減にも貢献します。
コストの最適化
動態管理により、走行ルートの最適化が可能になり、ムダな移動を減らすことで燃料費や整備費を削減できます。
走行データをもとに車両の稼働状況を把握すれば、過剰な車両の見直しや台数の最適化がすすみ、リース料や保険料、税金などの固定コストの削減にもつながります。
動態管理の導入により、大幅なコスト削減が期待できますが、単なる削減ではなく、質を保ちながら効率化を図れるため、バランスの取れた運行業務が行えます。
法令遵守の徹底
動態管理は、運行記録の自動保存や労働時間の管理により、道路運送法や労働基準法などの法令遵守をサポートします。
運送業界における過労運転は問題視されており、2024年6月からトラック運転手の時間外労働の規制が強化され、過労運転を行った場合、管理者や会社の責任も厳しく問われます。
スマートフォンアプリやアルコールチェッカーと連携した動態管理システムを活用すれば、日々のアルコールチェック記録や運転日報が自動的に記録されるため、不正や記入漏れなどの人的エラーの防止が可能です。
法令遵守に必要な情報を自動で記録・保存・管理できるため、社用車の保有台数が多い企業では、管理者の業務負担を減らす目的で、動態管理システムをはじめとするITツールの導入が積極的に行われています。
4. 動態管理が活用される業界
動態管理は、動くもの(車両・従業員・貨物)などの動きを可視化し、業務効率や安全性を高める手法として、多くの業界で導入がすすんでいます。
代表的な業界としては、以下のような業界が挙げられます。
業界 | 活用例 |
---|---|
運送・物流業界 | 位置情報をもとに効率的なルートを割り出しドライバーの労働時間を短縮/渋滞時や災害時における安全なルート指示/空いている車両と貨物の素早いマッチング/危険運転アラートで事故リスクを低減など |
建設業界 | 現場をストップさせないために資材搬入の到着時間を把握・管理/広い施工範囲でトラックの位置情報を取得し、配車指示を行う/資材搬入ルートの危険箇所を即時に連絡など |
営業・卸売業界 | 訪問先への効率的なルートの割り出し/訪問エリアや日報の自動作成/記録された走行データをもとに社員を評価するなど |
警備業界 | 緊急時における効率的な配車指示/警備員到着後、現場でトラブルが発生した場合の対応(本部で位置情報を把握、警察に連絡)など |
介護・訪問医療業界 | 位置情報をもとに効率的にスタッフを配置・配車指示を行う/緊急時に患者の一番近くにいる車両を向かわせるなど |
近年では、自然災害や大規模火災、テロなどの緊急事態に備えるBCP(事業継続計画)対策の一環として、動態管理を活用する企業が増えています。
万が一の際には、従業員や車両の現在地を即座に把握できるため、迅速な安全確認や指示が可能となり、従業員の安全確保と業務の継続につなげることができます。
5. 業務改善に貢献|「動態管理システム」とは
動態管理システムとは、GPSやクラウド技術を活用して、車両やドライバーの位置情報を把握し、「動態管理の業務を効率化するためのITツール」を指します。
スマートフォンアプリやアルコールチェッカーとシステムを連携すれば、いつでも現在地を確認できるため、配送ルートの最適化やムダな移動時間の削減が可能です。
また、到着予定時刻の予測や走行履歴の記録・分析が可能になり、顧客へのスピーディな対応や効率的な運行管理に役立てることができます。
近年では、導入コストの低下やシステムの多機能化が進み、中小企業でも導入のハードルが低くなっています。
6. 動態管理システムを選ぶ時の2つのポイント
動態管理システムを導入する際は、自社の業務課題や運用環境に適したシステム選びが重要です。
本章で紹介する2つのポイントを押さえることで、導入後の効果を最大化し、業務効率や安全性の向上、コスト最適化につなげられます。
さまざまなサービスの中から、自社に適した動態管理システムを選びましょう。
課題解決に適したシステムを選ぶ
まずは自社が抱える課題や目的を明確にし、課題を解決できる機能が備わったシステムを選びましょう。
以下の表を参考に、動態管理のシステム選びに役立ててください。
解決したい課題 | 重視すべき機能 |
---|---|
配送効率を高めたい | ・GPSの精度が高い ・全車両の位置をリアルタイムで把握できる ・AIによるルートの最適化ができる ・スマートフォンや専用端末でドライバーと迅速に連携できる など |
事故リスクを低減したい | ・走行データを記録、分析できる ・急加速・急ブレーキなどの回数による運転診断機能がついているもの ・ドライブレコーダー映像が自動で記録、保存でき、自動で事業所(管理者)に送信される など |
ドライバーや管理者の業務負担を軽減したい | ・走行距離や時間、走行ルートが自動的に記録できる ・運転日報を自動的に作成できる ・アルコールチェック漏れの自動通知機能がある など |
動態管理システムを導入する際に、費用の安さばかりを重視してしまうと、肝心の課題が解決できず、かえってムダなコストがかさむ恐れがあります。
自社の課題解決に適した機能を把握することが、導入を成功させるための重要なポイントです。
利用するデバイスで選ぶ
動態管理システムには、主に6つのデバイスがあります。
それぞれの特徴やメリット・デメリットをふまえて、予算や従業員の使いやすさを考慮しながら選びましょう。
デバイス名 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
OBD-II型 | 車両のOBD-IIポートに直接接続して、走行データを取得 | ・設置が簡単 ・エンジン情報など車両の状態も取得可能 |
・OBD-IIポートのない車両は非対応 |
シガーソケット型 | シガーソケットに差し込むだけで利用可能 | ・工事不要ですぐに使える ・コストが比較的安い |
・取得できる情報が限定的な場合がある |
アプリ型 | スマートフォンに専用アプリをインストールして管理 | ・導入コストが低い ・手軽に始められる |
・スマートフォンの持ち忘れや操作ミスが発生する可能性がある |
ドライブレコーダー型 | GPSを搭載したドライブレコーダーと連携して管理 | ・事故時の証拠映像を残せる ・危険運転をすると位置情報などが自動的にシステムに送信される ・安全運転指導に活用できる |
・機器の設置費用が高め ・取り付け工事が必要な場合がある |
デジタルタコグラフ型 | GPSを搭載したデジタルタコグラフと連携して管理 | ・運行時間、車両速度、走行距離などの走行データの自動記録が可能 ・勤怠管理や運行管理に強い |
・導入コストが高め ・取り付け工事が必要な場合がある |
アルコールチェッカー型 | GPSを搭載したアルコールチェッカーと連携して管理 | ・飲酒運転の防止に効果的 ・法令遵守(アルコールチェック義務)に有効 |
・動態情報の取得は、別機器との併用が必要な場合がある |
それぞれの特徴を理解し、自社の運用に最適なシステムを選ぶことが重要です。
動態管理システムの費用相場は、デバイスや機能によって大きく異なりますが、一般的に、1台あたり月額1,000〜3,000円、初期費用は1台あたり数万〜20万円程度が目安です。
初期費用無料やレンタル可能な動態管理システムもあるため、予算と目的に合わせて最適なシステムを選びましょう。
7. 動態管理システム|導入時の注意点
動態管理システムの効果を最大化するためには、導入時の運用設計やドライバーの理解を得ることが欠かせません。
本章では、導入時に押さえておくべき3つのポイントを解説します。
従業員に導入目的や活用方法を説明する
動態管理システムを導入する際は、管理者だけでなく、ドライバーにも導入目的や活用方法を丁寧に伝えることが重要です。
「監視される」といった不安感を払拭し、事故防止や業務の効率化につながる仕組みであることを共有しましょう。
従業員の理解と協力が得られることで、運用効果が大きく変わります。
業務フローを見直す
動態管理システムを導入する場合、導入後に必要のない業務を外し、体制を整えることが大切です。
業務フローが見直されないままだと、システムの効率的な運用が難しくなり、現場に大きなストレスを与える可能性があります。
ドライバーは使い方や業務の組み込み方がわからない状態のまま、結局、現場の状況が優先され、システムの導入費用がムダになる可能性も考えられます。
導入前に現行の業務プロセスを整理・見直し、システムと整合性が取れるよう調整することが重要です。
必要に応じてマニュアルの更新や業務ルールの見直しも行いましょう。
テスト運用を行う
動態管理システムは、導入後すぐに使いこなすのは難しいため、本格運用前にテスト期間を設けましょう。
ドライバーには操作方法のトレーニングを行い、管理者も運行データをどのように活用し、指導に活かすかをあらかじめイメージしておくことが大切です。
ドライバー、管理者ともに理解を深めておけば、万一のトラブルにも冷静に対応できます。
また、テスト運用後に現場からのフィードバックを得ることで、従業員の理解促進や制度定着にもつながります。
8. アルコールチェッカーで動態管理が可能に!「アルキラーNEX」の新機能
クラウド型アルコールチェッカー「アルキラーNEX」に新たに搭載された動態管理機能では、アルコールチェックと同時に社用車の動態管理が可能です。
アルコールチェックの実施だけでなく、車両の位置情報をリアルタイムで地図上に表示し、運行状況を瞬時に把握できます。

把握した情報をもとに、ドライバーへ業務指示ができ、事故発生時や災害時におけるドライバーの安全確保にも活用可能です。
ほかにもさまざまな新機能を追加し、ドライバーの安全確保や業務の効率化を強力にサポートします。
運転経路の表示 | 各車両の運転ルートを地図上に表示。走行ルートの確認やルートの見直しが可能。 |
---|---|
走行管理の自動計算 | GPS位置情報をもとに、走行距離を自動で計算。オドメーターの数値入力の手間をなくし、ガソリン代などの経費算出にも利用可能。 |
運転報告ごとの写真添付 | 運転報告ごとに写真を最大3枚まで添付できる機能を追加。訪問先到着の報告や、経費発生時のレシート画像の添付などに活用可能。 |
有料道路料金の入力 | 有料道路料金の入力が可能になり、写真添付と組み合わせて、運転日報上で経費の報告も可能。 |
従来の機能である車両予約や走行管理、免許証管理などもあわせて活用することで、アルコールチェッカー1台で、運転データの一括管理が可能になります。
「アルキラーNEX」は、企業の法令遵守の徹底をサポートし、安全運転管理や事故リスクの低減に貢献します。
さらに詳しい情報や導入コストについては、以下のアルキラーNEX製品ページをご覧ください。
9. まとめ|適切な動態管理で業務改善に取り組もう
本記事では、動態管理の概要から導入のメリット、活用されている業界、動態管理システムの概要や導入時の注意点について紹介しました。
動態管理は、車両やドライバーの位置情報を可視化し、業務効率の向上やコスト削減、安全対策の強化を図る業務です。
適切なシステムを選択・活用することで、日々の業務におけるムダを省き、従業員の負担を減らすだけでなく、顧客満足度の向上も期待できます。
自社の課題に合った動態管理システムを導入し、継続的な業務改善に取り組みましょう。