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コネクテッドカーとは?メリットや期待される効果・クルマの未来について解説

コネクテッドカーは「インターネットにつながった車」の総称です。

最新技術を搭載した次世代の自動車であり、リアルタイムで交通情報を送受信したり、自動決済ができたりします。

他にもさまざまな便利機能が備わっているため、快適なドライブを楽しむことが可能です。

そこで本記事では、コネクテッドカーの機能や可能性を深掘りするとともに、メリット・デメリットについて解説します。

1.コネクテッドカーとはTCU機能を搭載した車両

コネクテッドカーの普及は今後さらに拡大すると考えられ、IT企業や部品メーカーの自動車関連市場への参入が相次いでいます。

注目度が高まりつつあるコネクテッドカーですが、具体的な機能や市場規模はまだまだ情報が不足しているようです。

そこで本章では、コネクテッドカーの仕組みや注目された背景、2024年時点での市場規模について詳しく解説します。

コネクテッドカーの仕組み

コネクテッドカーの仕組みは、車両に搭載された車両通信ユニット(TCU:Telematics Control Unit)を通じて、インターネットに接続する技術に基づいています。

このTCUには、通信機能を備えたドライブレコーダーやカーナビ、ETC車載器などが含まれます。

さらに、センサー・レーダー・カメラなどのデバイスが、エンジンやブレーキの作動状態、燃費、周辺の障害物、道路状況を記録します。

記録したデータは、異常の検知時にドライバーへ通知するほか、インターネットを介して送信され、クラウド上で収集・分析されます。

分析結果は、ほかの車両や交通関連施設、ドライバーに提供され、交通安全の向上や効率的な運行に役立てられています。

コネクテッドカーが注目された背景は?

コネクテッドカーが注目された背景には、通信技術の進化と社会的なニーズの高まりが挙げられ、深掘りすると3つの理由があります。

① 無線通信の高速・大容量化

無線通信の高速・大容量化により、リアルタイムかつ容量の大きなデータの送受信が可能になったこと。

② 車載情報通信端末の低廉化・スマートフォンなどによる代替化

ドライブレコーダーやカーナビ、ETC車載器が安価になり手に入りやすくなったこと。カーナビアプリやニュースアプリで代替するようになったこと。

③ ビッグデータの流通の大幅な増加

クラウド・コンピューティングの普及により、データの迅速かつ大容量な生成・流通・集積・分析・活用が可能となり、ビッグデータの流通が増加したこと。

従来の車はデータ受信のみ可能でしたが、コネクテッドカーでは双方向通信が可能になり、より便利で快適なドライブが実現しました。

また事業者においては、効率的な配送ルートの指示が可能になり、都市部の渋滞緩和やドライバーの過労運転防止が期待されています。

参考:コネクテッドカー|総務省

【2024年】コネクテッドカーの市場規模は?

矢野経済研究所が2017年に発表した、国内における2016年のコネクテッドカーの市場規模予測は3,980億円です。

内訳として、B2C市場が712億円、B2B市場が1850億円、研究開発投資が1418億円と推計されています。

消費者には見えにくいB2B市場や研究開発投資の成長が見込まれ、2025年には全体で2兆円規模まで成長すると予測されています。

さらに富士経済の発表では、2035年の新車販売台数の約9割がコネクテッドカーになると予測されています。

参考:主要データ集|国土交通省

2.コネクテッドカーに期待されること・メリットは?

コネクテッドカーは緊急時の通報や保険料の削減、災害時の経路案内などが可能です。

さらに盗難対策やエンターテインメント機能が強化され、次世代の車両として期待されています。

そこで本章では、コネクテッドカーのメリットや期待されていることについて紹介します。

緊急通信システムにより事故被害を軽減する

日本における交通事故は毎年30万件前後発生しており、高齢者の操作ミスや自転車走行中のスマホ操作による、ながら運転の死亡事故が増加しています。

安全運転を心がけても事故にあう可能性はなくならず、緊急時には警察や救急に通報しなければなりません。

しかし、単独事故でドライバーが自力で通報できない場合などは、通報が遅れて死亡事故につながるケースがあります。

コネクテッドカーであれば、車体の異常を検知し自動で通報が可能です。

さらにGPSを利用し、警察や救急が事故現場にいち早く駆けつけ、事態の素早い収拾や重症化のリスク低減が期待できます。

参考:交通事故発生状況|警察庁

テレマティクス保険により保険料が安くなる

コネクテッドカーでは、走行距離や運転技術をもとに保険料を算出する「テレマティクス保険」の導入が加速しています。

【テレマティクスとは?】
車両と通信技術を掛け合わせ双方向通信を行い、リアルタイムの交通情報などを提供する技術を指します。「テレコミュニケーション(通信)」と「インフォマティクス(情報科学)」を組み合わせた造語です。

以前から、走行距離により保険料は変化していましたが、同じ走行距離でも危険運転を行う人がいるため、安全運転を心がける人にとって不公平な仕組みでした。

しかしコネクテッドカーでは、走行スピード・急加速・急ブレーキの情報が記録されます。

さらに運転する時間帯ごとの事故リスクも加味され、適正な保険料の設定が可能になりました。

また、保険料を安くするために安全運転を心がける人が増え、交通事故の減少に一役買っています。

関連記事:『テレマティクスとは?活用事例とメリット・デメリットをわかりやすく解説

災害時に適切な経路をリアルタイムで取得できる

コネクテッドカーは、災害時に発生した渋滞や通行止めなどの最新情報をもとに、最適なルートを提案し、迅速かつ安全な交通をサポートします。

また、災害時はネット回線が混雑するため、専用のネットワークを用いて通信インフラとしても役立ちます。被災地への支援や連絡手段として活用が期待されています。

実際に熊本地震や能登半島地震では、トヨタ社がコネクテッドカーから取得した道路情報をもとに「通れた道マップ」を作成しました。

地震発生後は多くのアクセスがあり、車での避難や物流などに活用されました。

今後は、目的地に到着するまでの時間や、適切なルート案内の精度がさらに高まると期待されています。

盗難車両追跡システムにより追跡・通報できる

コネクテッドカーは、盗難防止機能にも優れています。

GPSにより車両の位置情報をリアルタイムで追跡できるため、盗難が発生した際に速やかな通報と回収が可能です。

「所有者がいない状況でドアを開けられた」「非正規の手順でエンジンが始動した」といった場合、車のセンサーやカメラがいち早く異常を検知し、コールセンターに通知が入ります。

その後、所有者にスマートフォンを通じてコールセンターから連絡が入り、被害届を提出することで警察による車両の追跡が開始されます。

また所有者の要望に応じて、コールセンターや警備会社による位置情報の追跡が可能です。

関連記事:『都道府県別の自動車盗難件数と効果的な防止策
車の盗難防止対策5選|盗まれた時の対応方法と対策グッズも5つ紹介

エンタメや新たなサービスの可能性

コネクテッドカーは、エンターテインメント機能の充実や新たなサービスの提供を可能にします。

従来はカーナビによるTV視聴が主流でしたが、今ではYouTube・Netflix・AmazonPrimeVideoなどの動画配信サービスの視聴も可能です。

さらにVR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を用いて、遠隔地の知人や家族を3Dアバターとして車内に登場させ、同乗しているように感じられる機能が開発されています。

また、車両センサーとクラウド上の収集データをもとに、建物の裏側やカーブの先をフロントウィンドウに映し出す機能の実装も行われています。

近い将来、コネクテッドカーは「移動する部屋」として、重要な会議や子どもの発表会など、さまざまな場面で活用される可能性が広がっています。

3.コネクテッドカーに関するデメリット・懸念点は?

コネクテッドカーは多くのメリットをもたらしますが、デメリットや懸念点も無視できません。

とくに、セキュリティに関する課題解決や対策強化が必要とされています。

本章では、インターネットに接続されることで生じる課題について解説します。

ハッキングのリスク|セキュリティの問題

コネクテッドカーは、スマートフォンと同じく常にインターネットに接続されています。

そのためハッキングのリスクがあり、攻撃者が車両システムに侵入した場合、エンジンの停止・ブレーキ操作の妨害など、重大な事故を発生させる可能性があります。

自動車メーカーだけでなく、コネクテッドサービスを運営するサーバーやクラウド、コンテンツの提供会社のセキュリティ対策も必要です。

小さな穴(クラッカー)がひとつあるだけで、攻撃者は簡単に侵入・攻撃を仕掛けてくるため、今後はコネクテッドカーの普及とともに、セキュリティ強化への関心が高まると予測されます。

プライバシーの侵害や個人情報流出のリスク

コネクテッドカーは運転データや位置情報、通信履歴など膨大な個人情報を収集します。

運送事業者や旅客事業者では、リアルタイムで車両情報を取得し最適なルートを指示するなど、効率的な運行のために活用されています。

しかし、収集したデータが適切に管理・保護されていない場合、第三者による不正利用や流出が懸念されます。

そのため、コネクテッドカーを利用する企業やドライバーへの十分な説明や、データ管理の徹底化が求められています。

自動車の価格が高騰する可能性

コネクテッドカーには、高度な通信技術やセンサー、ソフトウェアが搭載されるため、従来の車両に比べてコストが大幅に増加します。

また、有料のアプリや配信サービスの利用でさらにコストがかかる可能性があります。

しかし家電やスマートフォンと同じく、普及初期はコストが高いため、今後は技術の進歩と量産により価格が徐々に下がることが期待されています。

4.まとめ|コネクテッドカーは今後のクルマの未来を大きく変える

本記事では、コネクテッドカーの機能やメリットデメリットについて解説しました。

コネクテッドカーは通信技術の進化とともに、移動手段やライフスタイルを根本から変える可能性を秘めています。スマートシティ実現への貢献など、社会全体への影響は計り知れません。

一方で、サイバーセキュリティや個人情報の保護、価格高騰といった課題への対策も必要です。

こうした課題を解決することで、コネクテッドカーは未来のクルマ社会を牽引する存在となるでしょう。

さらなる市場拡大が見込まれているため、自動車メーカーだけでなく、IT企業や部品メーカーの動向にも注目していきましょう。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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