自動ブレーキの義務化はいつから?対象車や既存車への取り付け・運転時の注意点を解説
近年、自動車の安全技術は飛躍的に進化しており、なかでも注目されているのが「自動ブレーキ」です。
自動ブレーキは事故を未然に防ぐ技術として、多くの命を救う可能性が期待されています。
日本では自動ブレーキの義務化が段階的に進められ、2028年までにすべての新車に自動ブレーキが搭載される見通しです。
そこで本記事では、自動ブレーキの機能や義務化の流れ、既存車の自動ブレーキ装置の取り付けについて詳しく解説します。
また、運転時に知っておきたい注意点についても紹介します。
目次 / このページでわかること
1.自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ・AEB)とは?
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ・AEB)とは、前方の車両や障害物を検知し、衝突のリスクが高いと判断した場合に自動でブレーキを作動させるシステムです。
近年、安全技術の進歩により自動ブレーキは多くの車両に搭載されています。
そこで本記事では、自動ブレーキの認定基準や、類似した安全装置であるASVやABSとの違いについて解説します。
自動ブレーキの認定基準
自動ブレーキの性能は、各国や各地域で定められた認定基準によって評価されます。
日本では3つの認定基準が国土交通省によって定められ、すべてクリアする必要があります。
【認定基準】
- 静止している前方車両に対して50km/hで接近した際に、衝突しない又は衝突時の速度が20km/h以下となること
- 20km/h以下で走行する前方車両に対して50km/hで接近した際に衝突しないこと
- 1および2において、自動ブレーキが作動する少なくとも0.8秒前に、運転者に自動ブレーキを促すための警報が作動すること
認定基準に合格すると、優れた性能を持つ自動ブレーキの証として「先進緊急ブレーキシステム(AEBS)」に認定されます。
国土交通省のホームページでは、自動ブレーキの認定車両一覧が確認可能です。
ASVとの違い
AEB(Autonomous Emergency Braking)は衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)を指し、ASV(Advanced Safety Vehicle)は先進安全自動車を指します。
先進安全自動車とは、ドライバーの安全運転を支援するシステムが搭載された自動車のことです。
ASVは自動車そのものを指すため、ASVにAEBが搭載されている場合があります。他にもASVにはレーンキープアシスト、ふらつき警報、横滑り防止装置、駐車支援システムなどが搭載されています。
ABSとの違い
ABSとはアンチロック・ブレーキシステム(Anti-lock Brake System)の略称で、急ブレーキをかけたときなどにタイヤがロックするのを防ぎ、車両の進行方向の安定性を保つ装置です。
他にも、ハンドル操作で障害物を回避できる可能性を高める機能があります。
ABSが搭載されていると、濡れて滑りやすい路面などでは制動距離が短くなる場合もあれば、長くなる場合もあります。ただし、深雪時、砂利道、タイヤチェーンを装着しているときは、制動距離が伸びる場合があるため、注意が必要です。
ABSはあくまでもハンドル操作性を確保する装置であり、制動距離を短くするための装置ではないことを覚えておきましょう。
2.【例外あり】自動ブレーキは2021年より義務化
自動ブレーキは2014年より段階的に義務化がスタートし、2021年より国内で販売する新型の乗用車と軽乗用車への自動ブレーキ搭載が義務化されました。
ただし、現時点で既存車や二輪車など一部の車両には義務化が適用されていません。
そこで本章では、現時点で自動ブレーキが義務化されている車両や、今後の自動ブレーキ義務化の動きについて解説します。
新型車は自動ブレーキ義務化の対象
2024年12月時点で、自動ブレーキの義務化対象車両は以下のとおりです。
- 2021年11月以降にフルモデルチェンジした国産新型車
- 2024年7月以降に販売された新型の輸入車
現時点で、二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ、そりを有する軽自動車、非牽引自動車は対象外です。
また、2021年10月以前に販売された新型車を含む車両も対象外です。
2028年までにすべての新車が義務化の対象に
すでに国土交通省から今後の義務化のスケジュールが発表されています。
【自動ブレーキ義務化スケジュール】
- 2025年12月以降に販売される国産継続生産車
- 2025年9月以降に販売される新型のトラック、バス
(※総重量3.5トンを超えるトラックと乗車定員が10人以上のバスが対象) - 2026年7月以降に販売される輸入継続生産車
- 2027年9月以降に販売される軽トラック
2028年までには、すべての新型車や継続生産車に自動ブレーキの義務化が適用される予定です。
これにより交通事故の減少や、より高度な安全機能を備えた自動ブレーキの開発が期待されています。
3.自動ブレーキが義務化された背景
「なぜ自動ブレーキの義務化が急がれているのか?」と不思議に思う方もいるでしょう。
義務化の理由には、「居眠り運転による重大事故の発生」「飲酒運転や高齢ドライバーによるブレーキの踏み間違い」といった社会問題が関係しています。
最初の自動ブレーキ義務化の動きは、2012年に群馬県で発生した居眠り運転による大型バスの重大事故がきっかけでした。
乗客45名のうち7名が死亡、3人が重体、他の35人とドライバーが重軽傷を負い、これを受けて国土交通省は高速バスへの自動ブレーキの義務化を決定しました。
また、近年は高齢ドライバーによるブレーキの踏み間違い事故の増加や、飲酒運転の取り締まり強化の動きもあります。
こうした背景が、現在の一般乗用車への自動ブレーキ義務化につながっています。
4.既存車の自動ブレーキ取り付けはどうすべき?
自動ブレーキ義務化の動きが加速するなか、「いま乗っている車に自動ブレーキを付けた方がいいのか?」気になる方も多いでしょう。
そこで本章では、既存車に自動ブレーキを取り付けた方が良いのかという疑問や、後付けする方法を解説します。
既存車は非搭載でも罰則はない
現在の法律では、自動ブレーキが搭載されていない既存車に罰則はありません。自動ブレーキの義務化はメーカーに適用された制度であり、一般ドライバーが従う義務はありません。
2021年10月以前に販売された車両に乗っている方は、引き続き運転可能です。
しかし、事故リスクの回避や万が一の事態に備えて、自動ブレーキの取り付けを検討しても良いでしょう。
「踏み間違い防止装置」の後付けが可能
自動ブレーキは、カメラやセンサー、ブレーキやアクセルを制御する高性能システムを車体に搭載する必要があります。
そのため、技術的に後付けは不可能であり、自動ブレーキに近い機能を持つ「踏み間違い防止装置」の後付けが一般的です。
踏み間違い防止装置は、主に駐車時や低速走行時に作動します。また、後退時に強くアクセルを踏んだ場合や、強く踏み込んで急加速を行った場合にも作動します。
作動するとアイドリング状態になり、車内に取り付けたライトとブザーで警告されます。
なお、踏み間違い防止装置の後付けは、本体価格と取り付け工賃込みで4〜6万円程度で取り付け可能です。
性能が認定されている「踏み間違い防止装置」
踏み間違い防止装置は、各自動車メーカーや部品用品メーカーで販売されています。
自動ブレーキと同じく認定制度があり、以下2つの要件を満たした装置はPMPD(Pedal Misapplication Prevention Device)に認定されます。
【認定基準】
- 停止からフルストロークまでアクセルを踏み込んだ際、衝突しない、または加速を抑制(速度変化率0.3以上)すること
- 加速抑制時に警報が作動すること
認定を受けた踏み間違い防止装置一覧は、国土交通省のページより確認可能です。安全性が確保された装置を取り付けて、事故のリスクを下げましょう。
参考:ペダル踏み間違い急発進抑制装置の性能評価認定結果|国土交通省
ペダル踏み間違い急発進抑制装置性能認定結果一覧|国土交通省
5.自動ブレーキの過信はNG!機能しない条件とは
自動ブレーキは私たちの命を守る重要な安全装置ですが、完全に事故を防ぐことはできません。
本章では、自動ブレーキの搭載車両に乗る際の心がまえや、自動ブレーキが機能しない条件について解説します。
性能を過信しない
自動ブレーキは、安全運転をサポートする重要な機能ですが過信は危険です。あくまで運転支援システムであり、すべての状況で確実に作動するわけではありません。
国土交通省からは、自動ブレーキは補助機能であり、車種ごとに機能する条件を把握することが重要であるとアナウンスされています。
自動ブレーキの性能を正しく理解し、ドライバー本人が安全運転を心がけることが大切です。
自動ブレーキが機能しない条件
自動ブレーキは車種によって少しずつ性能が異なるため、運転前に性能について把握する必要があります。
自動ブレーキが機能しない条件は以下のとおりです。
- 各メーカーが定める速度を超えるとき
- 濃霧、豪雨、雪など視界不良のとき
- 強烈な日差し、逆光
- センサーと障害物の距離が近すぎるとき
- 人や車が飛び出したとき
自動ブレーキが機能する条件は取扱説明書に記載されているため、事前に条件を把握し、安全運転を心がけましょう。
6.まとめ|自動ブレーキ搭載車でも安全運転を心がけましょう
本章では自動ブレーキの機能や義務化の背景、既存車への後付けに関してや注意点について解説しました。
自動ブレーキは、交通事故を減らすために開発された運転支援システムです。しかし、悪天候や特殊な状況では機能しない可能性があるため、ドライバーの安全意識が事故防止の鍵となります。
あくまで補助機能であり基本的な運転技術が必要です。日頃から安全運転を心がけ、快適なカーライフを実現しましょう。