運行管理補助者とは?選任方法や業務範囲・権限について解説
事業用自動車の日々の安全な運行は、車両を運転しているドライバーだけで守られている訳ではありません。ドライバーの健康状態の確認や乗務割を作成するなど運行を管理している運行管理者や、その補助者による管理も大きな役割を果たしているのはご存じでしょうか?
この記事では運行管理補助者の選任方法や業務範囲、与えられている権限について詳しく解説します。
目次 / このページでわかること
1.運行管理補助者とは?
運行管理補助者とは、運行管理者が担う運行の安全を確保するための乗務割の作成や、点呼によるドライバーの疲労・健康状態の把握と安全運行の指示といった各種業務の一部を補助する重要な役割を担っている者のことを指します。
運行管理者の詳細や、選任については以下の記事で解説しています。
関連記事:『運行管理者とは|業務内容や必要資格、安全運転管理者との違いを紹介』
2.運行管理補助者の業務範囲や権限は?
運行管理者の補助者はあくまでも「運行管理者の履行補助を行う者」とされており、単独でドライバーに対する指導や運転指示書の作成といった代理業務を行うことはできません。
しかし点呼に関する業務については一部を補助することができると定められています。
本章では、運行管理補助者の業務範囲と与えられた権限について解説します。
運行管理補助者の業務範囲
運行管理補助者の業務範囲はある程度限られています。運行管理補助者は基本的には単独で運行管理に関する業務を行うことはできません。運行管理者の下で指導および監督を受けたうえで運行管理者の補助業務を行うのが役割です。
ただし、点呼に関しては運行管理補助者が単独で実施することが可能です。点呼についてさらに詳しくみていきましょう。
点呼でアルコールが検知された場合の必要な対応
点呼の際にドライバーからアルコールが検知された場合、運行管理補助者が判断してドライバーに指示を出すことはできません。速やかに運行管理者に連絡を行い、運行管理者の指示に従う必要があります。
点呼は実施回数の3分の2未満まで
運行管理補助者が実施できる点呼の回数には制限があり、月の総回数に対して3分の2未満と定められているので、超過しないように運行管理者と調整しながら点呼の実施を行いましょう。
運行管理補助者の権限
業務範囲と同様に、権限についても制限があります。運行管理補助者は運行管理者の業務履行を補助する者となりますので、運行管理者の業務とされているドライバーの指導や監督、運行指示書の作成など単独で業務を履行することはできません。
ただし、点呼に関する業務に関してのみ運行管理補助者が一部を単独で実施することが可能です。
3.【選任基準】運行管理補助者になるために必要なことは?
運行管理補助者になるためには運行管理者等基礎講習を修了している、もしくは運行管理者資格者であることが必要な条件です。
また、選任するにあたっては運行管理規定に職務や選任方法等を明記する必要があるので注意しましょう。
本章では、運行管理者の補助者になるために必要な流れを解説します。
運行管理者等基礎講習の受講
運行管理者の補助者は誰でもすぐになれるわけではなく、運行管理者等基礎講習を修了する必要があります。講習は「貨物」と「旅客」の区分に分かれているので、会社の業務内容に沿った講習を受講しなければなりません。
講習には3つの種類があり、「基礎講習」「一般講習」「特別講習」に分かれていますが、基礎講習を受講していれば問題ありません。講習にかかる時間は16時間(3日間)で受講するために必要な手数料は8,900円(税込)※1となっています。※1 2024年7月時点
運行管理者等基礎講習はどこで受けられる?
運行管理者等基礎講習の受講できる場所について、教習所や自動車学校などを中心に全国で行われていますが、会場によって「貨物」の講習にしか対応していないなど対応できる講習に違いがありますので申込みを行う前に受講したい講習が受けられるか確認することを忘れないようにしましょう。
参考:自動車総合安全情報(国土交通省)「運行管理者について」、NASVA(独立行政法人 自動車事故対策機構)「基礎講習」
運行管理者資格者証を持っている
運行管理者になるためには事業に応じて「貨物」または「旅客」の「運行管理者資格者証」を交付される必要があります。交付されるためには資格試験に合格するか、実務経験など必要な要件を満たす必要があります。
受験資格 | 試験の種類 | 試験科目 |
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要件 |
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参考:国土交通省「自動車運送事業の運行管理者になるには」
運行管理補助者の手続きは?
運行管理補助者を設ける場合、貸切バスなどの旅客事業者は運輸支局への選任の届出を行う必要がありますが、一般貨物自動車運送事業の場合は届出は不要です。ただし、職務および権限など業務に関する規程をまとめた運行管理規程を定める必要があります。
4.安全運転管理者と運行管理者の違いは?
安全運転管理者は白ナンバーの運行管理を行うのに対し、運行管理者は緑ナンバーの運行管理を行う業務を担っています。選任が行われていなかった場合の罰則などもそれぞれ違いがあります。
安全運転管理者と運行管理者の罰則の違い
安全運転管理者と運行管理者を選任していなかった場合の罰則の違いをまとめました。
安全運転管理者 | 運行管理者(旅客) | 運行管理者(貨物) |
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副安全運転管理者と運行管理補助者はサポート役
副安全運転管理者や運行管理者の補助者は運行管理を行う対象は異なりますが、運行管理業務のサポートを行うことが主な業務となります。
運行管理者についてもっと詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
関連記事:『運行管理者とは|業務内容や必要資格、安全運転管理者との違いを紹介』
5.運行管理補助者のQ&A
運行管理補助者についてここまで解説してきましたが、3つのよくある質問に回答します。
- ・運行管理者の補助者になれば、いつかは運行管理者になれる?
- ・定期的に講習を受ける必要はある?
- ・他の営業所と兼任しても大丈夫?
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運行管理補助者になれば、いつかは運行管理者になれる?
運行管理者になるためには所定の講習を5回以上受講する必要があるため、運行管理者の補助者になったからといって自動的に運行管理者になれるわけではありません。所定の講習を受けるとともに5年の実務経験を積む必要があります。
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定期的に講習を受ける必要はある?
運行管理者の補助者として業務を行うにあたっては一般講習を受ける必要はなく、基礎講習を修了していれば定期的な受講は必要ありません。
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他の営業所と兼任しても大丈夫?
運行管理規程に定めたうえで複数の営業所の補助者を兼任しても問題はありませんが、一般貨物事業に限られるので注意が必要です。以下の事例(ケース)を選任の際の参考にしてください。
ケース1:
A営業所に所属し一般貨物事業の運行管理者補助者をしている山田さんは、一般貨物事業を行っているB営業所とC営業所の運行管理者補助者としても業務を兼務できます。ケース2:
D営業所で一般貨物事業の運行管理者補助者をしている山本さんは、E営業所の旅客の運行管理者補助者として業務を行うことはできません。また、同じ営業所内のみに限られますが旅客と貨物の補助者の兼務も認められています。ケース3:
「旅客」と「貨物」の基礎講習を修了している山森さんはF事業所のそれぞれの補助者として業務を行うことができます。
6.まとめ
運行管理補助者の業務や権限については運行管理者のサポートがメインとなりますが、業務用自動車における安全運転を守るために必要な役割を担っています。
運行管理者だけでは業務負荷が大きくなってしまう恐れがあるため、補助者を設けることで上手く業務負担を軽減し、安全な運行管理ができるような体制を会社が整えていく必要があります。