通勤災害で会社の責任はどうなる?多様化する通勤手段(次世代モビリティ)のリスク管理と規程の作り方
自転車や電動キックボードなどの次世代モビリティの普及により、従業員の通勤手段は年々多様化しています。
利便性が高まる一方で、「通勤中の事故は、どこまで企業が責任を負うのか?」という疑問を抱える経営者や担当者の方は少なくありません。
企業のリスクの把握と合わせて、事故を防止するための安全対策を考えることも重要です。
そこでこの記事では、厚生労働省の定義やガイドラインに基づき、「通勤災害」の境界線や通勤手段ごとに考えられるリスク、トラブルを防止するために必要な安全管理規程の作成について、分かりやすく解説します。
アルコールチェッカーを活用したリスク管理や、通勤災害に関するよくある質問についてもQ&A形式で解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次 / この記事でわかること
1. 通勤災害とは?会社の責任が問われる「境界線」

通勤災害とは、労働者が住居と就業場所の往復中に負った負傷、疾病、障害、死亡のことを指し、原則として労災保険の対象です。
一方で、企業側に「安全配慮義務違反」や「使用者責任」などの過失が認められる場合には、損害賠償などの民事上の責任を問われるリスクがあります。
ここでは、通勤災害は「どこまでが会社の責任なのか」、厚生労働省の定義をもとに境界線を整理します。
1-1 労災保険が適用される「合理的な経路と方法」の定義
通勤災害として、労災保険が適用されるためには、「合理的な経路及び方法」での通勤であることが前提となります。
「合理的な経路と方法」とは、労働者災害補償保険法において、通勤災害が認められるための基準です。
以下のケースは、合理的な経路と方法として認められるとされています。
【合理的な経路及び方法】
- 当日の交通事情により迂回した経路
- マイカー通勤者が駐車場を経由して通る経路
- 通常用いられる通勤手段(公共交通機関、自動車、自転車、徒歩など)
通勤手段は、会社への届出の有無や頻度に関わらず、一般的に利用される交通手段であれば、法律上は通勤災害として認められます。
1-2 会社が訴えられるケース|安全配慮義務違反と使用者責任
通勤中の事故は「事業の執行」ではないため、原則として企業の責任外とされます。
ただし、例外として「安全配慮義務違反」や「使用者責任」が問われるケースがあるため、具体例を把握し、リスク管理を行うことが重要です。
| 概要 | 具体例 | |
|---|---|---|
| 安全配慮義務違反 | 従業員の健康や安全運転を確保するための管理や指導を怠ること。(民法第415条、労働契約法第5条に基づく) | ・飲酒運転のリスクがあるにも関わらず、アルコール検査をしていなかった ・電動キックボードで通勤をしているが、交通ルールの教育をしていなかった など |
| 使用者責任 | 従業員が業務中に他人へ与えた損害について企業が負う賠償責任のこと。(民法第715条に基づく) | ・会社指定の通勤手段で通勤中に事故を起こした ・マイカー通勤を推奨していた会社の従業員が事故を起こした など |
参考:労働災害の発生と企業の責任について|厚生労働省 [PDF]
従業員の通勤手段を把握し許可している企業には、一定の安全管理や指導が求められるため、対応が不十分と認められた場合、損害賠償責任を負う可能性があります。
「事業の執行」とは、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配・管理下にある状態のことをいいます。
1-3 交通労働災害防止ガイドラインの遵守がリスクヘッジになる
通勤災害のリスク対策で重要なのが、厚生労働省が公表している「交通労働災害防止のためのガイドライン」の遵守です。
このガイドラインは、企業が交通労働災害の防止を図るための指針として作成されています。
主な内容として、過労運転の防止、点呼による運転者の健康状態の把握、走行前点検、安全教育の徹底により、交通労働災害を未然に防ぐことが求められています。
2018年6月には内容が一部改定されており、貨物・旅客運送事業の省令改正に合わせて、睡眠時間確保のための労働時間管理や乗務前点呼の強化などが盛り込まれました。
ガイドラインに沿った対応を実施することで、事故発生時に適切な対応ができ、企業のリスク軽減につながります。
ガイドラインの内容を活用して、従業員の通勤時における安全管理を徹底しましょう。
参考:
・「交通労働災害防止のためのガイドライン」が改定されました|厚生労働省 [PDF]
・ 「交通労働災害防止ガイドライン」の改定について|公益社団法人全日本トラック協会
2.【通勤手段別】電動キックボード・自転車通勤の隠れた「リスク」とは?

通勤手段の多様化により、企業は従業員の通勤手段ごとのリスクを把握することが重要です。
特に、電動キックボードや自転車は、移動の手軽さがある一方で、交通違反や交通事故など、トラブルや通勤災害のリスクが高い点が特徴です。
そこでこの章では、企業が通勤手段ごとに注意したいリスクについて解説します。
2-1 特定小型原動機付自転車|免許不要による「ルールの過信」に注意
特定小型原動機付自転車に分類される一部の電動キックボードは、16歳以上は免許不要で運転できます。
しかし、「免許不要」という言葉が、自転車のような手軽さをイメージさせるため、交通違反や、危険運転を招き、事故やトラブルにつながる可能性があります。
特定小型原動機付自転車は、道路交通法上の「車両」です。
原則として車道の左側端を走行する必要があり、一時停止や飲酒運転の禁止など、厳格な交通ルールが適用されます。
地域の安全な交通環境を守るために、通勤手段ごとの交通ルール教育を徹底し、事故を未然に防ぐことが大切です。
ペダル付き電動バイクのモペットは、一般原付に分類されるため、免許の取得やヘルメットの着用などが必須です。
2-2 自転車|高額賠償事例が増加しているため「保険加入」が重要
自転車事故のリスクや怪我の危険性への関心が高まっており、令和6年4月時点で、34都道府県が自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化しています。
自転車は手軽な通勤手段ですが、平成25年には、自転車と歩行者の事故で、自転車側に約9,500万円の高額賠償が命じられた事例があります。
通勤時に事故が発生し、企業の安全配慮義務違反や使用者責任が認められた場合、高額賠償のリスクがあるため、保険への加入が重要です。
自転車通勤を認める企業は、通勤規程に保険加入の確認や更新確認のルールを明記し、安全管理を徹底しましょう。
2-3 マイカー・社用車|「飲酒運転」は企業の責任も
マイカーや社用車通勤において、企業が注意すべきポイントは従業員の飲酒運転です。
従業員が通勤中に飲酒運転による事故を起こした場合、企業に対して安全配慮義務違反や運行供用者責任が問われ、賠償責任を負う可能性があります。
「運行供用者責任」とは、自動車の所有者や使用者が、自身のために車を運行し、人身事故を起こした際に負う損害賠償責任のことです。主に社用車での人身事故に適用されます。
マイカー通勤や社用車通勤を許可している場合に、飲酒運転防止の指導やアルコールチェックを怠れば、企業の責任を問われる恐れがあります。そのため、日頃から安全運転指導などを徹底することが重要です。
また、飲酒運転により、企業名が公表されることで社会的信頼の失墜につながるリスクもあります。
ほかにも、業務時間外に社用車で飲酒運転を行った従業員に対し、企業が懲戒解雇を行い、従業員から訴えられたケースがあるため、安全管理規程の整備が重要です。
3.【3つの柱】多様な通勤を認めるための「安全管理規程」

従業員の自由な通勤手段を認める企業にとって、安全管理規程の整備は重要なポイントです。
「従業員の安全確保」と「企業のリスク対策」のバランスがとれた規程を作ることで、従業員の通勤の利便性を損なわずに、通勤災害や高額賠償のリスクを回避できます。
そこでこの章では、企業側が安全管理規程で整備しておきたい3つのポイントについて解説します。
3-1 許可制の導入|ルートと車両の事前申請を徹底する
通勤手段の管理には、許可制の導入が有効です。
従業員に対して、通勤ルートや使用車両を事前に申請させることで、リスクを可視化できるメリットがあります。
また、通勤災害が認められる条件のひとつとして、「合理的な経路及び方法」であることが定められているため、会社に届け出ている経路や通勤手段であれば、客観的に証明しやすくなります。
事故時の責任範囲も明確化でき、移動手段に応じた安全運転教育もしやすくなるため、通勤許可証を準備して、通勤ルートや移動手段を把握しましょう。
3-2 保険の確認|「自転車保険」や「自賠責」の更新を確認する
通勤ルートや使用車両とあわせて確認しておきたいのが、保険加入の有無や更新状況です。
近年、自転車による交通事故が問題視されており、一部の都道府県では、自転車保険への加入が義務化されています。
義務化されている都道府県に所在する企業が自転車保険に未加入の場合、現時点で罰則はありませんが、人身事故が起きた際は、企業に対しても高額な賠償金が発生するリスクがあります。
未加入の場合、全額自己負担となるため、義務化されていない地域においても、自転車保険への加入を必須とすると良いでしょう。
また、バイクや自動車を使用する従業員に対しては、自賠責保険や任意保険の加入状況を定期的に確認し、期限切れや更新漏れがないように管理しましょう。
3-3 飲酒運転の防止|通勤前・通勤後のアルコールチェックの重要性
通勤時に飲酒運転による事故が発生した場合、企業に対しても責任が追及される可能性があります。
前日に飲んだお酒が抜けていないケースでは、本人の自覚がないまま運転してしまう危険があるため、運転前後のアルコールチェックが重要です。
特に社用車通勤を認める場合では、アルコールチェックを取り入れることで、事故リスクの低減と企業の安全配慮義務の履行につながります。
万が一、飲酒運転による事故が発生した際は、初期対応から処分判断まで、法令に沿って進めることができ、企業のコンプライアンス体制を強化できます。
従業員との処分内容をめぐるトラブルを防止するために、就業規則に飲酒運転による社内処分の内容を明記することも大切です。
実際の運用方法や法令対応のポイントについては、以下の関連記事で解説しています。あわせて参考にしてください。
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4. 通勤災害が発生した場合にすべき企業の対応

通勤災害は、発生後の対応次第で企業の法的リスクや社会的信用に大きく影響する可能性があります。
特に法務や総務担当者にとっては、労災対応だけでなく、責任の有無の判断や社内対応の整理まで求められる場面も少なくありません。
あらかじめ対応の流れを把握しておくことで、混乱を防ぎ、適切かつ迅速な対応につなげることができます。
ここでは、通勤災害が発生した際に、企業が押さえておくべき対応のポイントを解説します。
4-1 初期対応|安全確保の優先と事実関係の把握
通勤中に事故が発生した場合は、まず従業員や被害者の安全確保と救護が最優先です。
従業員から電話がかかってきた場合、パニックになっている可能性も考えられるため、まず安全な場所に移動させて、怪我や被害者の有無を確認しましょう。
負傷者がいる場合は119番に連絡を入れ、事故の大小に関わらず警察にも連絡しましょう。
その後、事故の発生日時、場所、通勤経路、使用していた交通手段などの事実関係を速やかに把握し、記録することが重要です。
初期対応の遅れは、この後の労災認定や責任の判断に影響を与える可能性があります。
事故はいつ発生するかわかりません。事故発生時の報告ルールや連絡体制を事前に決めておき、誰でも対応できる仕組みづくりを整備することが大切です。
4-2 労災手続き|通勤災害に必要な書類準備
通勤災害として労災手続きを行う場合、以下のような給付が受けられる可能性があります。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 療養補償給付 | 怪我をした場合の診察代、薬代、手術代などに支給される補償 |
| 休業補償給付 | 労働者が負傷などにより労働できない場合に、賃金を受けない日の4日目から支給される補償 |
| 障害補償給付 | 労働者に一定の障害が残った場合に支給される補償 |
| 遺族補償給付 | 労働者が死亡した場合に遺族に支給される補償 |
| 葬祭料 | 労働者が死亡した場合に葬祭に必要となる費用として支給される |
| 傷病補償年金 | 労働者が負傷などにより、療養開始後1年6ヶ月を経過し、またはその日以降に「傷病が治癒していない」「障害の程度が傷病等級に該当する」のいずれかに該当した場合に支給される年金 |
| 介護補償給付 | 傷病補償年金を受け取る権利を持つ労働者が、「常時介護」または「随時介護」を要する状態にあり、実際に受けている時に支給される補償 |
企業の担当者は、給付の種類に応じた書類の準備が必要です。
なお、通勤災害で提出することが多い書類は、「療養給付たる療養の給付請求書(様式16号の3)」「休業補償給付の請求書(様式16号の6)」「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第16号の4)」などがあります。
申請書類は、厚生労働省のホームページからダウンロード、または電子申請システムが利用可能です。労働基準監督署でも受け取れます。
参考:主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省
申請には、医師の診断書や領収証などの書類が必要となるため、社内で必要書類や手続きの手順を整理しておくことが大切です。
なお、通勤途中の交通事故では、労災、任意保険、自賠責保険のどれを使うかを選ぶことができます。また、併用も可能です。
なお、通勤災害や労災保険の申請は、労働者の正当な権利であり、従業員が被害者である場合、会社が申請を拒否することはできません。
4-3 法的リスクの整理|安全配慮義務違反の有無などの確認
通勤災害における会社の責任は、原則として問われません。
ただし、例外として「安全配慮義務違反」や「使用者責任」が問われる場合があります。
例えば、危険な通勤手段やルートを黙認していた場合や、飲酒運転対策を講じていなかった場合などです。
事故後は、企業がどこまで通勤手段を管理・指導していたかを整理し、責任の有無を慎重に判断する必要があります。
法的リスクを正しく把握して、適切な対応と再発防止につなげましょう。
4-4 再発防止への取り組み|規程の見直しと社内教育
事故対応が完了した後は、通勤災害の再発防止策を講じることが重要です。
通勤手段や保険加入の有無、アルコールチェックの運用など、従業員の通勤に関わる安全管理規程を見直しましょう。
また、交通ルールや飲酒運転に関する社内教育を実施することで、従業員の安全意識の向上につながります。
事故をそのままで終わらせず、組織全体の安全管理体制の強化へとつなげていきましょう。
関連記事:
『運転中のヒヤリハット|事例や防止対策・事故を起こした場合の対応手順を紹介』
『交通事故を防止するためにできる対策|企業ができる5つのこと』
5. アルキラーNEXで実現する「見えない通勤リスク」の可視化

アルキラーNEXは、アルコールチェックの測定結果を、クラウド上で一元管理できる法人向けのアルコールチェッカーです。
通勤時のリスクは企業にとって把握しづらく、直行直帰やリモートワークの普及により、従業員の状態が見えにくくなっています。
こうした状況でも、アルキラーNEXを活用することで、場所を問わずアルコールチェックの実施や自動記録が可能となり、飲酒運転防止のリスク管理が徹底できます。
企業の安全配慮義務への対応としても有効な手段と言えるでしょう。
5-1 直行直帰や通勤でも重要なアルコールチェック機能
アルキラーNEXの活用で、直行直帰や自宅発の通勤でもアルコールチェックを確実に実施できます。
スマートフォンと連携し、どこからでも測定と記録が可能なため、出社を伴わない働き方でも、管理の抜け漏れを防げます。
また、測定結果はクラウド上に自動送信・記録されるため、リアルタイムで管理者が確認でき、遠隔でも安全確認が可能です。
通勤時の飲酒運転のリスクを可視化し、企業の安全配慮義務や法令対応を支えるツールとして役立ちます。
アルキラーNEX導入事例:誤検知の少なさが決め手。サポート活用で管理負担を削減し、車両910台の安定運用を実現|ミサワホーム株式会社
5-2 車両を一元管理する「車両管理機能」
アルキラーNEXでは、誰がどの車両をいつ使用しているかを把握できるため、マイカー通勤や社用車管理におけるリスク管理を進めやすいのが特徴です。
医療、不動産、インフラ、製造、建設など、幅広い業界で活用されており、万が一、事故渋滞や災害が発生した場合には、位置情報を瞬時に把握して、運転者に適切な指示が出せます。
さらに、免許管理や帳票の自動作成、稼働率や給油量の把握などもできるため、日々の管理業務や事務負担の軽減にも役立ちます。
関連記事:『車両管理とは?業務内容や企業にもたらすメリット・車両管理システムについて解説』
アルキラーNEX導入事例:クラウドで運転管理とアルコールチェックの両立を実現、「導入しない理由はなかった」|タカノホーム株式会社
5-3 「管理している」姿勢が社員の安全意識を向上させる
クラウドを活用したアルコールチェックや車両管理機能により、「会社が安全管理を徹底している」という意識が従業員に浸透し、飲酒運転の抑止や、安全運転への意識向上が期待できます。
酒気帯び確認をするツールとしてだけでなく、安全管理にも活用することが、通勤災害や交通事故の防止において大切なポイントです。
従業員にとっては、監視されているように感じる場合もあります。心理的負担がかかるため、アルコールチェッカーの導入時に運用方法や運用目的を説明することが大切です。
アルキラーNEX導入事例:簡単な操作で習慣化!社員の意識改革にも繋がりました|日本クリニック株式会社
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6.【FAQ】通勤中の安全管理に関するよくある質問

通勤中の事故や安全管理に関しては、「どこまでが会社の責任になるのか」「どのような対策が必要なのか」といった疑問を持つ企業も少なくありません。
電動キックボードなどの次世代モビリティの普及により、従来のルールだけでは対応しきれないケースも増えています。
ここでは、通勤中の安全管理に関して、経営者や企業の担当者から挙がりやすい疑問について解説します。
許可していない通勤手段で事故が起きたら会社の責任?
会社が許可していない通勤手段で事故が発生した場合、原則として企業の責任は問われにくいとされています。
通勤は「事業の執行」に該当しないため、民法第715条の使用者責任が適用される可能性は、一般的に低いとされます。
ただし、企業がその通勤方法を黙認していた場合や、十分な指導や管理を行っていなかった場合には、安全配慮義務違反が問われる可能性があるため、注意が必要です。
また、社用車による通勤時の事故の場合、自動車損害賠償保障法第3条の運行供用者責任が問われる可能性があるため、安全管理規程の整備と周知徹底が重要です。
通勤中の事故を「労災」にすると翌年の保険料は上がる?
通勤災害は労災保険の対象ですが、一般的に通勤災害による給付は、労災保険料率に影響しません。
労災保険のメリット制(事故が多いと保険料が上がる仕組み)は、業務災害(業務中の事故)のみに適用されます。
また、業務災害を適用した場合でも、保険料率がすぐに上がるとは限りません。
企業がメリット制の適用を受けており、収支算定後に保険料率の増加の条件に該当した場合のみに保険料率が上がります。
社員が自転車通勤で他人に怪我をさせた場合は会社が賠償する?
原則として、通勤中の事故による賠償責任は個人が負います。
しかし、企業が安全管理を怠っていた場合や、通勤方法を積極的に推奨していた場合には、使用者責任を問われる可能性があります。
リスクを回避するためには、従業員の自転車保険の加入の有無や、安全管理規程の整備、交通安全教育などの実施が重要です。
なお、「個人賠償責任保険」でも自転車保険への加入義務が果たされます。
火災保険、傷害保険、自動車保険の特約として付帯している場合があるため、契約中の保険がある場合は、補償内容や補償範囲を確認しておきましょう。
7. まとめ|多様化する通勤手段において企業に求められる「安全管理」
本記事では、通勤災害の定義や責任の境界線、自転車や電動キックボードなど通勤手段ごとのリスク、安全管理規程を整備する際のポイント、アルコールチェッカーの活用方法について解説しました。
交通手段の多様化により、企業は従業員の利便性を考慮しながら、通勤時の安全管理を適切に行うことが求められます。
通勤災害への対応で重要なのは、「責任の有無」だけを気にするのではなく、「事故を未然に防ぐための仕組み」を整えることです。
厚生労働省のガイドラインに基づいた「安全管理規程」の整備や、アルコールチェックなどの対策を組み合わせることで、通勤中の事故リスクを軽減し、万が一の際にも適切に対応できます。
従業員が安心して通勤できる環境を守るために、通勤手段に合わせたリスク管理や運用体制を整えていきましょう。



