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【2025年4月から】車検の期間延長|制度改正のポイントやメリット・注意点を解説

車検とは、自動車が保安基準に適しているか確認するための検査制度であり、すべての自動車に受検が義務付けられています。

正式には「自動車検査登録制度」といい、2025年4月1日から、制度の一部が改正され、「受検可能期間」が従来の「1ヶ月前」から「2ヶ月前」へと期間延長されました。

今回の改正により、ドライバーはより柔軟にスケジュールを立てられるようになりますが、一方で、注意すべき点や誤解されやすい点も存在します。

そこで本記事では、制度改正のポイントをはじめ、期間延長のメリットや注意点、万が一車検が切れてしまった場合の罰則、車検切れ車両を再び車検に通す方法について分かりやすく解説します。

トラブルなくスムーズに車検を受けるために、本記事で紹介する改正のポイントを参考にしてください。

1. 車検の期間延長|道路運送車両法施行規則の改正点と背景

道路運送車両法施行規則が改正され、2025年4月1日から車検の受検可能期間が「満了日の1ヶ月前」から「2ヶ月前」へと期間延長されました。

車検を受けられる期間が従来よりも長くなることで、自動車ユーザーにはどのような変化があるのでしょうか。

本章では、期間延長の詳しい内容と、制度改正に至った背景について分かりやすく解説します。

計画的に車検を受けられるように、紹介する内容を参考にしてください。

1-1 2025年4月1日から|車検の期間延長

道路運送車両法施行規則等が改正され、2025年4月1日から車検の受検可能期間が「満了日の1ヶ月前」から「2ヶ月前」に変更されました。

そもそも車検は、有効期間内であれば受けることができますが、以前の制度では、1ヶ月以上前に受けると次回の満了日が「車検合格日から起算」されるため、残りの有効期間分がムダになる仕組みでした。

しかし、今回の改正で「満了日の2ヶ月前」までに期間延長されたため、この期間に車検を行った場合、残存する旧車検証の有効期間を失うことなく、新車検証に更新できます。

車検の制度改正にあわせて、自動車損害賠償保障法施行規則も改正されており、自賠責保険も有効期間を失うことなく更新可能です。

なお、車検と自賠責保険の有効期間は、車種や用途によって異なるため、期限切れにならないように事前に満了日を確認しておきましょう。

社用車における車検の手順や車検費用、車検管理を効率化する方法について、下記の関連記事で詳しく紹介していますので、管理者の方や経営者の方はあわせて参考にしてください。

関連記事:社用車の車検はいつ?必要書類や費用・手順や車検切れで走行した場合の罰則も解説

1-2 制度改正の背景

国土交通省が発表した月別の車検台数のデータでは、月の平均車検台数が約281万台なのに対し、年度末の3月だけは約389万台と突出して多くなっています。

そのため年度末の車検では、「予約が取りづらい」「自動車整備士が残業・休日出勤に追われる」という問題が毎年生じています。

こうした問題を解消するために、国土交通省は車検の期間延長を行い、同時に自賠責保険の有効期間も失われることなく更新可能としました。

参考:車検を受けられる期間が延びます|国土交通省

2. 車検を2ヶ月前に受検する5つのメリット

車検の期間延長により、受検可能期間が満了日の2ヶ月前までに拡大され、さまざまな面で自動車ユーザーの利便性が向上しています。

そこで本章では、期間延長されたことで得られるメリットについて5つ紹介します。

2-1 予期せぬトラブルに対処しやすい

車検に合格するためには、国が定めた点検基準を満たす必要があります。

車検の直前になって不具合や部品交換が必要になった場合、修理に時間がかかり、スケジュールが大きく乱れる可能性があります。

しかし、2ヶ月前に受検しておけば、万が一トラブルが見つかっても、時間に余裕をもって修理や再検査の手配が可能です。

予期せぬトラブルに対応しやすくなるため、車検切れのリスクも回避できます。

2-2 車検の予約が取りやすい

車検の需要が高まる年度末や連休前は、多くの自動車ユーザーが予約を希望するため、希望する日程で予約が取れない可能性があります。

しかし、受検期間が2ヶ月に延長されたことで、ピークを避けた早期予約がしやすくなり、都合のよいタイミングで無理なく車検を受けられるようになりました。

混雑による待ち時間や、急な日程変更にも対応しやすくなるため、仕事や家庭の都合で日程調整が難しい方にとっては、余裕のあるスケジュールで受検できるようになります。

また、整備工場側もより丁寧な整備や対応が可能になり、サービス品質の向上にもつながります。

2-3 代車を確保しやすい

車検の際に代車が必要な場合、繁忙期は代車がすべて貸し出されていることも珍しくありません。

2ヶ月前に余裕をもって予約することで、必要なタイミングで代車を確保しやすくなります。

日常生活で車が必要な方にとって、代車の有無は車検時の不便さを左右するため、早めの予約・受検が安心です。

2-4 支払い計画を立てやすい

車検の受検期間が延長されたことで、自賠責保険の更新も2ヶ月前から可能となり、費用の分散がしやすくなりました。

たとえば9月に車検がある場合でも、7月に受検すれば、6月のボーナスなどを活用して費用を準備できます。

一般的に、自賠責保険も車検時に更新されるため、整備費用とあわせて出費がかさみがちです。

自家用乗用車の場合、2回目以降の車検では次回までの有効期間が2年間となり、これに合わせて保険期間も24〜25ヶ月で契約するため、保険料だけで約1万8,000円かかります。

そのため改正後は、自賠責保険と車検を更新するタイミングを1〜2ヶ月程度ずらすことで、それぞれの費用を別々に支払えるようになり、家計への負担を軽減できます。

2-5 早期割引や特典を受けられる可能性がある

早めに車検予約をした利用者に対して「早期割引」や「特典サービス」を提供している整備工場や車検専門店があります。

予約時期が早いほど割引額が大きくなる傾向があり、業者によっては数千円から数万円の割引が適用される場合があります。

また、点検費用の割引、オイル交換無料、クーポン進呈など、さまざまな特典が得られる可能性があるため、2ヶ月前から余裕をもって比較・検討を行いましょう。

3. 車検を受検する際の3つの注意点

車検の期間延長により、自動車ユーザーがスケジュール調整をしやすくなった一方で、受検時には注意すべきポイントも存在します。

そこで本章では、車検をスムーズかつ損なく受けるための3つの注意点について解説します。

3-1 2ヶ月前よりも前倒しで車検を受けると損する

制度改正により、車検の有効期間を維持したまま2ヶ月前からの受検が可能になりましたが、満了日の2ヶ月以上前に受検した場合、次回の満了日が「受検日から起算」となってしまいます。

そのため、残っていた有効期間が短縮され、実質的に損をすることになります。

また、重量税は車検時に次回満了日までの分を前払いする仕組みなので、前回払った重量税が実質的に損失する形となり、その分の還付金も受け取れません。

受検する時期によっては、数千円から数万円の損失になるため、仕事や家庭の事情などで特別な理由がない限りは、満了日の2ヶ月前の期間で車検を受けるようにしましょう。

3-2 OBD車検が必要な車両は場所が限られる

2024年10月1日(輸入車は2025年10月1日)より、車検項目にOBD検査が追加されました。

【OBDとは?】

「OBD」とは、車両の電子制御システム(自動ブレーキやエンジンを制御するシステム)の故障や異常を検知する「車載式故障診断装置」です。

OBD検査の対象者は、以下のとおりです。

【OBD検査の対象車両】

  • 国産車:2021年10月1日の新型車(フルモデルチェンジ)
  • 輸入車:2022年10月1日の新型車(フルモデルチェンジ)

OBD検査では、3,000円前後の検査費用が発生します。

また、OBD検査では、専用の診断機器を備えた整備工場での受検が必要なので、事前に整備工場に対応可能かどうかを確認しておきましょう。

参考:物流・自動車 OBD車検とは?(ユーザー向け)|国土交通省

3-3 スケジュールに余裕を持って予約する

制度改正によって期間延長が行われたとはいえ、年度末や大型連休前などの繁忙期は、車検予約が集中しやすくなります。

特に代車の必要がある方や土日を希望する方は、早めの予約が必須です。

ギリギリになって焦らないよう、スケジュールに余裕をもって整備工場に連絡し、スムーズに車検を行いましょう。

4. 車検切れした場合の罰則

車検切れの車両には自動車検査証が発行されていないため、公道での走行が禁止されています。

車検切れで走行した場合、「道路運送車両法」および「道路交通法」に基づいて、以下のような罰則が科されます。

【車検切れ走行の罰則】
罰則の種類罰則の内容
刑事処分6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金
行政処分違反点数6点、30日間の免許停止処分(前歴がない場合)

車検切れの場合、同時に自賠責保険も切れているケースが多く、より重い罰則が科されます。

【自賠責保険切れ走行の罰則】
罰則の種類罰則の内容
刑事処分1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
行政処分違反点数6点、30日間の免許停止処分(前歴がない場合)

車検切れや自賠責切れ自体は違法ではありません。

しかし、運転が禁止されているため、再び公道を走るためには所定の手続きを行った上で、車検に通す必要があります。

そこで次の章では、車検切れの車を車検に通す方法について詳しく解説します。

参考:
交通違反の点数一覧表|警視庁
道路運送車両法 第108条|e-Gov法令検索

5. 車検切れの車を車検に通す3つの方法

車検切れで公道を走行した場合、重大な法令違反として罰則の対象になるため注意が必要です。

まずは公道を走れるように、特別な手続きを取る必要があります。

そこで本章では、車検切れ車両を車検に通すための対処法について3つ紹介します。

それぞれの手続きの流れを把握して、万が一、車検切れした場合に対処できるように備えておきましょう。

5-1 仮ナンバーを取得する

市区町村の役所窓口で仮ナンバー取得を申請することで、運行する当日または前日に仮ナンバーが発行されます。

自賠責保険に加入している場合は750円、加入していない場合は7,000円程度の手数料が発生します。

仮ナンバーの申請に必要な書類は以下のとおりです。

【必要書類】

  • 自動車臨時運行許可証(窓口もしくはWebで入手可能)
  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 自賠責保険証(原本(有効期限内のもの))
  • 車の確認書類(原本(期限切れの車検証や抹消登録証明書など))

仮ナンバー取得後は、もとのナンバープレートと同じ位置にボルトやワイヤーなどで仮ナンバーを固定します。

工具がない場合は、養生テープで取りつけても違法にはなりませんが、走行中に飛ばされないようにしっかり固定しましょう。

5-2 積載車を手配する

車検切れ車両を動かす場合、積載車(キャリアカー)での運搬も可能です。

レンタル業者などに依頼すれば、車検切れの車を公道を走らせることなく、安全かつ確実に車検場や整備工場まで運べます。

費用は距離や業者によって異なりますが、短時間のプランで1万円〜3万円程度が相場です。

なお、レッカー車の場合は、車両が道路に接地するため、仮ナンバーの取得が必要になります。

5-3 車検切れ対応店舗に依頼する

一部の整備工場や車検専門業者では、車検切れ車両を対象にした「引き取り対応」や「出張手続き」などのサービスを提供しています。

仮ナンバーの取得代行や積載車の手配を含め、すべてを一括して任せられるケースも多く、忙しい方や手続きに不安がある方にとって非常に便利です。

費用は通常の車検に比べて数万円程度高くなりますが、安全かつ確実に車検を通したい場合におすすめの方法です。

6. 車検費用を抑える3つのポイント

車検費用は業者によって価格差が大きいため、事前の情報収集と計画が重要です。

ただし、安さだけを重視して車検業者を選ぶと、必要な整備が省略されるリスクもあるため、整備内容と価格のバランスの見極めが大切です。

そこでこの章では、安全性を確保しながらも、車検費用を抑えるための3つのポイントを紹介します。

6-1 見積もりを依頼する

予約する前に、複数の整備工場やディーラーに見積もりを依頼することで、サービス内容や費用を比較できます。

近年は、車検の比較サイトに住所を入力するだけで、地域の車検業者の車検費用を比較できるWebサイトもあります。

ただし、概算であり、正式な結果ではない場合もあるため、受検したい車検業者を見つけたら、電話で改めて見積もり依頼することがおすすめです。

6-2 整備士と相談する

整備内容に疑問があれば、整備士に直接相談するのが効果的です。

車検業者によっては、エンジンオイルやブレーキパッドの消耗部品の交換をすすめる場合があります。

しかし、よほど劣化している場合を除いて、整備内容から外してもらうことが可能です。

整備内容に疑問を感じたら、担当整備士に「今すぐ交換すべきか」「次回でも問題ないか」など、車の状態に応じた判断をもらうことで安全性を確保しつつ、不要な出費を避けられます。

6-3 ユーザー車検をする

車検費用をもっとも抑えられる方法が、ユーザー車検です。

整備や点検を自分で行い、陸運局や軽自動車検査協会で検査を受ける方法で、法定費用だけで済むため、数万円の節約になります。

ただし、整備には専門知識や設備が必要になる場合があり、不合格になった場合、結局整備工場へ依頼するパターンになるため、かえって手間がかかる可能性があります。

自分で対応できる自信がある方や、車に詳しい方でなければ、無理せず整備工場に依頼する方が安心といえるでしょう。

7. まとめ|車検の期間延長を正しく理解して計画的に受検しよう

本記事では、車検制度の改正内容や2ヶ月前に車検を受けるメリット、受検する際の注意点、車検切れ走行の罰則、車検費用を抑えるポイントについて紹介しました。

2025年4月1日から、車検の受検可能期間が2ヶ月前に延長されたことで、ドライバーはスケジュールに余裕をもって車検を受けられるようになりました。

ただし、早すぎる受検による損失や、OBD検査をスムーズに受けるためには、制度の内容を正しく理解することが大切です。

車検切れ走行による罰則や、再検査の手続きの負担を回避するためにも、計画的な車検の受検を心がけましょう。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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