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自動運転のメリット・デメリット10選|レベル分けや緑ナンバー車両への実用化状況・環境への課題を解説

近年、注目を集めている自動運転は、移動の効率化や交通事故の軽減などのメリットが期待される一方で、法整備や環境負荷などの課題が浮き彫りになっています。

そこで本記事では、自動運転の概要や各レベルの定義、メリット・デメリットを解説し、今後の交通社会に与える影響をさまざまな視点から読み解いていきます。

自動運転技術に不安を感じる方や興味のある方は、ぜひ参考にしてください。

1. 自動運転とは?各レベルの定義

自動運転とは、車が人間の操作なしに自律的に走行する技術を指し、交通事故の減少や高齢者の移動支援などに役立つとして、大きな期待が寄せられています。

その一方で、自動運転車が重大事故を引き起こしたケースも報告されており、自動運転技術に不安を感じる方は少なくありません。

そこで本章では、自動運転の概要や各レベルの定義について紹介するとともに、現在の自動運転技術の進捗状況を解説します。

自動運転に対する正しい知識を身につけ、安全な移動手段としての可能性を一緒に考えていきましょう。

自動運転とは?

自動運転とは、ドライバーの代わりにシステムが、運転に関わる認知、予測、判断、操作のすべてを代替して行い、車両を自動で走らせる技術のことです。

GPSやカメラ、センサー、レーダーを車両に搭載し、車線や周囲の車両、人、建物などの道路環境を読み取りながら、運転操作を自動で制御します。

すでに市販されている一部の車両にも、自動運転技術が搭載されており、政府と企業が連携して自動運転の実用化に向けた取り組みを本格化させています。

乗用車だけでなく、トラックやバスなど、緑ナンバーの実証実験や実用化も日本各地で積極的に行われています。

参考:自動運転車両の呼称(PDF)|国土交通省

自動運転の各レベルの定義

自動運転は、システムが運転操作に介入する度合いに合わせて、0〜5までの6段階にレベル分けされています。

このレベル分けは、アメリカのSAE(自動車運転技術者協議会)が定義したものをもとに、国土交通省が国内向けに定義しました。

各レベルの特徴は以下のとおりです。

【自動運転|各レベルの特徴】
レベル 概要 特徴 運転操作の主体
0 運転自動化なし 運転自動化技術がなにも搭載されていない状態。 運転者
1 運転支援 アクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかを部分的に自動化した状態。自動運転ではなく運転支援。
2 部分運転自動化 アクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作の両方を部分的に自動化した状態。自動運転ではなく運転支援。
3 条件付き運転自動化 特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、システムが運転操作の全部を代替する状態。(ただし、システムの作動中は、運転者はいつでも運転操作を代われる状態でいること。) システム(自動運行装置の作動が困難な場合は運転者)
4 高度運転自動化 特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、システムが運転操作の全部を代替する状態。 システム
5 完全運転自動化 システムが運転操作の全部を代替する状態。

「自動運転」と聞くと、運転操作のすべてをシステムが行う印象を受けるかもしれません。

しかし現時点では、運転操作の主体は人間であり、システムはあくまで運転操作のサポートにとどまっています。

日本国内では、すでにレベル2の乗用車が販売されており、2021年には、ホンダが世界初となる自動運転レベル3の「レジェンド」を100台限定で販売しました。

また、レベル4の普及に向けた動きは本格化しており、すでに山間部や施設内などの限定されたエリアで、実用化や実証実験が行われています。

以下の関連記事では、自動運転の各レベルについてより詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

関連記事:『自動運転レベルとは?0~5の各レベルの定義や対象車種・実用化の現状を解説

2. 自動運転の5つのメリット

自動運転技術は、ヒトやモノの移動のあり方を変える可能性を持っています。

しかし、自動運転車による交通事故が発生していることから、自動運転技術に対して、不安を抱える人も少なくありません。

そこで本章では、自動運転がもたらす5つの主なメリットを紹介します。

人とテクノロジーが共存する未来について、考えていきましょう。

メリット1移動の快適性が向上

自動運転の導入により、ドライバーの負担が大幅に軽減され、安全かつ快適な移動が可能になります。

特に長距離移動の際は、運転操作の一部、またはすべてをシステムが担うことで、ドライバーの疲労やストレスの軽減が期待できます。

すでに一部の企業では、完全自動運転に向けて、需要が見込まれる安楽姿勢や睡眠姿勢をとれるドライブシートの開発が進められています。

さらに、シートカバーに内蔵されたセンサーによってドライバーの眠気を感知し、振動や香りで覚醒を促す「眠気抑制システム」の実用化も始まっています。

将来的にレベル4以上の自動運転が普及すれば、運転中でも読書や休憩など、自分の時間を有効に使えるようになるでしょう。

参考:自動運転の進展にともない、車室空間の快適性と安全性を追求|トヨタ紡織

メリット2渋滞の緩和

自動運転車は、センサーや通信機能を活用して、車間距離や速度を適切に保ち、ムダな加減速を減らすことが可能です。

渋滞を吸収する役割を果たすため、交通の流れがスムーズになり、渋滞の発生を抑える効果が期待されています。

さらに、リアルタイムで道路状況を把握することで、最短ルートを選択でき、移動時間を短縮することも可能です。

日本国内では自動運転の普及を見据えて、渋滞時に自動運転車が通信技術を利用して、最適な走行ルートや車線を選択できるように、ETC2.0やカメラを設置するなど、環境整備がすすめられています。

関連記事:『ETC2.0とは?従来のETCとの違いやメリット・2030年問題の対策を解説

参考:
オートパイロットシステムの実現に向けて(PDF)|国土交通省
社会実験〜渋滞吸収理論を実践する〜|JAF Channel(YouTube)

メリット3交通事故の減少

交通事故の原因は、8割以上がヒューマンエラーと言われています。

自動運転車はセンサーやカメラ、AIを活用して、車間距離や速度を維持するため、事故のリスクを下げることが可能です。

国土交通省の「ASV推進検討会」で、過去に発生した39パターンの車同士の事故データを検証したところ、両者に自動運転(AD)を搭載した場合は89.5%、自動運転支援システム(ADAS)を搭載した場合は、69.6%まで死傷事故削減率が上昇すると推算されています。

事故防止だけでなく、標識や信号の見落としもなくなるため、信号無視や一時不停止などの交通違反を起こしにくくなるメリットもあります。

関連記事:『信号無視による罰金や違反点数は?支払い方法や取り締まりが多い交通違反を解説

参考:自動運転システムの事故削減効果評価の検討(PDF)|国土交通省

メリット4環境に優しい

自動運転車は、通信機能を活用した効率的なルート選択や、車間距離維持装置(ACC)を活用したエコドライブによって、ムダな加減速やアイドリングを減らし、排気ガスの発生を抑えられます。

これにより、都市部の大気環境の改善や、地球温暖化対策に大きく貢献するとされています。

また、システムで運転操作を制御する自動運転車は、エンジンを電子制御している電気自動車(EV)との相性も良く、燃費や電費の向上にも効果的です。

今後、持続可能な社会を目指す上で、自動運転の普及は重要な鍵となるでしょう。

現在実用化されている電気自動車や、電動モビリティについて、以下の関連記事で詳しく紹介しています。使用する際の注意点や交通規制についても紹介していますので、あわせて参考にしてください。

関連記事:『超小型モビリティ・電動モビリティの種類一覧を紹介|法律を理解し正しく運用するために

メリット5ドライバー不足の解消

物流業界や公共交通では、少子化や高齢化に伴い、深刻なドライバー不足が続いています。

運転従事者数の推移は2000年から減少しており、2030年までに9億トンの輸送能力が不足する可能性があると言われています。

自動運転が普及すれば、無人運転による輸送や夜間配送が可能となり、人的リソースの負担を軽減できます。

また、人件費が削減できるため、過疎地域や山間部、地方の観光事業などで、自動運転車が活躍することが期待されています。

今後の社会インフラ維持において、自動運転技術は大きな役割を果たすでしょう。

3. 自動運転の5つのデメリット

自動運転は多くのメリットをもたらす一方で、課題も抱えています。

たとえば、環境への影響やシステムトラブル、プライバシー問題、事故時の責任の所在、雇用の減少といった懸念が挙げられます。

そこで本章では、自動運転の主な5つのデメリットについて解説します。

デメリット1温室効果ガスによる環境への影響が懸念

自動運転車は、排気ガスの削減が期待される一方で、自動運転車に搭載されるコンピューターに必要なエネルギーが、世界の二酸化炭素排出量を大きく増加させる可能性があると指摘されています。

アメリカ国立科学財団(NSF)で行われた調査研究では、世界各地にある10億台の自動運転車(消費電力840ワット)が1時間走行すると、現在の世界の温室効果ガス排出量の0.3%を排出する計算となり、アルゼンチンの年間生成量に匹敵することが判明しました。

コンピューター関連のエネルギーの消費を抑制するには、バッテリーを長持ちさせることだけでなく、ハードウェア(部品)の改良を行うことも重要とされています。

デメリット2システムトラブルのリスクがある

自動運転車は、雨や雪などの悪天候や、地震などの災害時に、センサーやシステムが正常に作動しない可能性があります。

さらに、歩行者の予測不能な動きや障害物への対応、GPS精度の低下、ソフトウェアのバグ、通信障害といったトラブルのリスクも考えられます。

今後、自動運転レベルを引き上げるにあたって、定期的なソフトウェアアップデートやセキュリティ対策が求められています。

デメリット3プライバシー侵害のリスクがある

自動運転のシステムがハッキングされた場合、カメラやGPSによって取得されたデータや個人情報が犯罪行為に利用されるおそれがあります。

また、事故が誘発されるようなウイルスが侵入し、運転中や駐車中の車を勝手にコントロールされる可能性も考えられます。

テロなどの犯罪行為に悪用されないために、企業のセキュリティ対策や法的整備が求められます。

デメリット4事故発生時の責任の所在が不明確

自動運転はレベルごとにドライバーの運転への関与度合いが異なります。

そのため現在の法律では、自動運転中に事故や交通違反が発生した場合、ドライバー・車両メーカー・システム開発企業など、「どこに責任があるのか」が不明確です。

事故以外にも、高齢者や障がい者、未成年など「自分で運転はしないけれど、移動手段として利用する」という人もいるでしょう。

この場合、新しい免許区分や免許証を作る必要性が出てくるかもしれません。

自動運転の普及で、これまでに起こりえなかったことが今後起きる可能性があるため、迅速な法整備が必要とされています。

デメリット5ドライバーの就業機会の減少

自動運転の普及により、人手不足の解消が期待される一方で「トラックやタクシーなど、ドライバーの雇用喪失につながるのではないか」という懸念もあります。

現時点で、高速道路での自動運転の実証実験は成功していますが、一般道での運用は課題が多く残っています。

そのため、当面の間はラストワンマイル配送にはドライバーが必要と考えられています。

また、完全にドライバーの仕事がなくなるわけではなく、将来的には、ドライバーの仕事は自動運転車両のメンテナンスや監視に変わるとされています。

すべての仕事が自動化されるわけではなく、むしろ人と技術の共存が求められる時代になるでしょう。

4. 自動運転|緑ナンバー車両への実用化状況

自動運転は、営業用車両である「緑ナンバー」への実用化がすすんでいます。

近年、物流・運送業界におけるドライバー不足が深刻化しており、安全性の向上や効率化の観点から、実用化への期待が高まっています。

国や自治体、企業における実証実験も各地で行われており、将来的な本格導入に向けた動きが加速しています。

わたしたちの暮らしに欠かせない存在になる未来も遠くありません。

そこで本章では、緑ナンバー車両への自動運転の導入状況について詳しく解説します。

タクシーの自動運転

現在、日本での自動運転タクシーは実用化されていません。

しかし、ホンダ、クルーズ、GMの3社は、共同開発した自動運転タクシー「クルーズ・オリジン」を2026年初頭に開始予定と発表しています。

クルーズ・オリジンは、配車、送迎、決済まで、すべての工程をスマートフォンのアプリで完結させた自動運転のタクシー配車サービスです。

実用化された場合、都市部の渋滞解消や、ドライバー不足の解消に役立つとされています。

また、2025年現在では、タクシー配車アプリサービスを提供するGO株式会社、アメリカの大手タクシー企業のWaymo(ウェイモ)、日本交通株式会社の3社が、東京都心で自動運転の実現可能性を探る走行テストを開始しています。

すでにアメリカの一部の地域では、Waymoのレベル5相当の自動運転タクシーが運行しており、近い将来、日本での実用化も期待されています。

参考:
日本での自動運転タクシーサービスを2026年初頭に開始予定|HONDA
Waymoいよいよ日本に。自動運転タクシーのテストをGOと日本交通が2025年から東京都心で開始|Yahoo!ニュース

バスの自動運転

日本国内では、すでにレベル4の自動運転バスの実用化や実証実験が行われています。

茨城県日立市では、2025年2月から国内初となる中型バスでのレベル4自動運転の運行が開始されています。

このほか、全国各地で自動運転の実証実験が行われており、全自動運転化であるレベル5の実現が近い将来に期待されています。

参考:
ひたちBRTで自動運転バスの営業運行がスタートします!|日立市公式ウェブサイト
実証実験の実施状況(PDF)|国土交通省

トラックの自動運転

2025年時点で、トラックの自動運転は実用化されていませんが、国土交通省と企業による実証実験は2023年から繰り返し行われています。

2025年3月には、新東名高速道路や東北自動車道の一部区間でレベル4の自動運転トラックの実証実験が実施されており、国土交通省は2027年の実用化を計画しています。

また、佐川急便、セイノーホールディングス、T2の3社は共同で自動運転の大型トラックの開発をすすめています。

物流を担うトラックは、荷物の重さや積み方によって車体の重心が変わるため、自動運転でハンドルの制御を行う際は、わずかな荷物の違いを考慮する必要があります。

乗用車とは異なる視点で車両を開発する必要があり、法整備と同時に車両開発もすすめられています。

関連記事:『緑ナンバーとは?取得までの3ステップとメリット・デメリットを紹介

参考:新東名高速道路における自動運転トラックの実証実験を開始|国土交通省

5. 自動運転|今後の課題とは?

自動運転技術は着実に進歩していますが、解決すべき課題がいくつも残されています。

そこで本章では、自動運転の導入で懸念されている、今後の課題について詳しく解説します。

環境問題への課題

自動運転は、燃費向上や排出ガス削減などの環境対策に好影響をもたらす一方で、コンピューターの消費電力や膨大なデータ収集による、データセンターの負荷増加も懸念されています。

自動運転を支えるAIなどの高電力デバイスは、エネルギー消費量が増加する原因となり、温室効果ガスを増加させる可能性が指摘されています。

自動運転の実用化とともに、ハードウェア(部品)の改良が必要と言われています。

AIやセンサーの精度

自動運転車の安全性は、センサーやカメラの精度、AIの判断に大きく左右されます。

悪天候や複雑な交通状況下では、誤認識や判断ミスが事故につながるリスクもあります。

予想外の障害や予期できない状況が発生した場合、人は経験値によってとっさに行動できますが、システムの場合、事前にプログラムされたことしか対応できません。

歩行者の予測困難な動きや突発的な障害物への対応力を高めるためには、AIの学習精度向上と高性能なセンサーの開発・改良が今後の重要な課題です。

ただし、どれだけ精度が向上しても、システムには限界があることを前提に、ゼロリスクを前提としない交通ルールや社会制度の整備も必要不可欠です。

法律の整備

2023年4月に道路交通法が改正され、公道でのレベル4の自動運転が可能になりましたが、道路運送車両法や民法などは追いついてない部分があると指摘されています。

事故発生時の責任の所在、保険制度の整備、無人運転時の交通ルールなど、明確なルール作りが必要です。

また、国際的には「ジュネーブ道路交通条約(道路交通に関する条約(1949年))」で共通の交通ルールがありますが、自動運転には世界共通のルールがないため、各国が個別に対応しています。

タクシー業界では、アメリカ企業の介入の可能性もあるため、海外製品を運行させる場合を見越して、世界共通のルール作りが必要です。

社会的に受け入れられるために、技術の安全性向上と同時に、法整備も求められます。

セキュリティ対策

自動運転の普及に伴い、自動車のシステムはソフトウェア化やネットワーク化がすすみ、スマートフォンとの連携やクラウドの活用など、新しい技術が導入されています。

その一方で、自動車の外部からのアクセスや、連携システムへのウイルス感染、個人情報の漏洩などのリスクも増加しており、こうした脅威への対策の必要性が高まっています。

国土交通省は自動車メーカーに対して、ハッキング対策などのサイバーセキュリティーを考慮した車両の設計・開発を行うことを通達しており、今後、暗号化技術や侵入検知システムなど、さまざまなセキュリティ対策が求められます。

完全なセキュリティは存在しないことを前提に、被害を最小限に抑える設計や運用体制、そして社会全体でのリスク分散の仕組みも検討されるべきでしょう。

参考:
検討課題の整理(PDF)|国土交通省
自動運転車の安全技術ガイドライン(PDF)|国土交通省

6. まとめ|自動運転のメリット・デメリットを知り安全な交通社会を目指そう

本記事では、自動運転の概要や各レベルの定義、メリット・デメリット10選、緑ナンバーへの実用化の状況や今後の課題について解説しました。

自動運転技術は、利便性や安全性の向上といった多くのメリットがある一方で、法整備やインフラ、倫理的な課題も残されています。

こうしたメリット・デメリットを正しく理解することが、技術との適切な付き合い方や、より安全で持続可能な交通社会の実現につながります。

まずは私たち一人ひとりが安全運転を意識し、安全な交通社会を築いていきましょう。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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