花見酒とは?言葉の由来や歴史・花見におすすめのお酒と選び方のコツを紹介

花見酒は、桜を眺めながら飲むお酒のことで、古くから日本人に親しまれています。
近年は、春の訪れに合わせ、桜酵母を使用した日本酒や春限定ラベルの酎ハイ、ワインなどが販売され、新しい春の風物詩となっています。
大切にしたい日本の文化ですが、そもそも「花見酒」とはどのようなものなのでしょうか?
本記事では、花見酒の言葉の由来や歴史、花見酒を選ぶポイントやおすすめのお酒、花見酒を楽しむ際の注意点について紹介します。
飲み過ぎに注意しながら、桜とお酒の魅力を堪能しましょう。
目次 / このページでわかること
1.花見酒とは?言葉の由来と歴史
花見酒とは、桜を眺めながらお酒を楽しむ風習のことで、日本酒やワイン、焼酎や酎ハイなど幅広いお酒が親しまれています。
花見酒は、単にお酒を楽しむだけではなく、春の風情を楽しむ文化的な側面も持ちます。
本章では、花見酒の言葉の由来やお花見の歴史について、詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください 。
花見酒とは?
「花見酒」は、古くは花見で飲む「日本酒」を指していましたが、現代では、花見で飲むお酒を花見酒と呼んでいます。
桜が咲く時期に合わせて、ピンク色のロゼワインや、春限定ラベルのビールや酎ハイ、桜の香りがするリキュールなどが販売され、毎年多くの人に親しまれています。
「花見酒」という言葉は、落語の演目である「花見酒」が由来とされています(※諸説あり)。
【落語「花見酒」の簡単なあらすじ】
仲の良い兄弟分の男2人が、花見でお金を儲けようと計画。酒屋で3升の酒と酒樽と5銭を借り、花見会場へ向かう。道中で我慢できずに、借りた5銭を互いにやりとりし、自分たちだけでお酒を飲み干してしまう。会場で店を開くが酒樽は空。花見客は怒って帰ったが、売上の勘定をすると5銭ある。勘定は合っているしお酒も飲めた。(しかし儲けはない)という噺。
落語の花見酒は、お花見が庶民に広まった江戸時代に造られたと言われ、落語を通じて「花見酒」という言葉が広まったと考えられています。
お花見の歴史
お花見の歴史は、奈良時代までさかのぼると言われています。
当時は梅の花が主流でしたが、平安時代に入ると桜の花が注目され、貴族たちが和歌を詠みながら桜を楽しむようになりました。
奈良時代の万葉集には梅の花、平安時代の古今和歌集には桜の花を題材にした和歌が多く記録されていることからも、流行りの春の花が異なることがうかがえます。
農民の間では、花を楽しむのではなく、豊作を祈るために野山に入り、1日を過ごすという宗教的な意味合いが強い行事が行われていたとされています。
鎌倉・室町時代には武士階級にも広がり、宴席としての要素が強まります。
江戸時代には、八代将軍・徳川吉宗が、隅田川や飛鳥山などに数千本の桜を植え、庶民にお花見を推奨しました。
これにより、庶民が桜の下で食事やお酒を楽しむようになり、お花見の文化が定着しました。
花見酒の始まり
奈良時代や平安時代のお花見は、「歌を詠む」「蹴鞠を楽しむ」ことが主流だったとされています。
当時、日本酒は「神様にお供えするもの」「祝いの席で飲むもの」と考えられ、高貴な身分の人でも特別な行事でしか飲めませんでした。
しかし、戦国時代に入ると、豊臣秀吉が盛大な宴である「醍醐の花見」を催します。
これが娯楽としての花見酒の始まりと言われています。
京都の醍醐寺に700本の桜の木が植えられ、三宝院(建物と庭園)が作られ、1,300人もの親族や側近が参加しました。
平安時代の穏やかに桜を愛でるお花見とは異なり、桜の木の下で日本酒を酌み交わしながら、豪華な宴を一日中楽しんだそうです。
2.花見酒を選ぶ4つのポイント
屋外での飲酒は、温度管理が難しく、長時間楽しむには工夫が必要です。
花見酒を選ぶ際は、場所やシチュエーションに合ったお酒を選ぶと、お花見をより楽しめます。
そこで本章では、花見酒を選ぶ4つのポイントを紹介します。最適なお酒を見つけて、春の宴を満喫しましょう。
常温でも美味しいお酒
お酒の中には、常温でも美味しく飲めるものが多くあります。
お花見では屋外で行うことが一般的なため、冷たいお酒を持参する場合は、クーラーボックスや保冷剤が必要になり、荷物が増えてしまうのが難点です。
しかし、冷やさなくても美味しく飲めるお酒を選べば、手軽に花見酒を楽しめます。
最適な温度で味わえるため、本来の風味を損なうことなく、美味しい状態で飲めるのも大きな魅力です。
春酒などの限定品
桜のモチーフが施されたものや、華やかな色合いのラベルがデザインされたお酒を選ぶと、お花見の雰囲気をより一層盛り上げられます。
炭酸を含んだスパークリングタイプのお酒は、お酒初心者や女性にも好評で、可愛いボトルや洗練されたデザインのものが多いため、幅広い世代に人気です。
さらに、桜酵母を使用した日本酒など、酒蔵やメーカーのこだわりが詰まった春限定のお酒も花見酒にぴったりです。
縁起の良いお酒
お花見はもともと、農民が豊作を願うために行っていた伝統行事でした。
現在ではその意味合いは薄れていますが、新生活が良いものになるよう願うイベントとして親しまれています。
そのため、縁起の良い名前がついたお酒や、特別な日に相応しい高級品を選ぶのがおすすめです。
特に日本酒は「鶴」「亀」「福」「富士」などの文字が入った銘柄が多く、祝いの席に適しています。
また、「ハレの日」を象徴する紅白を取り入れる場合もあり、赤ワインと白ワインをセットで差し入れする人もいるようです。
低アルコール
普段あまりお酒を飲まない方にも配慮し、低アルコールのお酒を選ぶのも大切なポイントです。
お酒に慣れている方でも、お花見の雰囲気にのまれて飲みすぎてしまうことがあるため、アルコール度数が控えめなお酒を用意すると安心です。
さらに、クセが少なく飲みやすい銘柄を選ぶのもおすすめです。
口当たりの優しいお酒であれば、多くの人が無理なく花見酒を楽しめるでしょう。
以下の関連記事では、飲みやすいお酒の種類や特徴について詳しく解説しています。ぜひ花見酒を選ぶ際の参考にしてください。
3.お花見におすすめのお酒4選
お花見に最適なお酒は多種多様です。
近年は、屋内で花見を楽しむ人が増えており、ワイン、酎ハイ、焼酎など幅広いジャンルの花見酒が販売されています。
そこで本章では、お花見の席を盛り上げるおすすめのお酒を4種類紹介します。
それぞれの特徴を活かした選び方で、特別な春のひとときを過ごしましょう。
日本酒
花見酒の元祖と言える日本酒は、春の訪れを感じさせるものがおすすめです。
白桃やマスカットを思わせるようなフルーティーな日本酒や、桜の甘い香りを楽しめる桜酵母を使用した日本酒などは人気が高く、常温でも楽しめます。
スパークリング日本酒は女性に人気があり、デザインが可愛い上に飲みきりサイズの商品が多いので、女性が参加するお花見の席に適しています。
日本酒は、味わいや飲み方のバリエーションが豊富なので、お花見をする時間帯やメンバーに合わせて選んでみてください。
ワイン
淡いピンク色のロゼワインや、爽やかな味わいが特徴の白ワインは、花見酒に適しています。
また、スパークリングワインは、炭酸の爽快感が屋外での宴にマッチし、乾杯のお酒としておすすめです。
アルコール度数が低いワインは、お酒が弱い方でも飲みやすく、長時間のお花見でも楽しめます。
ワインの種類によって、お花見の料理にも合わせやすいので、食事と一緒に楽しめるのも魅力です。
酎ハイ(サワー)
酎ハイやサワーは、コンビニやスーパーで手軽に購入できるため、花見に適したお酒です。
レモンやグレープフルーツなどのフルールサワーは、春の陽気にぴったりで、すっきりとした味わいや爽快感は、宴のアクセントになります。
低アルコールで飲みやすいものも多いため、初心者でも気軽に楽しめるのも嬉しいポイントです。
焼酎
焼酎は、飲み方が豊富でお花見に適したお酒です。
花見のシーズンである3月下旬から4月上旬は気温差が激しく、夜桜を楽しむ際はお湯割りがおすすめです。
ほかにも、ロック、水割り、炭酸割り、ジュース割り、お茶割りなど、何で割っても美味しくいただけます。
焼酎は蒸留酒なので、醸造酒(ビール、ワイン、日本酒など)と比べてヒスタミンの含有量が極めて少ないとされています。また、芋焼酎にはアントシアニン(ポリフェノールの一種)が含まれており、花粉症の症状を和らげる可能性があると考えられています。
さらに本格焼酎は、糖質・プリン体を含まないため、ダイエット中の方にもおすすめのお酒です。
関連記事:
『お酒で花粉症が悪化する理由とは?飲み方の注意点・対策になるおつまみを紹介』
『醸造酒と蒸留酒の違い|歴史や製造方法・代表的なお酒や混成酒との違いについて解説』
4.お花見の定番の食べ物
お花見を楽しむ際には、美味しい食べ物も欠かせません。
定番のお花見弁当から、春らしい和菓子まで、桜の下で味わいたい料理が多くあります。
本章では、お花見の席を華やかに彩る定番の食べ物をご紹介します。
お花見弁当
お花見の定番といえば、お花見弁当です。
江戸時代には、人々がお弁当を持参してお花見を楽しんでいたとされ、当時の料理本には、お花見弁当の献立が記載されています。
現代とほぼ変わらず、「上・中・下」とランク分けされ、春の食材を使用した色どり豊かなお弁当だったと言われています。
老舗の料理店やデパートでは、お重のお花見弁当を販売することもあり、特別な時間を演出できます。
スーパーなどでも販売されるため、手軽に準備できるのが嬉しいポイントです。
定番の具材には、おにぎり、焼き鮭や鶏の唐揚げ、卵焼きなどがあり、子供から大人まで食べやすくて美味しいものばかりです。
三色団子・桜餅
お花見の際に欠かせないのが三色団子や桜餅です。
三色団子は、豊臣秀吉が催した「醍醐の花見」の際に出されたお茶菓子のひとつと言われており、現代でもお花見やひな祭りで食べられています。
諸説ありますが、ピンクは桜、白は雪、緑は新緑を表しており、早春を表していると言われています。
桜餅は、江戸時代に長命寺の門番をしていた男が、大量に落ちてくる桜の葉を何か利用できないかと考え、塩漬けにして餅を巻いて売り出したことが始まりとされています。
ほんのりとした桜の香りとあんこの甘さがマッチし、ピンク色の見た目も春を感じられる要素のひとつです。
緑茶やコーヒーと一緒に楽しむのも良いですが、爽やかですっきりとした日本酒や白ワイン、ロゼワインなども相性が良いとされています。
花見酒と同じく、お花見の席に欠かせない一品なので、ぜひ楽しんでみてください。
参考:桜餅 大阪府|農林水産省
5.花見酒を楽しむ時の注意点
花見酒を楽しむ際は、マナーや体調管理に注意が必要です。
楽しい雰囲気につられて飲みすぎたり、空腹のまま飲酒すると体調を崩す原因になります。
また、周囲への配慮を忘れず、節度を守って楽しむことが大切です。
本章では、花見酒を安全に楽しむための注意点を紹介します。
空腹で飲まない
空腹状態でお酒を飲むと、アルコールの吸収が早まり、酔いやすくなります。
アルコール度数が高いお酒の場合、体内のアルコール濃度が急激に高まるため、短時間で大量飲酒を行うと、悪酔いや急性アルコール中毒の危険性があると考えられています。
お弁当やおつまみを一緒に食べながら飲むことで、アルコールの吸収をおだやかにし、酔いをコントロールしやすくなります。
お花見には、おにぎりやサンドイッチ、枝豆など手軽に食べられるものを用意して、適度に食事を取りながらお酒を楽しみましょう。
適量を心がける
お花見の席では、楽しい雰囲気に流されて飲みすぎる場合があります。
適量を超えると酔いが回りすぎて体調を崩したり、二日酔いの原因になります。
特に屋外での飲酒は、気温の変化や長時間の滞在による疲労も影響し、普段より酔いやすくなる可能性も考えられます。
自分の適量を把握し、こまめに水を飲むなどして調整しながら飲むことが大切です。
無理にお酒をすすめるのではなく、それぞれのペースでお酒を楽しむようにしましょう。
マナーを守る
花見酒を楽しむ際は、周囲へのマナーを守ることが大切です。
大声を出したり、周りのグループに迷惑をかける行為は避けましょう。
公園や公共の場では飲酒が禁止されている場合もあるため、事前にルールを確認することも大切です。
マナーを守ることで、自分たちも周囲の人も気持ちよくお花見を楽しめます。
飲み終わった後のゴミは必ず持ち帰り、来た時よりもきれいな状態にすることを心がけましょう。
6.お花見後の飲酒運転に注意
お花見では、場の雰囲気にのまれてお酒を飲みすぎやすいですが、飲んだ後は絶対に運転しないように注意しましょう。
アルコールが体内に残る時間は、飲んだ量や体調、飲み方によって異なりますが、たとえ少量でも運転に支障をきたす可能性があります。
飲酒運転は悲惨な交通事故を引き起こすリスクが高く、自分や他の人の命を危険にさらすことになります。
また、近年は飲酒運転に対する取り締まりが厳しくなり、罰則も厳格です。
アルコールの影響を受けている状態で運転した場合、免許停止や罰金、最悪の場合は刑事罰を受けることもあります。
お花見を楽しんだ後は、公共交通機関を利用する、代行運転を依頼する、または事前に運転手を決めておくなど、飲酒後は安全に帰宅できる手段を確保しておくことが大切です。
7.まとめ|花見酒で春の訪れを楽しもう
本記事では、花見酒の歴史や言葉の由来、お花見におすすめのお酒や食べ物について紹介しました。
花見酒は、春の訪れを感じながら楽しむ日本の風物詩です。満開の桜の下で、家族や友人と語らいながらお酒を味わう時間は、特別なひとときとなるでしょう。
ただし、楽しい宴を過ごすには、周囲の迷惑にならないように、節度を守ることが大切です。
また、飲み過ぎによる体調不良やトラブルを防ぐため、自分のペースで適量飲酒を心がけることも重要です。
春の穏やかな空気と美しい景色を満喫しながら、心地よい花見酒を楽しみましょう。