「鍛えるとお酒(アルコール)に強くなる」は本当?お酒と上手に付き合う方法を解説

お酒の席で、「鍛えればお酒(アルコール)に強くなる」という噂や、「飲んでいるうちにお酒の耐性がついた」という話を耳にします。
しかし、アルコール耐性は遺伝や体質が大きく関わり、お酒をたくさん飲んだからといって必ずしも強くなるわけではありません。
むしろ、無理な飲酒を続けることで、肝障害や依存症などのリスクが高まります。
本記事では、「お酒は鍛えれば強くなる」という考え方の真意や、アルコールに強いか弱いか確かめる方法、お酒と上手に付き合う方法について解説します。
そのほか、お酒にまつわる巷の噂についてQ&A方式で紹介していますので、健康維持の参考にしてください。
目次 / このページでわかること
1.「鍛えるとお酒(アルコール)に強くなる」は本当か?
「鍛えるとお酒(アルコール)に強くなる」という噂は、体質による影響が大きいため、一概には言えません。
もともとお酒が飲める体質の人は、お酒を飲み続けるうちに「酔いにくくなった」と感じることがあります。
これはアルコール代謝が向上したわけではなく、脳がアルコールの影響に慣れることで、酔いの感覚が変化するためと考えられています。
しかし、アルコールの分解能力は体質的に決まっているため、飲み続けたからといって「お酒に強くなる」わけではありません。
一方で、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなったり、体調不良になったりする人は、もともとアルコールに弱い体質のため、いくら鍛えても強くなることはありません。
また、お酒に強いと自覚している方や、以前よりお酒に強くなったと感じている人ほど、飲み過ぎには注意が必要です。
アルコールは主に肝臓で分解・解毒されますが、過度な飲酒はアルコール性肝障害やアルコール依存症のリスクを高めます。
とくに肝臓には知覚神経がないため、アルコール性肝障害を発症しても自覚症状が乏しく、気づいた時には禁酒が必要になるケースも少なくありません。
毎日の飲酒や、大量飲酒が習慣化している人は、休肝日を設けたり、あらかじめ飲酒量や飲酒ルールを決めたりするなどの工夫が必要です。
2.お酒(アルコール)の代謝の仕組み
アルコールは胃と小腸で吸収され、肝臓で分解されます。
肝臓では、ADH(アルコール脱水素酵素)によってアルコールが分解され、分解過程でアセトアルデヒドが生成されます。
その後、アセトアルデヒド→酢酸→水・二酸化炭素の順で分解され、最終的に尿や汗、呼気に含まれて体外へ排出されます。
途中で生成されるアセトアルデヒドは、ALDH2(アルデヒド脱水素酵素)によって分解されますが、日本人はALDH2の働きが弱い、もしくは機能していない体質を持つ人が多いとされています。
そのため、いくら飲んで鍛えても、遺伝で決められた体質のため、お酒に強くなることは難しいと考えられています。
また、アルコールの分解速度は、年齢や性別、飲酒量やお酒の種類、その日の体調によって変化します。
以下の関連記事では、アルコールが抜ける時間の計算方法について詳しく解説しています。日頃から運転する方や、お酒が弱いと感じている方、さまざまな種類のお酒をたしなむ方は、ぜひ参考にしてください。
3.お酒(アルコール)に強いか弱いか確かめる方法
お酒に強いか弱いかは、単に「飲めるかどうか」だけで判断するものではありません。
アルコールの分解能力は体質によって大きく左右されるため、自分の体質を正しく知ることが重要です。
そこで本章では、手軽にアルコール耐性をチェックできる以下2つの方法について詳しく解説します。
- ・アルコールパッチテスト
- ・アルコール体質検査(遺伝子検査)
アルコールパッチテスト
消毒用エタノールをガーゼに染み込ませ、上腕に7分間貼り、はがして5〜10分後に皮膚の色をチェックします。
皮膚が赤くなっていればアルコール耐性が低く、変化がなければアルコール耐性が高い可能性があります。
チェックする際は、運動直後をさけ、貼った部分を押さえつけたり、腕に力を入れ過ぎたりしないように気をつけましょう。
アルコールパッチテストは、体質を視覚で確認できる簡易的な方法として、未成年者の飲酒教育などに活用されています。
ただし、体調や気温・湿度などの影響を受けるため、正確な判断には向いていません。
より詳細にアルコール耐性を知りたい場合は、次項のアルコール体質検査(遺伝子検査)を活用するとよいでしょう。
アルコール体質検査(遺伝子検査)
アルコール体質検査は、口腔内粘膜を採取して行う遺伝子検査です。
アルコールやアセトアルデヒドの分解酵素である「ADH1B」と「ALDH2」の遺伝子タイプを調べ、約5〜9タイプに分類します(検査機関によって分類されるタイプの数が異なります)。
アルコールパッチテストより精度が高く、一生に一度の検査で完了します。加齢などに左右されないため、長期的な健康管理に活用可能です。
近年は、医療機関だけでなく、郵送による検査キットも利用可能です。自宅にいながら簡単に調べられるため、時間をかけずにアルコール耐性を詳しく知りたい方におすすめです。
以下の関連記事では、実際にアルコール体質検査キットを利用した体験談を紹介しています。具体的な検査の流れや費用などが気になる方は、参考にしてください。
4.お酒(アルコール)との上手な付き合い方
お酒は適量を守れば、リラックス効果やストレス解消につながります。
しかし、飲み過ぎると肝障害や依存症の健康リスクが高まるため、適切な飲酒習慣を身につけることが重要です。
そこで本章では、お酒(アルコール)と上手に付き合う方法3つについて紹介します。
① 1日の飲酒量の目安を知る
厚生労働省では、節度ある適度な飲酒として、「1日平均純アルコール20g程度」を推奨しています。(※飲酒習慣のない人に対してこの量を推奨するものではありません。)
純アルコールとは、お酒に含まれるアルコール量のことで、お酒の種類によって含まれる量が異なります。
お酒の種類別での純アルコール20gの目安は、以下のとおりです。
種類 | ビール | 日本酒 | ウイスキー | 焼酎 | ワイン | 酎ハイ |
---|---|---|---|---|---|---|
量 | 500ml 中瓶1本 |
180ml 1合 |
60ml ダブル1杯 |
100ml グラス1/2杯 |
200ml グラス2杯 |
350ml 1缶 |
アルコール度数 | 5% | 15% | 43% | 25% | 12% | 7% |
個人差はありますが、目安を超える飲酒は、生活習慣病や肝障害のリスクを高めるため、無理をせず、楽しくお酒をたしなみましょう。
参考:アルコール|厚生労働省
② 食べながら飲む
空腹の状態でお酒を飲むと、アルコールの吸収が早まり、血中アルコール濃度が急激に上昇します。
お酒が弱い方は、飲酒前や飲酒中に胃の中に食べ物を入れて、吸収速度を穏やかにしましょう。
おすすめの食材は、タンパク質や脂質を含む大豆製品、チーズ、ナッツ、枝豆、肉類などです。
また、お酒を飲む際は、水と一緒に飲むのも効果的です。水を飲むことで、脱水症状を防ぎ、悪酔いや二日酔いの辛い症状を回避・軽減できる可能性があります。
③ 休肝日を設ける
肝臓は、アルコールを分解・解毒する働きがありますが、日常的に飲酒が続くと大きな負担がかかってしまいます。
また、アルコールの刺激により、胃や腸などの粘膜も荒れてきます。
飲酒習慣がある方は、肝臓や消化管を酷使しているため、週に1〜2回の休肝日を設け、各臓器を休ませましょう。
適切な休肝日の設け方や、過ごし方のポイントについて関連記事で紹介しているので、参考にしてください。
5.お酒(アルコール)耐性にまつわるQ&A
「鍛えるとお酒に強くなる」など、お酒に関する噂や俗説は多く、さまざまな疑問を持つ方もいるでしょう。
実際のところ、お酒の強さや酔い方には体質や飲み方が大きく関係しており、単純なイメージだけで判断するのは危険です。
そこで本章では、アルコール耐性にまつわる疑問について詳しく解説します。
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筋肉がある人はお酒に強い?
アルコールの代謝は、主に肝臓の役目ですが、筋肉や心臓でも行われます。
肝臓で酢酸まで分解されると、血液を介して筋肉に送られ、水と二酸化炭素に分解されます。
筋肉量が多い人は、アルコールが肝臓で酢酸に分解された後、筋肉で効率よく分解・エネルギー利用されるため、血中アルコール濃度が下がりやすい傾向があります。
そのため、筋肉量が多い人は酔いにくいとされることがあります。
しかし、アルコールの分解にはADH(アルコール脱水素酵素)とALDH2(アルデヒド脱水素酵素)が重要な役割を果たしています。
これらの酵素の働きが弱い体質の場合、筋肉量に関係なくお酒に弱いままである点には注意が必要です。
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安いお酒は悪酔いしやすい?
安価なお酒には、エタノール以外に微量のメタノール、アセトン、タンニンなどが含まれることがあります。
とくに果実を原料とした蒸留酒(ブランデーやテキーラなど)には、製造過程でメタノールが多く含まれることがあります。
ただし、通常の製品では人体に影響のあるレベルにはならないため、価格の高低だけで悪酔いのしやすさが決まるわけではありません。
むしろ、飲み方や飲酒量の方が悪酔いの原因として影響が大きいと考えられます。
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日本酒は悪酔いしやすい?
「日本酒が悪酔いしやすい」かどうかは、飲み方や飲酒量による影響が大きく、一概には言えません。
なぜこのような俗説が言われるようになったのか、調べてみるといくつかの要因が考えられます。
- 1)戦後の米不足により、醸造アルコールを大量に加えた「三増酒」のイメージが残っている
- 2)過去にテレビ番組で誤解に基づく情報が放送されたことがある
- 3)日本酒はビールや酎ハイよりアルコール度数が高く、同じ感覚で飲むと純アルコールの摂取量が増えてしまう
特に、3)の「純アルコール量の違い」について詳しく見てみましょう。
アルコールの分解時間は、摂取した純アルコール量で変化します。
たとえば、アルコール度数15%の日本酒100mlに含まれる純アルコールは約12gで、アルコール度数5%のビール100mlに含まれる純アルコール量は4g前後です。この数値をもとに、アルコールの分解時間を計算すると、ビールは約1時間、日本酒は約3時間かかることになります。ただし、性別や個人差があります。
さらに日本酒は、アルコール度数が高い割に口当たりが良く飲みやすいため、つい飲み過ぎてしまい、結果としてアルコールの分解に時間がかかります。
そのため、「日本酒は悪酔いしやすい」と言われるようになったのではないでしょうか。
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ちゃんぽんは二日酔いしやすい?
「ちゃんぽん」とは、異なる種類のお酒を混ぜて飲むことを指す言葉で、二日酔いしやすいと言われています。
しかし、これに関する明確な科学的根拠はありません。ただし、異なる種類のお酒を飲むと、アルコールの摂取量を把握しにくくなり、結果的に飲み過ぎてしまうことが二日酔いの原因となることは考えられます。
たとえば、同じ量の日本酒とビールを飲んだとしても、摂取した純アルコール量は異なります。
さまざまな味を楽しんでいるうちに、つい飲み過ぎてしまい、結果的に純アルコールの摂取量が増えてしまうこともあります。
その結果、肝臓でのアルコール代謝が追いつかず、二日酔いしやすくなると考えられます。
結局のところ、お酒の種類に関係なく、適量を守ることが大切です。
6.まとめ|お酒(アルコール)を鍛えるのは危険。適量を楽しもう
本記事では、「お酒は鍛えれば強くなる」という考えの真意やアルコールの分解能力を調べる方法、お酒と上手に付き合う方法、お酒にまつわる噂について解説しました。
アルコールの分解能力は遺伝や体質によって決まっているため、鍛えて強くなることはありません。
むしろ、無理な飲酒を続けると肝臓に負担がかかり、生活習慣病やアルコール依存症のリスクが高まる危険性があります。
お酒を楽しむためには、自分の適量を知り、休肝日を設けるなど健康的な飲み方を心がけることが大切です。
アルコールと上手に付き合いながら、無理のない範囲で楽しく飲みましょう。