ETC2.0とは?従来のETCとの違いやメリット・2030年問題の対策を解説
ETC2.0は、通行料金の自動支払いや、災害・事故・渋滞など交通情報の提供を行うシステムです。
国土交通省は、2030年を目標にETC関連の法律改正や、セキュリティ規格の変更を発表しており、新規格に対応するETC2.0の導入を推進しています。
そのため、2030年以降は、従来のほとんどのETCが使用不可になる可能性があります。
そこで本記事では、ETC2.0の仕組みや従来ETCとの違い、導入する5つのメリット、ETC2.0の未来について解説します。ETC2.0の設置に必要な機器や、利用時の注意点についても紹介するので、早めの設置を考えている方は参考にしてください。
目次 / このページでわかること
1.ETC2.0とは?従来のETCとの違い
本章では、従来のETCとの違いや、ETC2.0の機能や特徴について詳しく解説します。
「ETC2.0がどれだけ優れたシステムなのか」
「いつまでに設置が必要なのか」
まだご存じない方は、ぜひ参考にしてください。
従来のETCとの違い
従来のETCは、通行料金の自動支払いに特化しています。料金所のアンテナと車載器が通信を行い、支払いが処理されます。
ETC2.0は、自動支払いに加え、交通情報の提供が可能です。全国の高速道路(約1,800カ所)に設置された「ITSスポット※」と車載器が通信を行い、広範囲の交通情報をドライバーに提供します。
※ITSスポット:高速道路を中心に設置された、ETC2.0と通信して情報をやり取りする路側無線装置
ETC2.0の基本的な機能と特徴は?
ETC2.0の基本的な機能は以下の通りです。
機能 | 内容 | |
---|---|---|
ETC2.0 | ETC(従来) | |
通行料金の自動支払い | 高速道路や有料道路の自動支払い、時間帯割引や迂回割引に対応。 |
|
交通情報の提供・ルート提案 | 渋滞・事故・災害などの情報提供を行い、最適なルートを提案。 | – |
安全運転の支援 | 急カーブ・合流・事故多発地点・落下物などの警告。 | – |
多目的利用 | フェリー乗り場・民間駐車場・ガソリンスタンド・ドライブスルーなどでノンストップ決済が可能。 | – |
車両運行管理支援 | 物流事業者を対象に、特定の車両の走行位置や急ブレーキ等のデータを提供。 | – |
ETC2.0は、ドライバーの利便性を向上させるだけでなく、交通事故の防止や道路全体のスムーズな通行を支援するシステムです。
また、利便性の高さから、道路の老朽化や物流の効率化、高齢化社会における交通安全といった、2030年問題を解決する交通インフラとして期待されています。
2.ETC2.0を活用する5つのメリット
ETC2.0の機能は、最新式のカーナビと似ていますが、ETC2.0を導入することで、よりお得、かつスムーズに高速道路を利用できます。
そこで本章では、ETC2.0を活用する5つのメリットについて解説します。
高速道路の割引率が従来のETCから10%上乗せされる
ETC2.0を導入した事業用車両(緑ナンバー)かつ、大口・多頻度利用の事業者の場合、従来のETC割引きからさらに10%の割引率が上乗せされます。
支払いは、車両ごとに発行される「ETCコーポレートカード」を介して行います。ETCコーポレートカードとは、全国の高速道路や一部有料道路で利用できる、料金後払い制のカードです。
車両1台ごとの、1か月の利用額と割引率は以下の通りです。
カードごとの1か月の割引対象額 | 割引率(ETC) | 割引率(ETC2.0) |
---|---|---|
5,000円以上、10,000円以下 | 10% | 20% |
10,000円以上、30,000円以下 | 20% | 30% |
30,000円以上 | 30% | 40% |
保有台数が多い事業者ほど、長い目で見れば大幅にコストを抑えることが可能です。
なお、割引きの適用には「1か月の利用額が500万円以上、かつ車両1台あたりの平均利用額が3万円以上」という条件があります。
圏央道利用料が20%割引きになる
都心から半径40〜60kmの県域を結ぶ圏央道では、ETC2.0の導入車を対象に、20%割引きを実施しています。対象区間は「茅ヶ崎JCT〜海老名JCT」「海老名JCT〜木更津JCT」です。
また、新湘南バイパス(藤沢IC〜茅ヶ崎JCT)も割引きが適用されます。ETC2.0を導入した車両のみ割引きが可能なため、お得に走行したい方は早めの導入をおすすめします。
渋滞を把握して走行できる
ETC2.0は、事故や災害、帰省シーズンなどで発生した渋滞情報をもとに、ドライバーに最適なルートを提案します。
ETC2.0は、より広範囲の交通情報を取得可能なため、情報提供のたびに、ETC2.0と連携したカーナビが最速ルートを再検索します。
また、提案されたルートを走行した場合、有料道路の利用料が割引きされるため、早くてお得な走行が可能です。
高速道路からの一時退出と再進入が可能
ETC2.0は、以下の条件を満たすと高速道路からの一時退出と再進入が可能です。
【条件】
- 対象の道の駅を利用すること
- 2時間以内に再進入すること
ETC2.0による一時退出と再進入は、国土交通省が「社会実験」という形で行っており、現在、全国29カ所の道の駅が対象になっています。
災害情報や注意喚起を受け取れる
ETC2.0は、地震や豪雨などの災害時に、危険箇所や通行止め区域、走行可能ルートや避難場所をリアルタイムで情報提供します。
また、地震などでネット回線が利用できない場合でも、ETC2.0は情報の受信が可能です。
さらに、国土交通省では、熊本地震や能登半島地震が発生した際に、ETC2.0による情報収集を行い、啓開や支援物資輸送の対応に役立てられました。
ETC2.0は、迅速な対応が求められる災害時に重要な役割を果たすため、万が一の事態に備えた早めの導入がおすすめです。
3.ETC2.0の導入に必要な車載器は?
従来のETC車載器は、主に料金の自動支払いに対応しているため、交通情報を受信する機能がありません。そのため、ETC2.0による最新の交通情報の取得や、割引サービスの利用には、ETC2.0対応車載器が必要です。
そこで本章では、ETC2.0の導入に必要な車載器や連携方法、セットアップまでの流れを解説します。
ETC2.0対応のカーナビやスマートフォン
ETC2.0サービスを受けるためには、「ETC2.0対応車載器」が必要です。
音声だけでなく、図形や画像情報などもフル活用したい場合、ETC2.0対応のカーナビ、もしくはスマートフォンが必要です。
カーナビの相場は7万円〜10万円程度で、画面サイズや機能によって異なります。
スマートフォンの場合、ETC2.0車載器によって適用機種が異なるため、ETC2.0車載器を導入する際は、事前に適用スマートフォンの機種を確認しましょう。
ETCカードとの連携
ETC2.0の利用には、ETCカードをETC2.0車載器と連携させる必要があります。すでに従来のETCを導入している方は、使用中のETCカードをそのまま利用可能です。
新規でETC2.0を利用する場合は、利用中のクレジットカード会社に申請すると、ETCカードが発行されます。ETCカードが届いたら、ETC2.0車載器に挿入して連携が完了します。
セットアップまでの簡単な流れ
セットアップとは、ETC2.0車載器に車両情報を暗号化して登録し、ETC2.0のサービスを利用可能にする作業です。セットアップを行うことで、ETCカードの不正利用を防止できます。
ETC2.0のセットアップ手順は以下のとおりです。
- 1. ETC2.0車載器を取り付ける車両でセットアップ登録店に行く(ETC2.0車載器を持参する)
- 2. 車検証と運転免許証を提示
- 3. セットアップ申請書を記入する
- 4. セットアップ作業完了後、料金の支払いを行う
ETC2.0のみのセットアップ料金は、3,000〜5,000円程度が相場です。セットアップは20〜30分で完了します。
ETC2.0のセットアップには、高度なセキュリティ処理が必要なため、登録されていない店舗や個人では行えません。また、車検証上の本人以外が手続きを行う場合は、委任状も忘れず持参してください。
4.今後のETC2.0の未来は?
ETC2.0は、交通インフラの効率化や社会問題の解決に貢献する技術として、今後さらに進化することが期待されています。
そこで本章では、2030年問題への対応、新しい交通サービスの展開、ETC2.0の助成金について詳しく解説します。
2030年問題への対策
2030年問題とは、高齢化社会や都市部の交通量の集中、物流量の増加による交通インフラのひっ迫を指します。
ETC2.0は、リアルタイムで交通情報を把握できるため、渋滞を回避し効率的な物流ルートを提案可能です。また、事業者向けに、車両の急ブレーキ・急加速・走行速度などの情報も提供できます。
本来ETCは、料金所での渋滞緩和や排気ガス削減を目的に導入されたサービスでしたが、今後は、2030年問題の対策にETC2.0が重要な役割を果たすと考えられています。
新たな交通サービスの可能性
ETC2.0は、次世代の交通サービスとしても注目されています。
たとえば、目的地周辺の空いている駐車場を提案したり、飲食店のドライブスルーやフェリー乗り場で自動決済ができたりします。ETC2.0で全てを完結させることが、あたりまえになるかもしれません。
また、料金の支払いに時間がかからないため、渋滞緩和も期待されています。
ETC2.0の導入を支援する助成金の展開
NEXCOなどの道路管理会社では、ETC2.0車載器を導入する方を対象に助成金を出しています。ETC2.0の普及を目的に実施されるキャンペーンで、助成台数が50,000万台に達するまで実施されます。
1台につき最大10,000円の助成金が出されるため、ETC2.0の導入を考えている方は、早めの導入で、ETC2.0をお得に利用可能です。
5.ETC2.0利用時の注意点
ETC2.0には便利な機能が多数ありますが、不具合なくETC2.0を利用するためには、車種ごとの車載器の違い、導入に関する規則を確認することが大切です。
そこで本章では、ETC2.0利用時の注意点について解説します。
従来の車載器と併用ができない場合がある
ETC2.0車載器は、従来のETC車載器と機能やセキュリティ規格が異なるため、併用できない可能性が高いです。なお、2015年6月以前に導入された車載器は規格が古いため、ETC2.0車載器への買い替えが必要です。
ETCカードはそのまま使用できますが、ETC2.0車載器の機種によっては正しく動作しない可能性があります。そのため、導入前は使用中のETCカードが利用可能か確認してください。
バイクと自動車で車載器が異なる
ETC2.0の利用には、車両タイプに応じた車載器の設置が必要です。とくにバイクの場合、設置スペースが狭く、振動や風が強いため、故障や落下の危険性があります。
また、自動車専用の車載器をバイクに設置すると、料金所で誤作動を起こし、開閉バーが動かない場合があります。大きな事故につながりかねないため、バイク専用の車載器を使いましょう。
ETC2.0の設置は専門業者でないと難しい
ETC2.0は、専門知識があれば自分で設置可能ですが、ただ取り付けただけでは利用できません。
ETC2.0は不正利用を防止するため、暗号処理を用いてセキュリティが強化されています。そのため、車載器の取り付け後にセットアップを行う必要があり、厳しい審査を通過した登録店でのみ、セットアップが可能です。
安全で確実な導入を考えた場合、セットアップ登録店で取り付けることをおすすめします。
6.まとめ|2030年問題を想定しETC2.0導入を検討しよう
本記事では、ETC2.0の機能や従来ETCとの違い、導入に必要な車載器やETC2.0の未来について解説しました。
ETC2.0は料金の割引きや渋滞回避、安全運転支援など、さまざまな交通サービスを提供する次世代の交通システムです。さらに、2030年問題と呼ばれる交通インフラの解決策として期待されています。
ETC2.0の導入には専用の車載器や、登録店でのセットアップが必要なため、コストがかかりますが、助成金の活用で負担を抑えられます。特に事業用車両を複数台所有している方は、ETC2.0の導入で、大幅にコスト削減が可能です。
2030年を見据えて、快適で経済的な交通環境の実現を目指しましょう。