泥酔とは?症状と介抱する際の正しい対処法|酩酊との違いや語源を解説
「昨夜は泥酔してしまって記憶がない…」
「一緒に飲んでいた人が泥酔してしまったが対処が分からない」
お酒の失敗談としてよく使われる「泥酔」という言葉ですが、実は単なる「ひどい酔っ払い」を指すだけの言葉ではありません。
医学的には、「意識障害」や「運動機能の低下」が顕著に現れる、非常に危険な「酩酊(めいてい)」の一段階を指します。
放置すれば「急性アルコール中毒による命の危険」や、「翌朝の飲酒運転などのトラブル」に直結する恐れもあります。
本記事では、泥酔の定義や「酩酊」との違い、正しい介抱の方法から翌日のアルコールへの影響までを詳しく解説します。
ご自身や周りの人の安全を守るために、ぜひ最後までご覧ください。
目次 / この記事でわかること
1. 泥酔(でいすい)とは?酩酊との違いと語源

泥酔とは、正気を失うほどひどくお酒に酔った状態を指し、医学的には「酩酊」の中でも意識障害や運動障害が顕著に現れる深刻な段階を指します。
お酒に酔うと、脳の麻痺が進むにつれて「爽快期」から「昏睡期」へと段階が進んでいきます。
その中でも「泥酔期」は、自力で立つことが困難になり、言語も支離滅裂になるなど、心身ともにコントロールを失った状態です。
また、「泥酔」という言葉には、その状態を象徴するユニークな語源も隠れています。
ここではまず、言葉の意味と背景について整理しましょう。
1-1 泥酔の読み方と「泥(どろ)」に隠された意外な語源
泥酔は「でいすい」と読みます。
文字通り「泥(どろ)のように酔う」と解釈されがちですが、この「泥」は地面にある土のことではありません。
語源は、中国の古い文献「扶南異物志|Wikipedia」に登場する、南海に住むという伝説上の虫「泥(でい)」に由来すると言われています。
この虫は骨がなく、水の中では元気に動き回りますが、水から出ると形を失って「泥(どろ)」のようにぐにゃぐにゃになってしまう性質を持っています。
ひどく酔っ払って骨がなくなったかのようにふらふらになり、自分の体を支えられなくなった人の姿を、この虫になぞらえて「泥酔」と呼ぶようになったのが始まりだとされています。
他にも「泥のように眠る」などの表現で使われています。
1-2 「酩酊(めいてい)」との違いは?
「泥酔」と混同されやすい言葉に「酩酊」があります。
この2つの大きな違いは、指し示す「範囲」にあります。
酩酊(めいてい)
アルコールによって引き起こされる、中毒症状の「総称」
泥酔(でいすい)
酩酊の段階における、症状が重い特定の「段階」
つまり、少し顔が赤くなる程度の「ほろ酔い」も、意識を失う直前の「泥酔」も、すべて「酩酊」という大きなくくりの中に含まれます。
段階は、「爽快期・ほろ酔い期・酩酊初期・酩酊極期・泥酔期・昏睡期」の6ステージがあり、泥酔期、昏睡期は非常に危険な状態であると認識しておきましょう。
2. 泥酔の症状とアルコール濃度の目安

泥酔期の症状は、「千鳥足でふらつく」「何度も同じことを話す」「意識が混濁する」などが挙げられます。
血中アルコール濃度は0.31〜0.40%程度とされ、脳の麻痺が広範囲に及んでいる非常に危険な状態です。
医学的に定義される「単純酩酊」の6段階のうち、泥酔期は重い順から数えて2番目、つまり昏睡期の直前に位置します。
この段階では、単に「お酒に強い・弱い」といったレベルを超え、生命を維持する脳の機能にまで影響が及んでいるとされています。
具体的な症状と、そのとき脳内で起きている変化を詳しく見ていきましょう。
2-1 泥酔期の具体的な症状|歩行困難・言語障害
泥酔期に入ると、脳の麻痺によって運動神経や感覚神経が正常に機能しなくなります。
周囲の人が、緊急性を意識すべき代表的な症状を挙げていきます。
| 症状 | 具体的な状態 |
|---|---|
| 歩行困難 | まっすぐ歩けず、支えがないと転倒する(千鳥足がさらに悪化した状態)。 |
| 言語障害 | ろれつが全く回らず、何を言っているか聞き取れない。同じ話を何度も繰り返す。 |
| 意識障害 | 呼びかけに対する反応が鈍くなる。座ったまま、あるいは路上で眠り込む。 |
| 身体症状 | 吐き気や嘔吐、激しい動悸などが起こりやすくなる。 |
上記の症状がある場合は、周りの方の助けが必要な状態です。
決してそのまま放置せずに正しい対処を行いましょう。
参考:
・アルコール酩酊|健康日本21アクション支援システム(厚生労働省)
・飲酒の基礎知識|公益社団法人アルコール健康医学協会
2-2 泥酔中は脳で何が起きている?|小脳や脳幹への影響
泥酔期は、アルコールによる麻痺が脳の深部まで到達している状態です。
小脳の麻痺(運動機能の低下)
平衡感覚を司る「小脳」が麻痺することで、千鳥足やふらつきが起こります。
海馬の麻痺(ブラックアウト)
記憶を司る「海馬」が麻痺すると、その場の出来事を記録できなくなります。
脳幹への影響(生命の危機)
呼吸や体温調節を司る「脳幹」にまで麻痺が広がると、呼吸抑制や嘔吐物による窒息のリスクが急激に高まります。
また、泥酔レベルの飲酒が習慣化すると、一時的な酔いだけでは済まないリスクも指摘されています。
日本臨床環境医学会の症例解析によれば、長期の飲酒歴は小脳失調(歩行障害など)や末梢神経障害といった器質的な神経疾患を引き起こす要因となるとされています。
特に女性は男性よりも少量・短期間の飲酒で発症しやすく、重症化しやすい傾向があるため、自身の適量を大きく超える「泥酔」には細心の注意が必要です。
3. もし周りの人が泥酔してしまったら?正しい介抱と対処法

泥酔している方の介抱は、以下の流れで対処しましょう。
- ①衣類を緩めて楽にさせる
- ②「回復体位」で嘔吐物による窒息を防ぐ
- ③体温低下を防ぐため衣類をかける
意識がない、呼吸がおかしい場合は、迷わず救急車を呼んでください。
泥酔状態の人は、自分で自分の身を守ることができません。
介抱する側が正しい知識を持っていないと、良かれと思ってした行動が逆に容態を悪化させてしまうこともあります。
最悪の事態を防ぐための、正しい介抱の手順を解説します。
3-1 窒息を防ぐ「回復体位(横向きに寝かせる)」の方法

泥酔者が横になって寝ている場合、最も恐ろしいのが「嘔吐物による窒息」です。
仰向けで寝かせると、吐いたものが喉に詰まり、窒息や誤嚥性(ごえんせい)肺炎を引き起こす危険があります。
これを防ぐのが「回復体位」です。
【回復体位のステップ】
- ①横向きに寝かせる
体の左側を下(または右側を下)にして、横向きに寝かせます。
※胃の構造上、左側を下にすることで胃の内容物が逆流しにくいとされていますが、どちらの向きでも仰向けを避けることが最優先です。 - ②上側の膝を曲げる
上になった方の足の膝を直角に曲げ、体が前に倒れないよう支えにします。 - ③下側の腕を伸ばす
下になった方の腕を前方に伸ばし、上になった方の手は顔の下に敷いて枕代わりにします。 - ④気道を確保する
顔を少し上に向かせ、口が地面に近い位置に来るように調整し、嘔吐しても口の外へ流れ出るようにします。
3-2 絶対にやってはいけない間違った介抱|無理に吐かせる・入浴させる
泥酔者の介抱において、良かれと思ってやってしまいがちな行動が、実は命に関わる重大な過失に繋がることがあります。
まず、「無理やり吐かせること」は絶対に避けてください。
意識が朦朧としている状態で嘔吐を誘発すると、嘔吐物が誤って気管に入り込み、窒息や誤嚥性(ごえんせい)肺炎を引き起こす原因になる場合があります。
また、最も注意したいのが「寝れば治る」と判断して一人きりで放置してしまうことです。
睡眠中に容態が急変したり、喉を詰まらせたりする可能性があるため、回復するまでは必ず誰かが付き添い、常に様子を見守るようにしてください。
3-3 救急車を呼ぶべき「危険なサイン」の見極め方
泥酔者に以下の症状が1つでも見られた場合は、迷わず119番通報して救急車を要請してください。
まず、大きな声で名前を呼んだり、体を強く叩いたりしても全く反応がない場合は、「深刻な意識障害」に陥っている可能性があります。
あわせて呼吸の状態も確認し、呼吸が非常に浅くなっていたり、止まりそうだったりなどの不規則な様子があれば一刻を争います。
また、全身が異常に冷たくなっている場合や、顔面が蒼白で唇が紫色になる「チアノーゼ」が見られる場合も、循環器や呼吸器が正常に機能していない危険な兆候です。
さらに、嘔吐物に血が混じっていたり、尿や便を漏らしてしまったりしている場合も、本人の意思で身体を制御できていない重篤な状態といえます。
もし救急車を呼ぶべきか判断に迷った際は、救急安心センター(#7119)などの相談窓口へ電話するのも1つの手段ですが、意識がない、あるいは反応が著しく鈍い場合は、ためらわずに即座に通報して専門家の助けを借りることが最優先です。
4.【要注意】泥酔した翌日の「飲酒運転」の危険性

泥酔するほど飲んだ場合、アルコールが完全に分解されるまで半日以上かかるケースが多々あります。
「一晩寝たから大丈夫」という主観的な判断は極めて危険であり、翌朝のアルコールチェックで検知されるリスクが非常に高いです。
多くの方が「少し寝ればお酒は抜ける」と誤解していますが、泥酔レベルの飲酒(日本酒7合〜1升、ウイスキーボトル1本など)は、身体にとって大きな影響を及ぼす危険な状態です。
翌朝、目が覚めたときに意識がはっきりしていても、体内には酒気帯び運転の基準値を大幅に超えるアルコールが残っている可能性が極めて高いことを自覚しておく必要があります。
4-1 泥酔レベルの飲酒量が分解されるまでの時間は?
アルコールが体外へ排出される時間は、摂取した「純アルコール量」に比例します。
1時間で分解できるアルコールの目安は、以下の計算式で求められます。
【アルコールの分解時間の目安】
「純アルコール量(g)÷(体重(kg) × 0.1) = 分解にかかる時間(h)」
たとえば、体重60kgの人が泥酔期の目安とされる「日本酒7合(純アルコール量:約140g ※1合20g換算)」を飲んだ場合、分解にかかる時間は単純計算で約23時間となります。
つまり、翌朝の始業時は、体内にはまだ半分以上のアルコールが残っている計算になります。
さらに、前述した「爽快期」の血中濃度(0.02〜0.04%)の時点で呼気中アルコール濃度は0.15mg/Lを超え、酒気帯び運転の違反対象となります。
泥酔レベルの飲酒をした翌日は、夕方になっても基準値以下のレベルまで下がらないケースがあることを把握しておきましょう。
4-2 睡眠中はアルコールの代謝が遅れる
飲酒の翌日に運転を控えている場合、「寝ている間にアルコールが分解される」という思い込みは危険です。
実は、睡眠中は起きているときと比較して、アルコールの代謝速度が遅くなることが研究によって示されています。
睡眠中は肝臓への血流量が減少し、身体の活動レベルも低下するため、分解効率が下がります。
また、泥酔状態での睡眠は浅くなりやすく、身体の回復そのものも遅れます。
「8時間寝たから大丈夫」という理屈は、泥酔レベルの飲酒においては通用しません。
アルコールが抜けるのを待つのであれば、睡眠時間ではなく、計算上の「分解時間」に基づいた、より慎重な判断が求められます。
4-3 運転前のアルコールチェッカーによる確認の重要性
本人が「酔いは冷めた」と感じていても、呼気に含まれるアルコール濃度までは主観で判断できません。
特に仕事で車を運転する方は、自分自身の「感覚」を過信せず、客観的な数値で確認することが重要です。
近年、白ナンバー事業者を含む多くの企業でアルコールチェックの義務化が進んでいますが、これは「前日の酒が残っている状態での運転」を防ぐためでもあります。
泥酔するまで飲んでしまった翌朝は、必ず高精度なアルコールチェッカーで確認を行い、少しでも反応が出た場合は運転を控える勇気が必要です。
5.【FAQ】泥酔に関するよくある質問

泥酔の状態や対処法について、よくある疑問をQ&A形式でまとめました。
泥酔して記憶がない(ブラックアウト)のはなぜ?
脳内で記憶を司る「海馬」が、高濃度のアルコールによって麻痺し、新しい記憶を保存できなくなるためです。
意識はあるため周囲とは会話できますが、脳が録画を停止しているような状態であり、時間が経っても思い出すことはできません。
ブラックアウトを繰り返すと脳へのダメージが蓄積されるため注意が必要です。
参考:途切れた記憶:アルコール誘導性のブラックアウト|National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism
泥酔を早く治す(酔いを冷ます)飲み物はある?
アルコールを直接分解して「酔いを冷ます」即効性のある飲み物はありません。
ただし、水分補給によって体内のアルコール濃度を薄め、脱水を防ぐことは有効です。
水やスポーツドリンク、経口補水液などを摂取し、肝臓の代謝を助けるのが最も確実な方法です。
泥酔して他人に迷惑をかけた場合に法律的な責任はどうなる?
原則として、泥酔状態であっても自身の行為に対する刑事責任や民事上の損害賠償責任を免れることはできません。
「酔っていて覚えていない」という主張は通用せず、器物損壊や暴行、あるいは飲酒運転などの罪に問われます。
自ら進んで飲酒し、予測可能な範囲で事件を起こした場合は「原因において自由な行為」として厳しく罰せられます。
泥酔と酩酊は何が違う?
酩酊は「お酒に酔った状態全般」を指す総称であり、泥酔はその中でも特に症状が重い「特定の段階」を指します。
医学的な酩酊分類(6段階)では、ほろ酔いよりもはるかに進行し、歩行困難や意識混濁が見られる後半のステップ(泥酔期)に該当します。
泥酔して寝ている人を一人にして大丈夫ですか?
泥酔者を一人にするのは、非常に危険です。
泥酔状態では嘔吐物による窒息や、急性アルコール中毒による急激な容態変化、低体温症などのリスクがあります。
必ず誰かが付き添い、回復体位をとらせて呼吸や顔色を観察し続けてください。
6. まとめ|泥酔は「命」と「社会的信用」に関わる危険な状態
本記事では、泥酔の定義や症状、正しい介抱の手順、そして翌日の飲酒運転のリスクについて詳しく解説しました。
「泥酔」は単なるお酒の失敗談で済まされる状態ではなく、医学的には小脳や脳幹にまで麻痺が及んでいる非常に危険なサインです。
もし周囲に泥酔してしまった人がいる場合は、本記事で紹介した「回復体位」を実践し、決して一人にせず、必要であれば迷わず救急車を要請してください。
また、泥酔するほど飲んだ場合、体内からアルコールが完全に抜けるまでには想像以上の時間がかかります。
適切な飲酒量と管理を心がけ、安全で健康的な生活を送りましょう。


