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航空業界の飲酒運航基準とは?|基準値や検査項目・4つの防止策を解説

近年、国内外で操縦士による飲酒問題が相次いで発覚し、航空安全に対する社会の注目が高まっています。

航空機は数百人の命を預かる交通手段であり、わずかな判断ミスが重大事故につながる可能性があるため、飲酒に関する規制は非常に厳格です。

2018年に相次いだ不祥事を受け、国土交通省は飲酒運航基準の見直しや検査ルールの強化を進めてきました。

現在では乗務前後のアルコール検査の義務化や、基準値の厳格化、不正防止のための第三者立ち会いなどが徹底されています。

そこで本記事では、航空業界における飲酒運航基準の概要や背景、操縦士・客室乗務員・整備士などに適用される飲酒対策や違反時の罰則、さらに航空局による指導体制について詳しく解説します。

Q&A形式で飲酒運航に関するよくある質問について紹介しているので、航空業界の飲酒対策を正しく理解する参考にしてください。

1. 航空業界の飲酒運航基準とは?|概要と背景

国土交通省航空局は、2019年に操縦士に対する飲酒運航基準を「血中アルコール濃度0.2g/l未満、呼気中アルコール濃度0.09mg/l未満」と設定しました。

自動車よりも厳しい数値であり、2018年に相次いだパイロットの飲酒運転が規制強化のきっかけとされています(自動車の飲酒運転基準は0.15mg/l未満)。

また、いくつかの航空会社ではパイロットのアルコールの基準値を0.00mg/lに社内規定として設定しており、アルコールが微量でも検出されれば、運航させない取り組みを行っています。

しかし、現在でも操縦士の飲酒事案が発生しており、航空業界全体で対策強化が求められている状況です。

そこで本章では、航空業界の飲酒運航基準や、規制強化の背景について詳しく解説します。

関連記事:『酒気帯び運転(飲酒運転)とは|基準となる数値や罰則内容をわかりやすく解説

参考:航空従事者の飲酒基準について(PDF)|国土交通省

1-1 飛行機乗務員の飲酒運航基準と運用ルール

航空業界では、操縦士、客室乗務員、整備士、運航管理者といった、幅広い職種がアルコール検査の対象です。

どの職種も、運航の安全を支える重要な役割を担っており、それぞれに求められる検査基準や検査体制には違いがあります。

下の表では、職種ごとの検査項目や飲酒禁止時間、行政対応の違いを整理しました。

どの職種が、どのような基準で管理されているのか、全体像を把握してみてください。

【飛行機乗務員・航空運航従事者における職種ごとのアルコール検査基準・飲酒運航基準】
対象者 検査義務 飲酒禁止時間 行政対応 主なポイント
操縦士(パイロット) 乗務前・乗務後 業務前 8~12時間(航空会社により独自ルールあり) 操縦士への行政処分(戒告/業務停止/免許取消)
企業への行政指導(文書警告、改善勧告、改善命令など)
飛行機従事者の中で最も重い処分を受ける。
行政処分の対象(戒告/業務停止/免許取消)
不合格=即乗務不可
客室乗務員(CA) 業務前 8時間 企業への行政指導(文書警告、改善勧告、改善命令など) 運航に関わるため、操縦士に近い扱いであり、厳格なアルコール検査のルールが実施される。
整備士(整備従事者) 業務前の検査あり/業務後は要件により省略可 明確な統一基準はないが、適正な飲酒が求められる 操縦士ほどの厳格さではないが、規程上の義務はある。
運航管理者(ディスパッチャー) 業務前 明確な統一基準なし 運航計画を扱うため、飲酒は重大リスク。業務後検査は対象外

参考:アルコール検査の対象(PDF)|国土交通省

上記の表の通り、すべての飛行機乗務員や航空運航従事者には、乗務前のアルコール検査が義務付けられており、操縦士と客室乗務員においては、乗務後のアルコール検査も必要です。

基準値超えの場合は即乗務禁止となり、運航スケジュールに大幅な遅れを発生させるため、乗務員一人ひとりが安全運航を徹底する意識を持つことが重要です。

アルコール検査時は、第三者による立ち会いが必須であり、万が一、なりすましなどの不正が発覚した場合は、航空会社に対して行政指導(厳重注意(警告)、改善勧告、改善命令など)が入ります。

個人に対して行政指導や行政処分が行われる可能性は低いですが、航空会社の就業規程により、地上勤務への変更や減給処分などが下される場合があります。

ただし、操縦士が飲酒運航を行った場合、個人に対しても業務停止や免許取り消しなどの行政処分が科される可能性があるため、各航空会社での厳格な飲酒防止対策の実施が必要です。

参考:
航空従事者の飲酒基準について(PDF)|国土交通省
航空機乗組員等のアルコール検査実施要領(PDF)|国土交通省

1-2 飲酒運航基準が制定された背景と現在の課題

飛行機乗務員の飲酒運航基準が強化された背景には、2018年にロンドンで日本人副操縦士が基準値の9倍にあたるアルコール濃度で逮捕された事件が大きく影響しています。

大きな社会問題となりましたが、 その後も、滞在先での飲酒規程違反や乗務前に基準値を超えるケースが発生し、国交省は以下のような方針で対策を進めました。

  • 第三者立ち会いのアルコールチェック義務化
  • 検査結果の記録、保存を徹底
  • アルコール教育や依存症対策の強化
  • 航空会社への監査・改善命令の強化

操縦士は不規則勤務や高ストレスな環境にあることから、アルコールに依存しやすい側面が指摘されています。

すでにアメリカで運用されている依存症治療プログラム(HIMS)の日本版も導入されていますが、2025年時点でも飲酒トラブルが発生しており、課題が残されている状態です。

関連記事:『【注目】相次ぐ飛行機パイロットの飲酒問題を事例を交えて解説|航空業界のアルコールチェック制度

参考:
航空従事者の飲酒基準に関する検討会(PDF)|国土交通省
日本版HIMSガイドライン|公益社団法人 日本航空機操縦士協会

2. 飛行機乗務員に対する4つの飲酒対策

航空業界では、飲酒トラブルの再発防止に向けて、法令に基づき4つの飲酒対策が追加されました。

  • ・アルコール検査の義務化
  • ・アルコールの教育と依存症対策
  • ・アルコール不適切事案の航空局報告義務
  • ・飲酒対策に係る体制の強化

操縦士や客室乗務員だけでなく、整備士や運航管理者も対象となるため、業界全体での取り組みが必要です。

そこで本章では、4つの飲酒対策の内容について詳しく解説します。

2-1 アルコール検査の義務化

2019年4月から、航空法改正により、「操縦士」「客室乗務員」「整備士」「運航管理者」に対して以下のアルコール検査が義務化されました。

【アルコール検査の義務化の内容】

1. 検査の実施と飲酒制限

  • 業務前の検査義務化
    アルコール検知器(ストロー式)による検査を必須とする。
    アルコールが検知された場合は、業務を禁止する。
  • 操縦士および客室乗務員の規制強化
    機体や旅客へ直接関わる業務のため、乗務後の検査も義務化。
    飛行勤務前8時間以内の飲酒を禁止。

2. 不正防止体制の構築:なりすましや検査のすり抜けを防ぐため、体制づくりを義務化

  • 検査時の立ち会い(第三者の立ち会い、またはモニター等の活用)
  • 記録の保存(日時、氏名、検査結果など)

なりすましやすり抜け防止のために、顔認証付き端末やモニターの導入が進んでいます。

関連記事:『【要注意】アルコールチェックのなりすましや改ざんの手口と罰則|事例や企業がとるべき防止対策を紹介

2-2 アルコールの教育と依存症対策

パイロットは不規則勤務や緊張状態が続く環境に置かれるという理由から、アルコールに依存しやすいと言われています。

そのため、航空会社には「経営者含む全関係職員への定期的なアルコール教育(危険性・分解速度等)」と「依存症職員等の早期発見・対応のための体制整備」が義務付けられています。

アルコール依存症は、早い段階で気づくことが大切です。

早期発見により、回復期間も短くなりやすいですが、本人が自覚しにくい病気とされるため、アルコール教育を通じて、全職員への飲酒防止対策への意識向上が求められています。

関連記事:『アルコール依存症の症状とは?依存度のチェック方法や進行ステージ・予防法について解説

2-3 アルコール不適切事案の航空局報告義務

飲酒に関わる不適切事案(アルコール検査で不合格の場合や適切に実施されなかった場合等)については、航空局への報告が義務付けられています。

報告後、航空局による調査・監査が入り、必要に応じて業務改善命令などの行政指導が下されます。

関連記事:『【注目】相次ぐ飛行機パイロットの飲酒問題を事例を交えて解説|航空業界のアルコールチェック制度

2-4 飲酒対策に係る体制の強化

飲酒防止対策は、現場任せの運用ではなく、社内全体で取り組むことが重要です。

そのため国土交通省は、航空会社の安全統括管理者を中心に「飲酒対策の管理体制の整備」を義務付けています。

例えば、「全空港にアルコールチェッカーを配置する」「なりすましやすり抜けを防ぐ仕組みの整備」「職員へのアルコール教育の実施」などがあげられます。

参考:航空従事者の飲酒基準について(PDF)|国土交通省

3. 飛行機の飲酒運航防止に向けた航空局の防止策

飲酒運航の防止には、航空会社だけでなく、航空局による監査や指導も必要です。

特に、操縦士の飲酒問題が相次いだ2018年以降は、航空局による監督が厳格化されています。

そこで本章では、航空局が実施している主な防止策を紹介します。

3-1 国内航空会社への監査・抜き打ちチェック・改善命令

航空局は、日本の航空会社に対して定期的に監査を実施し、抜き打ちを含むアルコール検査の立ち会いや直接のアルコール検査を実施しています。

飲酒に関連する不祥事が発生した場合、改善計画書の提出が義務付けられ、必要に応じて、再発防止の実施状況を確認するための再監査が行われます。

3-2 海外航空会社への周知・国際基準との連携

日本におけるアルコール検査の実施は、海外の航空会社の操縦士も対象です。

数値基準も日本の「呼気中アルコール濃度0.09mg/l以下」が適用され、違反時には罰則も科されます。

航空局職員による立ち会い検査も実施しているため、各航空会社や各国の管轄当局に対し、日本の飲酒運航基準や安全対策を周知し、連携強化を図っています。

3-3 自家用運航者に向けた指導と罰則強化の流れ

航空局の規制対象は、JALやANAなどの大手航空会社だけではありません。

2018年に頻発した飲酒事案を受け、2020年4月13日から国が管理する空港を使う自家用機の操縦士に対し、抜き打ちのアルコール検査を実施し、酒気帯びが検知された場合は、航空使用を禁止する措置を導入しました。

また、飲酒の危険性や健康管理に関する教育、違反取り締まりの仕組みも強化しています。

参考:自家用航空機の操縦士に対する酒気帯びの有無の確認について|国土交通省

4. アルコール検査の対象者とチェック内容

航空業界のアルコール検査は、運航に関わる職種が対象です。

ただし、職種に応じて異なるルールで運用されているため、本章では、アルコール検査の対象者と運用ルールについて詳しく解説します。

4-1 検査対象者(操縦士・客室乗務員・整備士・運航管理者)

アルコール検査の対象となる航空業務の従事者は、以下のとおりです。

  • 操縦士(パイロット)
  • 客室乗務員(CA)
  • 整備士
  • 運航管理者

飛行機に乗る操縦士や客室乗務員だけでなく、整備士や運航管理者もアルコール検査が必要です。

整備士や運航管理者は、機体のメンテナンスや運航判断に直接関わるため、飲酒による判断力低下は重大事故につながる可能性があります。

操縦士や客室乗務員のように、業務後のアルコール検査は必要ありませんが、徹底したアルコール検査の運用が求められています。

4-2 検査方法(ストロー式・顔認証付き検査・記録管理)

アルコール検査の方式には「ストロー式」「マウスピース式」「吹きかけ式」の主に3種類がありますが、国土交通省は検知精度が高い「ストロー式」での検査を義務付けています。

さらに、各航空会社では徹底したアルコール検査を実施するために、顔認証機能付きのアルコールチェッカーや、スマホアプリと連携したクラウド型アルコールチェックシステムの導入を進めています。

顔認証機能付きアルコールチェッカーの導入により、なりすましなどの不正防止が可能です。

さらに、スマホアプリと連携したクラウド型アルコールチェックシステムの導入で、検査記録が管理者に自動で送信・保存されるため、検査漏れを防ぎ、監査にもスムーズに対応できます。

関連記事:『高性能な業務用アルコールチェッカーの種類と選び方|おすすめ検知器も紹介

4-3 第三者立ち会い・記録保存・すり抜け防止の運用ルール

アルコール検査時は、すり抜け防止のために、アルコール検査の運用に関する教育を受けた職員や認定事業場が認めた第三者による立ち会いが必須です。

また、以下の項目の1年間の保存が義務付けられています。

  • 日時
  • 便名(操縦士、客室乗務員のみ)
  • 測定者の氏名
  • 立ち会い者の氏名
  • アルコール検査の数値 など

第三者の立ち会いは、同じ職種同士では不可とされ、遠隔地で第三者の立ち会いが難しい場合は、モニターなどの活用が認められています。

関連記事:『遠隔点呼とは?導入のメリットや制度改正のポイント・要件や申請手順・補助金情報を紹介

参考:飛行機乗組員等のアルコール検査実施要項(PDF)|国土交通省

5. 飛行機の飲酒運航に対する罰則

飲酒運航は、航空安全を脅かす重大な違反行為です。

乗客の安全が脅かされるだけでなく、運搬物資の損失や賠償リスクが考えられます。

さらに、後便の大幅なスケジュール調整が必要になり、数百人〜数千人の移動に遅れが発生し、空港の混乱を招く可能性も考えられるでしょう。

飲酒運航によるリスクは大きいため、飲酒運航を行った場合や、飲酒に関する不適切事案が発生した場合は厳しい罰則の対象です。

そこで本章では、「違反時にどのような罰則が適用されるのか」、飛行機の飲酒運航に関する罰則について詳しく解説します。

5-1 乗務員に科される行政処分(戒告・業務停止・免許取り消し)

操縦士が基準値を超過した場合や、飲酒禁止時間の違反があった場合、以下の行政処分が科されます。

  • 戒告
  • 航空業務停止
  • 免許取り消し

客室乗務員や整備士、運航管理者が上記のような行政処分を受ける可能性は、過去の飲酒事例を振り返っても低いと考えられます。

ただし、所属する航空会社の社内規程に応じて、客室乗務員は地上勤務へ配置転換されたり、整備士や運航管理者も出勤停止や減給処分を受けたりする場合があります。

5-2 刑事罰の可能性

海外では、操縦士が飲酒運航基準を超えた状態で乗務した場合、懲役刑や罰金刑などの刑事罰が科されるケースがあります。

航空業界の飲酒規制強化のきっかけとなった2018年の飲酒事案では、日本航空(JAL)の副操縦士から、ロンドンのヒースロー空港で乗務前に基準値を超えるアルコールが検出されたため、その場で逮捕・拘束され英国内で禁固10か月の実刑判決が下されました。

日本では行政処分が中心ですが、現在も操縦士による飲酒事案が発生していることから、今後、刑事罰の議論が進む可能性があります。

5-3 航空会社側の責任と改善命令

飲酒問題が発生した場合、航空会社も以下のような責任を負います。

  • 国土交通省からの事業改善命令
  • 再発防止計画の提出
  • 再監査

社内で飲酒に関する不適切事案が発覚した場合は、航空会社は速やかに国土交通省に報告する義務があり、事案の重大さに応じて行政指導または行政処分が科されます。

また、信頼回復のために、航空会社の社内規程に応じて、役員報酬の減額や返上なども実施しています。

飲酒問題は大きなリスクが伴うため、未然に飲酒運航を防ぐ意識を持ち、対策を講じることが重要です。

そのため各航空会社では、クラウド型アルコールチェックシステムを導入して現場の業務負担を抑えつつ、不正防止に取り組んだり、アルコール教育を実施しています。

6. 飲酒運航を防ぐための今後の課題と解決策

飲酒運航基準の厳格化やアルコール検査の義務化によって、飲酒防止対策は強化されてきました。

しかし、依然として飲酒に関する不祥事が発生しており、完全な解決には至っていません。

そこで本章では、飲酒に関する不祥事が繰り返される背景を探り、今後の課題と解決策について解説します。

6-1 現状の課題

航空業界では、2025年時点でも飲酒問題が発生しており、原因として以下のような課題が指摘されています。

  • 操縦士や客室乗務員の不規則な勤務時間
  • 操縦士の高ストレスな職場環境
  • アルコール検査のなりすまし、すり抜けのリスク
  • 海外滞在時の飲酒管理が不十分
  • 自主申告に頼る場面が多い など

操縦士の仕事は心身への負担が大きく、激務であることから、アルコール依存症や睡眠障害のリスクが高いことが指摘されています。

飲酒防止対策を現場や個人の意識に依存せず、組織全体でシステムを構築したり、飲酒防止教育を実施することが重要です。

関連記事:『アルコールチェックをごまかす4つの不正行為|7つの防止策やアルコールチェッカーを紹介

6-2 テクノロジー活用による解決策

飲酒問題の再発防止には、デジタル技術を活用したチェック体制が効果的です。

例として、以下のようなデジタル技術が挙げられます。

  • クラウド型アルコールチェックシステム
  • 顔認証、ワンタイムパス認証
  • 検査結果の自動記録と保存
  • AIによる飲酒傾向分析
  • 海外や離島などの遠隔地でのモニターを活用した検査
  • 労務管理システム

近年は、スマホと連携したクラウド型アルコールチェッカーの導入が航空業界で加速しています。

クラウド型アルコールチェッカーの導入により、国内外の空港や宿泊先のホテルが分散しても、スマホと連携しているため、どこからでも測定可能です。

また、検査結果は自動で記録され、クラウド上に送信されたのちに自動で保存されるため、管理者は本社から「誰が・いつ・どこで」検知したのか一覧で確認できるメリットがあります。

また、アメリカで導入されている操縦士向けの「HIMSプログラム」の日本版の導入も進んでいます。

HIMSとは、依存症を持つ操縦士の特定、治療、職場復帰を調整する専門的な職業治療プログラムです。

アメリカでは、HIMSプログラムを経た操縦士の再発率は、一般の依存症回復者よりも大幅に低いとされており、有効性が認められています。

関連記事:『アルコール依存症の症状とは?依存度のチェック方法や進行ステージ・予防法について解説

参考:HIMSプログラムについて(PDF)|日本乗員組合連絡会議

7.【Q&A】航空業界の飲酒運航に関するよくある質問

航空業界の飲酒運航基準は、自動車よりも厳格に設定されています。

また、職種に応じても飲酒運航基準が異なるため、運用方法について疑問がある方も多いでしょう。

そこで本章では、航空業界の飲酒運航に関するよくある質問について、Q&A形式で解説します。

前日にお酒を飲んだ場合は何時間空ければ乗務可能?

操縦士と客室乗務員に対しては、飛行勤務前8時間以内の飲酒が禁止されています。

ただし、アルコールの分解速度には個人差があるため、航空会社によっては12時間前の飲酒を禁止している場合もあります。

参考:航空従事者の飲酒基準について|国土交通省

パイロットとCAでは飲酒運航基準が違う?

どちらも同じ飲酒運航基準が適用されます。

【パイロットとCAの飲酒運航基準】

  • 乗務前後のアルコール検査の実施(呼気中アルコール濃度0.09mg/l未満 )
  • 第三者立ち会い
  • 飛行勤務前の8時間以内の飲酒禁止

操縦士と客室乗務員は、機上で機体や旅客へサービスを行うことから、同じ飲酒運航基準が適用されています。

航空会社によっては、操縦士に携帯用のアルコールチェッカーを貸与し、滞在先のホテルで自主検査を促しています。

航空業界と自動車などによる飲酒運転との主な違いは?

自動車の飲酒運転(酒気帯び運転)に該当する基準値は「呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上」ですが、航空業界では「呼気中アルコール濃度0.09mg/l以上」が処分の対象です。

航空業界における飲酒問題は、多大な影響を及ぼすため、自動車などによる飲酒運転基準よりも厳しく、重い罰則を受けます。

どちらも絶対に避けるべき行為ですが、航空業界は特に厳格なルールが適用されている点が大きな違いと言えるでしょう。

関連記事:『【2025年5月】「アルコールチェック義務化」の概要と運用方法|最新の導入状況や対象者・罰則も解説

8. まとめ|厳格化する飲酒対策で航空の安全性はさらに高まる

本記事では、航空業界における飲酒運航基準の概要や背景、パイロット・客室乗務員・整備士などに適用される飲酒対策や違反時の罰則、航空局の指導体制、今後の課題などについて詳しく解説しました。

パイロットの飲酒問題は過去に大きな社会問題となり、国土交通省は、基準の厳格化や検査体制の強化を進めてきました。

現在では、クラウド型アルコールチェッカーや、アルコール依存防止教育などの導入により、安全管理が徹底されています。

航空業界全体で、飲酒運航防止の動きが加速すれば、利用者も安心して空の旅を楽しめるようになるでしょう。

今後の各航空会社の取り組みや、クラウド型アルコールチェッカーのテクノロジーの向上に注目です。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求している 株式会社パイ・アール は、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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