運送業における「点呼」とは?点呼のやり方・種類・タイミングなど全体像を完全把握

運送事業者には、点呼が義務づけられており、運行管理者(安全運転管理者)やドライバーは、法令に則って点呼を実施する必要があります。
点呼は単なる「出発前後の確認作業」ではなく、ドライバーの健康状態や酒気帯びの有無、車両の状態を把握する重要な安全管理業務です。
しかし依然として、不適切な点呼によるタイヤの脱輪事故や過労運転事故などが発生しており、運送事業者には、法令遵守を徹底した点呼の実施が求められています。
そこで本記事では、点呼を実施する目的や概要、実施のタイミングや法令に則った実施方法、不適切点呼による罰則について詳しく解説します。
点呼業務の全体像を把握したい運行管理者の方や、点呼の見直しを考えている担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次 / この記事でわかること
1. 運送業における点呼とは「安全運行のための法定チェック」のこと
運送業における「点呼」とは、ドライバーや車両の安全性を確保するために、運行管理者が行う「安全運行のための法定チェック」のことです。
点呼は法令に基づき、すべての運送事業者に義務づけられており、ドライバーの健康状態や酒気帯びの有無、車両の状態、運行指示などを確認し、状況に応じてドライバーの交代や安全指導を行う必要があります。
適切に点呼が実施されていない場合、事業者や運行管理者には、行政処分や罰則が科される可能性があります。
では、適切な点呼とは、そもそもどのような状況を指すのでしょうか?
次の章で、点呼の概要や目的、法的根拠を解説し、点呼に関する必要な知識を分かりやすく整理していきましょう。
2. 運送業における「点呼」の概要|定義・目的・法的根拠について
運送業における「点呼」は、事故を未然に防ぐ役割を担っています。
点呼の実施は法令で義務づけられていますが、点呼の重要性を理解しないまま、形式的に済ませているケースも少なくありません。
そこで本章では、運送業における点呼の定義や、実施する目的、貨物自動車運送事業輸送安全規則をはじめとした法的根拠について、詳しく解説します。
2-1 点呼の定義
点呼とは、運送業において「運行の安全を確保(事故防止)」するために、法律で義務付けられた確認作業のことです。
確認する項目は主に、ドライバーの健康状態や酒気帯びの有無、車両の状態、運行指示などです。
点呼は毎日繰り返し行うものであり、おろそかになった場合、重大事故や違反に直結します。
企業の社会的信頼の失墜にもつながるため、法令に則って点呼を実施することが大切です。
2-2 点呼を行う目的
点呼の最大の目的は「運行の安全確保(事故防止)」ですが、ほかにもさまざまな目的や意義があります。
【点呼を行う目的】
- 悪質違反(酒気帯び・危険ドラッグ等)を防ぐ
- 健康起因事故を防ぐ
- 車両故障事故を防ぐ
- 同種の事故を防ぐ(ヒヤリ・ハット)
- 運転者とのコミュニケーションを確保する
点呼が適切に実施されない場合、飲酒運転や疾病による事故、車両故障などのリスクが高まり、各種保険が適用されない可能性も考えられます。
また、ドライバーとの信頼関係が薄れると、「指示に従わない」「業務変更時の報告がない」といったリスクが生じるため、コミュニケーションの確保が必要です。
事故が発生した場合、ドライバーだけでなく企業の責任が問われるため、再監査や信頼の損失など、深刻な影響が及びます。
このような事態を避けるために、運送事業者には適切な点呼の実施が求められています。
2-3 貨物自動車運送事業輸送安全規則などの法的根拠
運送業における点呼の実施は、「貨物自動車運送事業輸送安全規則」や「旅客自動車運送事業輸送安全規則」によって法的に義務づけられています。
【点呼の実施義務に基づく規則】
- 事業者は、点呼を実施させなければならない(貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条)
- 運行管理者は、点呼を実施させなければならない(貨物自動車運送事業輸送安全規則第20条)
- 運転者は、点呼を実施させなければならない(貨物自動車運送事業輸送安全規則第17条)
この法令では、運行管理者が業務前と業務後にドライバーの健康状態を確認し、所定の事項を記録・保存することが求められており、企業は法令に則って点呼を実施しなければなりません。
また、アルコールチェッカーによる酒気帯び確認や、1年間の点呼記録の保存など、具体的なルールも細かく定められています。
3. 【点呼の種類】実施内容とタイミング
点呼は「1日1回実施すれば良い」という形式的なものではなく、「業務前点呼」「業務後点呼」を実施する必要があり、必要に応じて「中間点呼」の実施も求められています。
それぞれ確認する項目やタイミングは異なり、運送業における安全管理体制を確立する上で欠かせない業務です。
そこで本章では、3つの点呼の特徴や実施すべき内容について、具体的に解説します。
3-1 業務「前」点呼
業務前点呼とは、ドライバーがその日の運行業務に入る前に行う最初の点呼です。
業務前点呼で運行管理者が確認すべきポイントは以下のとおりです。
報告を求める項目 | 日常点検の実施内容/酒気帯びの有無/ドライバーの体調(疾病、疲労など) |
---|---|
確認すべき項目 | 日常点検の実施内容/酒気帯びの有無/ドライバーの体調(疾病、疲労など)/必要な携行品の所持(免許証、帳票類など) |
指示すべき項目 | 運行の安全確保に必要な指示(運行経路、運行経路の道路状況、運行時間、運行上の注意、天候など) |
記録すべき項目 | 点呼執行者名/運転者の氏名/運行の業務に係る車両の登録番号/点呼日時/点呼方法(アルコール検知器の使用の有無、対面でない場合は具体的方法)/酒気帯びの有無/ドライバーの体調(疾病、疲労など)/日常点検の状況/指示事項/そのほか必要な事項 |
点呼は、原則として対面で行う必要がありますが、長距離運行などで指定場所での実施が難しい場合は、一部の条件下ではビデオ通話などの「対面と同等の効果を有する方法」での実施が認められています。
近年、運送業界の人手不足の解消や労働環境の改善が求められており、国土交通省では「業務前自動点呼」の導入を見据えて、実証実験を行っています(業務後自動点呼は導入済み)。
自動点呼とは、運行管理者の代わりに、ロボットなどの点呼支援機器が点呼を実施するというものです。
関連記事では、自動点呼の概要やメリット・デメリット、導入時に利用できる補助金などについて詳しく紹介しているので、あわせて参考にしてください。
3-2 業務「後」点呼
業務後点呼とは、運行終了後にドライバーの体調や運行中の異常の有無を確認するための点呼です。
業務後点呼で運行管理者が確認すべきポイントは以下のとおりです。
報告を求める項目 | 事業用自動車、道路及び運行状況/事業用自動車の状況/事故又は異常の有無/運行した経路の道路、交通、天候の状況/業務記録、チャート紙、携行品等の提出/交替ドライバーに対する通告 |
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確認すべき項目 | 酒気帯びの有無 |
指示すべき項目 | ドライバーの運行状況(業務記録、チャート紙)に対する指導/次回の運行予定 |
記録すべき項目 | 点呼執行者名/運転者の氏名/運行の業務に係る車両の登録番号/点呼日時/点呼方法(アルコール検知器の使用の有無、対面でない場合は具体的方法)/自動車、運行した経路、交通の状況/酒気帯びの有無/交替ドライバーに対する通告/そのほか必要な事項 |
業務後点呼では、酒気帯びの有無や体調、交通事故やトラブルの有無、車両の異常などを確認することで、次回の運行業務の安全を確保できます。
業務前点呼に比べて軽視されがちですが、運行中のトラブルや懸念点を共有することで、再発防止に向けた対策を早期に行えるメリットがあります。
3-3 中間点呼
中間点呼は、トラック事業者を対象とした、業務前点呼・業務後点呼のいずれも対面で行わない場合に実施される点呼です。
主に、2泊3日以上の長距離運行など、業務前後の点呼を対面で実施できない場合に必要とされます。
中間点呼で運行管理者が確認すべきポイントは以下のとおりです。
報告を求める項目 | 酒気帯びの有無/ドライバーの体調(疾病、疲労など) |
---|---|
確認すべき項目 | 酒気帯びの有無/ドライバーの体調(疾病、疲労など) |
指示すべき項目 | 運行の安全確保に必要な指示(運行経路、運行経路の道路状況、運行時間、運行上の注意、天候など) |
記録すべき項目 | 点呼執行者名/運転者の氏名/運行の業務に係る車両の登録番号/点呼日時/点呼方法(アルコール検知器の使用の有無、対面でない場合は具体的方法)/酒気帯びの有無/ドライバーの体調(疾病、疲労など)/そのほか必要な事項 |
中間点呼は、主に途中の営業所や休憩地点などで実施し、ドライバーの疲労状況や健康状態、交通状況の変化などの確認を行います。
2泊3日の運行であれば、2日目の業務中に電話などで点呼を実施する必要があります。
4. 【点呼のやり方】IT点呼・電話点呼・遠隔点呼など
点呼は、原則として対面で行う必要がありますが、運送業界の人手不足や、労働環境の改善に伴い、IT技術を活用した点呼方法も認められています。
それぞれ実施方法が定められているため、導入を考えている企業は、事前に実施方法や実施条件を把握することが重要です。
そこで本章では、各点呼方法の実施方法や条件について解説します。
4-1 対面点呼|対面で行う点呼
対面点呼とは、ドライバーが所属する営業所や車庫などで、ドライバーと運行管理者が直接対面して行う点呼方法です。
原則として、運行上やむを得ない状況以外は、業務前後に必ず実施しなければなりません。
基本的な点呼方法であり、ドライバーの声色や挙動、匂いなどから体調を確認します。
対面でのやり取りにより、ドライバーの体調や様子を正確に把握できるため、事故防止やコンプライアンス強化にもつながります。
4-2 電話点呼|認められるケースについて
電話点呼とは、1泊2日以上の長距離運行など、対面での点呼が難しい場合に認められている点呼方法です。
携帯電話や業務用無線など、ドライバーと直接対話できる方法で行う必要があり、メールやFAXなどの連絡方法は認められていません。
なお、「営業所と車庫が離れている」「点呼執行者(運行管理者や運行管理補助者)が出勤していない」という場合での電話点呼も認められないため注意しましょう。
4-3 遠隔点呼・IT点呼|導入の条件やメリット
遠隔点呼とは、運行管理者がカメラや通信機器を使い、遠隔地にいるドライバーとリアルタイムで行う点呼のことです。
一方、IT点呼とは、国が定めたIT機器を活用して、運行管理者が遠隔地にいるドライバーとリアルタイムで行う点呼のことです。
どちらも点呼内容が類似していますが、導入条件が異なります。
遠隔点呼 | ・「機器・システムの要件」「施設・環境要件」「運用上の遵守要件」を満たす必要がある。 ・要件を満たせばGマークの取得は不要。 |
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IT点呼 | ・Gマークの取得が必須 ・国が定めたIT機器での実施が必須(アルコールチェッカーやパソコンなどの機器やシステムを通じて行う) |
遠隔点呼やIT点呼は、人手不足や深夜対応、拠点間の連携強化に効果的です。
対面と同等の安全確認ができる上、点呼記録の自動保存が可能なため、業務効率の向上にもつながり、コスト削減や法令順守の徹底に役立ちます。
従来はIT点呼が主流でしたが、制度の拡大後、「同一会社の別拠点」で行う遠隔点呼や、「異なる会社同士」で行う事業者間遠隔点呼が実施可能になり、選択肢が広がりました。
なお、事業者間遠隔点呼やIT点呼も広い意味では遠隔点呼に含まれますが、一般的に遠隔点呼と言う場合は、「同一会社の別拠点での運用」を指します。
一方、「異なる会社同士」で行う事業者間遠隔点呼は、2023年から先行実施が開始され、2025年中に本格運用が予定されています。
遠隔点呼および事業者間遠隔点呼を開始する場合、運輸局への届出が必要です。
以下の関連記事では、届出の手順や開始条件、開始時に活用できる補助金などについて詳しく紹介しているので、あわせて参考にしてください。
関連記事:
『遠隔点呼とは?導入のメリットや制度改定のポイント・要件や申請手順・補助金情報を紹介』
『IT点呼とは?|条件や導入・運用方法、役立つ補助金制度を紹介』
4-4 自動点呼|業務「後」点呼のみ
自動点呼とは、対面で行っている点呼を、国土交通省が認めた点呼支援機器(AIやロボット)を活用して行う点呼方法です。
自動点呼は「業務後」のみ実施可能であり、現時点で「業務前」の自動点呼の実施は認められていません。
ただし、業務前自動点呼は現在実証実験中であり、近い将来、本格導入される見込みです。
5. 点呼未実施や不適切点呼のリスクと罰則・行政処分について
運送業における点呼とは、法令で定められた重要な安全管理業務のひとつです。
義務化の項目であり、適切に実施しなかった場合、罰則や行政処分の対象となる可能性があります。
そこで本章では、不適切な点呼が発覚した場合の罰則や、企業への影響について解説します。
5-1 点呼未実施・不適切点呼の罰則
そもそも「点呼未実施」とは、点呼そのものが全く行われていない状態などを指し、「不適切点呼」とは、点呼は行ったが法令で定められている基準を満たさない状態を指します。
点呼の実施違反と認められた場合、点呼が必要な回数100回に対して、以下のような罰則(行政処分)が科される可能性があります。
違反名 | 罰則内容 |
---|---|
点呼未実施(19件以下) | ・初違反で警告 ・再違反で10日車 |
点呼未実施(20件以上49件以下) | ・初違反で10日車 ・再違反で20日車 |
点呼未実施(50件以上) | ・初違反で20日車 ・再違反で40日車 |
一部実施不適切 | ・初違反で警告 ・再違反で10日車 |
すべて実施不適切 | ・初違反で10日車 ・再違反で20日車 |
「日車」とは、車両の使用停止期間のことです。
再犯やそのほか悪質な違反がある場合は、事業許可の取り消しや運行管理者資格の剥奪などの処分が科せられる可能性もあります。
以下の関連記事では、不適切点呼について、より詳しい罰則内容や違反事例を紹介しています。
不適切点呼の防止策や、法令遵守を徹底した点呼の仕組み作りについても解説していますので、社内での体制作りの参考にしてください。
5-2 記録違反があった場合の罰則
運送事業者には、点呼の実施だけでなく、点呼記録の保存も義務付けられています。
以下のような行為が発覚した場合、車両の使用停止などの行政処分が科される可能性があります。
違反名 | 罰則内容 |
---|---|
一部記録なし | ・初違反で警告 ・再違反で10日車 |
すべて記録なし | ・初違反で30日車 ・再違反で60日車 |
記載事項等の不備 | ・初違反で警告 ・再違反で10日車 |
記録の改ざん・不実記載 | ・初違反で30日車 ・再違反で60日車 |
一部保存なし | ・初違反で警告 ・再違反で10日車 |
全て保存なし | ・初違反で10日車 ・再違反で20日車 |
違反内容によって罰則の重さは異なりますが、悪質な場合は、点呼未実施よりも重い罰則が科される可能性があります。
5-3 アルコールチェッカー(検知器)の未設置
2011年5月1日より、運送事業者には、点呼時にアルコールチェッカーを用いてドライバーの酒気帯びの有無を確認することが義務化されています。
「アルコールチェッカーを設置していない」「適切に使用していない」などの場合は、設置違反として以下のような罰則が科される可能性があります。
違反名 | 罰則内容 |
---|---|
アルコールチェッカー(検知器)の備えなし | ・初違反で60日車 ・再違反で120日車 |
アルコールチェッカー(検知器)の常時有効保持違反 | ・初違反で20日車 ・再違反で40日車 |
使用するアルコールチェッカーは、ドライバーが所属する営業所のものに限られています。
ほかの事業者や営業所のアルコールチェッカーを使用した場合、「備えなし」に該当するため、必ず営業所ごとに設置しましょう。
5-4 【リスク】企業のイメージや信頼への悪影響
点呼の未実施や不適切な対応は、法令違反としての処分だけでなく、取引先や地域社会からの信頼喪失にもつながります。
過去には、ずさんな点呼により、首都高速道路を走行中のトラックが渋滞の列に突っ込み、3人が死亡、3人が重軽傷を負うという重大な事故が発生しています。
事故を起こした運送会社では、業務前後の点呼が行われておらず、事故当日はドライバーには38度の発熱があり、社長に体調不良を訴えていました。
事故後、ドライバーは過失運転致死罪で起訴され、運送会社社長は、業務上過失致死傷容疑で書類送検されています。
事件発生当時は、SNSやニュース番組で大きく報じられ、社会的問題となりました。
不適切点呼による重大な事故が発生した場合、企業の社会的信頼が失われるだけでなく、営業活動や採用活動にも悪影響を及ぼします。
従業員のモチベーション低下や離職につながるケースも考えられるため、法令順守はもちろん、企業としての社会的責任も常に意識して業務にあたることが大切です。
6. 【Q&A】運送業における点呼についてよくある質問
点呼は運送業の安全運行を支える重要な業務ですが、詳しい実施内容について疑問を抱く方も少なくありません。
特に人手不足や労働環境の改善が求められている運送業界においては、今後、法改正によりルールが変わる可能性もあります。
そこで本章では、運送業における点呼に関してよく寄せられる質問をQ&A形式で分かりやすく解説します。
アルコールチェッカー(検知器)を使用するのは義務?
点呼におけるアルコールチェッカー(検知器)の使用は、業務用ナンバーである「緑・黒ナンバー」事業者に加え、「一部の白ナンバー」事業者にも義務づけられています。
白ナンバー事業者でアルコールチェッカーによる酒気帯び確認が義務化されているのは、以下のいずれかに該当する事業所です。
【アルコールチェッカー(検知器)の使用が必要な白ナンバー事業者】
- 定員11人以上の車両を1台以上保有している
- 車両を5台以上保有している
※自動二輪(原動機付自転車を除く)は1台を0.5台として計算
運送事業者におけるアルコールチェックは段階的に強化されており、2025年時点で、アルコールチェックが義務付けられている事業者は、アルコールチェッカー(検知器)による酒気帯び確認が必要です。
以下の関連記事では、アルコールチェック義務化の概要や対象企業、おすすめのアルコールチェッカーや企業が対応すべき項目などについて詳しく紹介しています。適切な点呼の実施や、アルコールチェッカー選びの参考にしてください。
点呼は誰が行う?資格が必要?
運送業における点呼では、国家資格である運行管理者によって点呼を実施する必要があります。
運行管理者が不在の場合、運行管理補助者による点呼の実施が可能です。
運行管理補助者が行う業務は限定的ですが、点呼に関しては、運行管理補助者が単独で実施することが可能です。
運行管理補助者の業務範囲や選任方法については、関連記事で詳しく紹介しているので、あわせて参考にしてください。
関連記事:
『運行管理者とは|仕事内容や必要な資格・安全運転管理者との違いを解説』
『運行管理補助者とは?選任方法や業務範囲・権限について解説』
点呼記録の保存期間と管理方法は?
点呼記録は、法令により「1年間の保存」が義務づけられています。
記録内容には、点呼日時、運転者の氏名、アルコールチェック結果、健康状態、確認者の氏名などが含まれます。
管理方法は、紙媒体でも電子データでも構いませんが、改ざん防止やデータのバックアップが簡単なクラウド型システムがおすすめです。
2024年以降、アルコールチェックをより確実に行うために、映像を活用した確認方法が普及しつつあります。
これに伴い、点呼記録とともに写真や映像データを保存する運用が推奨されるケースも増えていますが、保存方法や保存期間については、法令に基づく要件を踏まえつつ、予算や職場環境に適した管理体制を整えましょう。
バイクや自転車でも点呼を行うの?
事業用としてバイクを使用する場合、自動二輪(原動機付自転車を除く)の保有台数が、10台以上の事業者は点呼の対象となります(自動二輪は0.5台として換算)。
一方、自転車については点呼義務の対象外ですが、安全運行の観点から自主的に健康確認やアルコールチェックを行う事業者もいます。
とくに業務で頻繁に公道を走行する場合、万一の事故に備えて企業としての管理体制を整備しておくことが重要です。
運行管理者は点呼を何割しなければならない?
運行管理者による点呼は、総回数のうち1/3以上を運行管理者が行う必要があります。
【貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条(途中省略)】
補助者を選任し、点呼の一部を行わせる場合であっても、当該営業所において選任されている運行管理者が行う点呼は、点呼を行うべき総回数の少なくとも3分の1以上でなければならない。
運行管理補助者に、すべての点呼を任せるのは認められないため、点呼の執行比率が偏らないように注意しましょう。
運行管理補助者は点呼を何割まで対応可能?
運行管理補助者が実施できる点呼の回数は、月の総点呼回数の2/3未満に制限されています。
超過しないように運行管理者と調整しながら点呼の実施を行いましょう。
7. まとめ|正しく点呼を行い安全運行の最善を尽くそう
本記事では、点呼の概要や種類、適切な実施方法や不適切点呼による罰則について詳しく解説しました。
運送業における点呼は、従業員や車両の安全を確保するための重要な業務です。
点呼の実施を形式的に終わらせず、正しく丁寧に行うことが事故防止やコンプライアンス強化につながります。
運行管理者とドライバーが一丸となって、確実な点呼を実施し、安全な運送業務の実現を目指しましょう。