ながらスマホの罰則・罰金は?違反点数や厳罰化の背景・自転車の罰則内容も解説

スマートフォンの普及に伴い、「ながらスマホ」による交通事故が増加しています。
死亡事故も発生しており、運転中のスマホ操作は大変危険です。
時代に合わせて道路交通法も改正され、違反すると反則金や違反点数が加算されます。さらに、悪質なケースでは懲役刑が科されることもあります。
また、自動車だけでなく、自転車や電動キックボードなどの電動モビリティにも適用される罰則があり、安全運転のための厳しい規制が設けられています。
本記事では、自動車・自転車・電動モビリティなどにおける、ながらスマホの罰則内容や規制強化の背景について解説します。
ながらスマホの危険性を正しく理解し、事故を防ぐために安全運転を徹底しましょう。
目次 / このページでわかること
1.ながら運転(ながらスマホ)の概要
ながら運転とは、運転中にスマートフォンやカーナビ、テレビなどに気を取られ、安全運転に必要な注意を怠る行為を指します。
重大事故の原因となるため社会問題として注目され、近年は、ながら運転に対する罰則が厳しくなっています。
本章では、ながら運転に対する法律や、ながらスマホに該当する行為について詳しく解説します。
ながら運転は法律で禁止されている
「ながら運転」は、2019年12月から道路交通法によって明確に禁止されています。
【道路交通法第71条(運転者の遵守事項)5の5】
自動車、原動機付自転車または自転車を運転する場合においては、当該自動車などが停止している時を除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置、その他の無線通話装置を通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ、もしくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。
「少しなら大丈夫」「運転に支障はない」と過信すると、運転中の一瞬の判断を誤り、重大な事故につながります。
実際、スマホを見ている間に前方の状況が変わり、ブレーキが間に合わないケースも少なくありません。
時速60kmで走行すると、車両はわずか1秒間で約17m進みます。障害物を認識して急ブレーキをかけた場合、車両が完全停止するまでの停止距離は約33mです。
ブレーキをかけた地点で車両は止まらないため、スマホ操作をしている間に歩行者が道路を横断したり、前方が渋滞していたりすると、事故を引き起こす可能性があります。
ながらスマホは、自分だけでなく、周囲の人の命も危険にさらす行為です。運転中はスマホを操作せず、安全運転を徹底しましょう。
関連記事:『制動距離と空走距離の違いは?停止距離にどう影響するのか解説』
参考:
・道路交通法第71条(運転者の遵守事項)|e-Gov法令検索
・3秒間の車間距離|大分県警察公式チャンネル(YouTube)
ながら運転に該当する行為
ながら運転に該当する行為は、以下のとおりです。
- 運転しながらスマートフォン(携帯電話)を持って通話する(通話)
- 運転しながらスマートフォン(携帯電話、タブレット)の画面を注視する(画面注視)
- 運転しながらカーナビの画面を注視する(画面注視)
ハンズフリーでの通話は、道路交通法で禁止されていませんが、都道府県の条例によっては、違反になる可能性があります。
また、運転中の食事やメイクも法律で明確に禁止されているわけではありませんが、道路交通法第70条には「安全運転の義務」により、他人に危害を及ぼさない運転が求められています。
ハンズフリーでの通話、食事やメイクは注意力を低下させる恐れがあるため、事故を防ぐためにも運転中は控え、安全運転を徹底しましょう。
参考:
・やめよう!運転中の「ながらスマホ」違反すると一発免停も!|政府オンライン
・道路交通法第70条(安全運転の義務)|e-Gov法令検索
2.ながらスマホ厳罰化の背景
ながらスマホは2019年12月から厳罰化され、従来の反則金や違反点数の引き上げに加え、悪質なものに関しては、運転免許の停止や取消、罰金刑や懲役刑が科される場合があります。
こうした厳罰化の背景には、ながらスマホによる交通事故の増加や、社会的な問題意識の高まりがあります。
通話使用目的 | 画像使用目的 | 注視中 | 総件数 | |
---|---|---|---|---|
2015 | 175 | 846 | 1,522 | 2,537 |
2016 | 159 | 927 | 1,542 | 2,605 |
2017 | 137 | 1,012 | 1,704 | 2,832 |
2018 | 144 | 966 | 1,698 | 2,790 |
2019 | 133 | 932 | 1,602 | 2,645 |
ながらスマホによる交通事故は、毎年2,500件以上発生しており、死傷事故も発生しています。
厳罰化以降は取り締まりも強化されたため、ながら運転による毎年の交通事故は1,500件以下まで減少しました。
通話使用目的(携帯電話等) | 画像使用目的(携帯電話等) | 注視中(カーナビ等) | 総件数 | |
---|---|---|---|---|
2020 | 98 | 520 | 677 | 1,283 |
2021 | 102 | 651 | 666 | 1,394 |
2022 | 83 | 700 | 666 | 1,424 |
2023 | 85 | 831 | 614 | 1,490 |
しかし、事故件数が大幅に減少したものの、2024年中の携帯電話等使用による死亡事故は25件、重傷事故は97件発生しており、2007年以降で最多となっています。
さらに、ながらスマホによる死亡事故の発生率は、一般的な交通事故と比較すると約4倍高いとされ、単なる接触事故では済まないケースも少なくありません。
また、2024年11月には、自転車でのながらスマホも厳罰化され、画面注視はもちろん、自転車に取り付けたスマホの画面を注視することも禁止されました。
ながらスマホは重大事故につながりやすいことを自覚し、私たち一人ひとりが安全運転を心がけることが大切です。
参考:
・死亡率約4倍「ながら運転」による死亡重傷事故が過去最悪の122件|TBS NEWS DIG Powered by JNN(YouTube)
・やめよう!運転中の「ながらスマホ」違反すると一発免停も!|政府オンライン
3.ながらスマホの罰則・罰金は2種類
ながらスマホに関する罰則は、大きく分けて「携帯電話使用等(保持)」と「携帯電話使用等(交通の危険)」の2種類があります。
厳罰化以降は罰則が強化されているため、本章ではそれぞれの罰則内容について詳しく解説します。
携帯電話使用等(保持)の罰則・罰金
運転中にスマートフォンを保持して、通話や画面注視した場合、「携帯電話使用等(保持)」違反の対象になります。
罰則内容は以下のとおりです。
行政処分 | 違反点数 | 3点 |
---|---|---|
反則金 | 原付 12,000円 | |
二輪車 15,000円 | ||
普通車 18,000円 | ||
大型車 25,000円 | ||
刑事処分 | 罰則 | 6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金 |
反則金は改正前の2倍以上になり、罰則も以前は「5万円以下の罰金」のみでしたが、改正後は10万円に増え、懲役刑も追加されています。
違反した場合、交通反則通告制度(通称:青切符)により、反則金と違反点数のみで処理されますが、従わない場合は刑事処分が科されます。
携帯電話使用等(交通の危険)の罰則・罰金
ながらスマホによる事故を起こすなど、交通の危険を生じさせた場合、「携帯電話使用等(交通の危険)」違反の対象になります。
罰則内容は以下のとおりです。
行政処分 | 違反点数 | 6点(免許停止処分の対象) | |
---|---|---|---|
反則金 | 原付 | 適用なし (交通反則通告制度の対象外となり、すべて刑事処分の対象になる) |
|
二輪車 | |||
普通車 | |||
大型車 | |||
刑事処分 | 罰則 | 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
「携帯電話使用等(交通の危険)」には、交通反則通告制度(通称:青切符)が適用されず、違反切符(通称:赤切符)が切られるため、有罪判決を受けた場合、前科がつきます。
ながらスマホは、一瞬の不注意が命取りになるため、運転中は絶対にスマートフォンを操作しないようにしましょう。
参考:
・運転中のスマホ使用に対する罰則強化|警察庁
・やめよう!運転中の「ながらスマホ」違反すると一発免停も!|政府オンライン
4.自転車のながらスマホも罰則強化
ながらスマホの危険性は自動車だけでなく、自転車にも当てはまります。
特に近年は自転車による、ながらスマホが原因で、歩行者や車両との交通事故が問題視されています。
このような背景から、自転車のながらスマホも罰則強化され、違反者には厳しい措置が科されるようになりました。
そこで本章では、自転車のながらスマホに関する厳罰化の背景や、罰則内容について解説します。
自転車厳罰化の背景
自転車は手軽な移動手段として多くの人に利用されていますが、ここ数年、自転車のながらスマホや酒気帯び運転による交通事故が増加しています。
この状況を受けて、2024年11月から「ながら運転」の罰則強化と、「酒気帯び運転」の罰則が追加されました。
警察庁の統計では、2023年中の全交通事故のうち、自転車事故の割合は2割を占め、自転車側に交通違反があるケースが多いとされています。
自転車は免許不要で運転できるため、交通ルールや法律の知識が不十分なまま利用する人も多いです。
そのため、警察や学校などでは、交通安全教室などの啓発活動が行われています。
自転車のながらスマホの罰則・罰金内容
自転車の運転中は、停止している場合を除き、スマートフォンでの通話や画面の注視を伴う「ながらスマホ」は禁止されています。
また、自転車に取り付けたスマホの画面を注視することも禁止されています。違反した場合の罰則内容は以下のとおりです。
運転中にながらスマホをした場合 | 6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金 |
---|---|
運転中のながらスマホにより交通事故などの交通の危険を生じさせた場合 | 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
これまで、自転車の危険行為に対する取り締まりは、「自転車指導警告カード(通称:黄色切符)」と、罰金が発生する「違反切符(通称:赤切符)」の2種類のみでした。
その後の厳罰化により、罰金額が増え、懲役刑も追加されています。
さらに、2026年5月まで(2024年5月の公布から2年以内)には、16歳以上を対象に「交通反則通告制度(通称:青切符)」による取り締まりが導入される予定です。
この制度が適用されると、自転車のながらスマホをした場合、12,000円の反則金が科されます。
参考:
・2024年11月自転車の「ながらスマホ」が罰則強化!「酒気帯び運転」は新たに罰則対象に!|政府広報オンライン
・自転車の違反運転に新たな反則金 スマホ使用運転は1万2千円「青切符」交付へ法改正|FNNプライムオンライン
自転車における危険行為
現在、自転車における危険行為は16種類に増えています。
【自転車における16種類の危険行為】
- 1.信号無視
- 2.通行禁止違反
- 3.歩行者用道路徐行違反
- 4.通行区分違反
- 5.路側帯進行方法違反
- 6.遮断踏切立入り
- 7.優先道路通行車妨害等
- 8.交差点優先車妨害
- 9.環状交差点通行車妨害等
- 10.指定場所一時不停止等
- 11.歩道通行時の通行方法違反
- 12.制動装置(ブレーキ)不良自転車運転
- 13.酒気帯び運転等
- 14.安全運転義務違反
- 15.携帯電話使用等
- 16.妨害運転
上記の危険行為で取り締まりを受けた場合、2025年2月時点では、「自転車指導警告カード(通称:黄色切符)」もしくは、「違反切符(通称:赤切符)」のどちらかが適用されます。
また、「自転車指導警告カード(通称:黄色切符)」は、2回目以降は「違反切符(通称:赤切符)」が切られる可能性があります。
「違反切符(通称:赤切符)」は、罰金を払っておしまいではなく、刑事上の責任が問われるため、有罪判決になった場合、前科がつきます。
違反常習者は自転車運転者講習の対象に
先述の危険行為16種類を3年以内に2回以上繰り返した14歳以上の者には、自転車運転者講習の受講が命じられます。
「自転車運転者講習受講命令書」が交付されてから3ヶ月以内に受講する必要があり、命令に従わない場合は、5万円以下の罰金が科されます。
受講時間は3時間で、受講手数料は6,000円です。
自転車は手軽な乗り物ですが、交通ルールを守らなければ法律による厳しい措置が待っています。
自転車の危険行為を軽視せずに、安全運転を徹底しましょう。
5.電動モビリティも規制強化の対象に
「原動機付自転車」に該当するモペットや、「特定小型原動機付自転車」に該当する電動キックボード(条件によっては「原動機付自転車」に分類されるものもある)は、ながらスマホが禁止されています。
取り締まりを受けた場合、12,000円の反則金が科され、悪質なケースでは、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科される可能性があります。
近年、電動モビリティ利用者の交通マナーの悪さが問題視されており、ニュースでも報道されるようになりました。
モペットや電動キックボードは手軽に乗れる車両ですが、道路交通法上は自転車とは異なる扱いを受けます。違反すれば厳しい罰則が科されるため、十分に交通ルールを理解したうえで運転する必要があります。
以下の関連記事では、モペットと電動キックボードに関する罰則強化の詳しい内容を紹介しています。購入を検討している方や旅先での利用を計画している方は、ぜひ参考にしてください。
関連記事:
『モペットは自転車ではない|取り締まり強化の背景と罰則・罰金について解説』
『飲酒した状態で電動キックボードに乗るのは交通違反|罰則や事故の事例を紹介』
6.まとめ|定期的に交通ルールを確認し安全運転を心がけよう
本記事では、ながらスマホの罰則や厳罰化の背景、自転車や電動モビリティにおける規制強化について解説しました。
ながらスマホは自動車や自転車を問わず、重大な事故を引き起こす危険な行為です。場合によっては、罰金や懲役が科され、前科がつく可能性もあります。
事故を防ぐためには、定期的に交通ルールを確認し、自らの運転を見直すことが重要です。ながらスマホは一瞬の不注意が命取りになります。
運転中はスマホの使用を控え、周囲の安全を最優先にしましょう。ルールを守り、安全運転を徹底することが、自分や大切な人の命を守ることにつながります。