アルコール依存症の症状とは？依存度のチェック方法や進行ステージ・予防法について解説

依存症との境界線

「依存症との境界線」は、依存が始まる前段階を示します。

飲酒習慣がある人の場合、アルコール耐性がつく場合があり、以前と同じ量では、実際に酔っていても酔いを感じにくくなることがあります。

そのため、少しずつ飲酒量が増え、二日酔いや悪酔いが増える傾向があるとされます。

以下の特徴がある場合、「依存症との境界線」のステージに入っている可能性があるため、禁酒、または飲酒量を減らすことが必要と言われています。

• 二日酔い、悪酔いすることが増えた
• 健康診断が再検査になった
• 飲み始めると止まらない
• 休肝日を作れない
• 飲酒中の記憶がない、など

また、飲酒中の記憶が消失することを「ブラックアウト」と言います。

頻発する場合は、アルコール依存症の手前と言われることもあり、禁酒や大幅な減酒が必要と考えられています。

関連記事：『禁酒の効果とは？成功させるコツや禁酒が難しい人におすすめの減酒方法を紹介』

依存症初期

アルコール依存症の初期段階に入ると、ブラックアウトが頻発し、健康診断では肝機能や血圧に異常がみられやすいと言われています。

自分では飲酒のコントロールができず、仕事中や家庭内でも、飲酒のことで頭がいっぱいになり、他のことに関心が行かなくなります。

正常な判断が難しくなるため、飲酒運転による事故を引き起こすなど、深刻な事態を招く危険性が高まります。

早期発見・早期治療で、アルコール依存症の進行を防げると考えられているため、「最近、飲酒のコントロールができない」と感じたら、早めに医療機関を受診し、医師の指導のもと、禁酒や減酒に取り組みましょう。

関連記事：『飲酒運転の概要と現状について｜罰則と行政処分・防止するためにできること』

依存症中期

アルコール依存症の中期に入ると、精神依存に加え、身体的な異常が表れると言われています。

とくに、体からアルコールが抜けると、以下のような禁断症状が表れます。

• 発汗
• 手の震え
• イライラ
• 焦燥感、不安感、など

禁断症状は、お酒を飲むと一時的におさまりますが、体からアルコールが抜けると再び発症します。

そのため、「禁断症状を抑えるために飲む」という悪循環にはまりやすい傾向があると言われています。

中期の段階では、すでに飲酒のコントロール機能が失われていると考えられているため、毎日の大量飲酒が常態化し、遅刻、病欠、集中力の低下、適応力の低下が目立つようになると言われています。

また、仕事で車を運転する必要がある方の場合、飲酒運転の危険性が高まり、最悪の場合、職を失う可能性も考えられます。

「お酒を飲みたくて嘘をつくようになった」「二日酔いを和らげるために、迎え酒をするようになった」という場合は、すぐに医療機関を受診し、医師や専門家の指導を仰ぎましょう。

また、中期まで進行した場合、本人が医療機関への受診を拒むケースが多いと言われています。

タイミングをみて本人に治療をすすめたり、アルコール依存症経験者や家族による自助グループ、断酒会などに参加するのもひとつの方法とされているため、状況に応じて選択してみましょう。

依存症後期

アルコール依存症の後期に入ると、異常な飲酒行動により、生活が困難になります。

配偶者、および子どもへの虐待、子ども養育の放棄、親権の喪失、離婚など、家庭が破綻するケースが多いとされています。

また、食事よりも飲酒を優先させて栄養不足に陥り、精神的にも身体的にも危険な状態に陥ります。

後期の段階では、内臓疾患が顕著になるとされ、以下のような病気を発症しやすいと言われています。

• 脂肪肝
• アルコール性肝炎
• 肝硬変
• 脳の萎縮
• 脳の認知機能低下による認知症
• 生活習慣病（心臓病、糖尿病、がんなど）

身体的に命の危機に瀕しているため、すぐさま治療や支援を受ける必要があるとされています。

肝硬変まで進行すると、もとの肝臓の状態に戻らないと言われているため、肝機能の診察と並行して、精神科や心療内科などの専門機関で依存症の治療を受けることが重要です。

参考：アルコール依存症の進行プロセス｜非営利活動法人ASK

スクリーニングテスト「AUDIT」

この1年間のお酒の飲み方を振り返りましょう。10個の質問に可能な限り正確に答えてください。答えの合計点数により依存度が判定されます。

※回答した点数をスマホや紙にメモをとりながら、チェックしましょう。

【ドリンクの目安】

■ビール（アルコール度数5%）

• 中瓶1本（500ml）：〜2ドリンク
• 中瓶2本（1,000ml）：3〜4ドリンク
• 中瓶3本（1,500ml）：5〜6ドリンク
• 中瓶4本（2,000ml）：7〜9ドリンク

■缶酎ハイ（アルコール度数7%）

• 350ml缶1本（350ml）：〜2ドリンク
• 350ml缶2本（700ml）：3〜4ドリンク
• 500ml缶1本（500ml）：5〜6ドリンク
• 500ml缶2本（1,000ml）：7〜9ドリンク

■日本酒（アルコール度数15%）

• 0.8合（約160ml）：〜2ドリンク
• 1.6合（約320ml）：3〜4ドリンク
• 2.4合（約480ml）：5〜6ドリンク
• 4合（約720ml）：7〜9ドリンク

■焼酎（アルコール度数25%）

• 水割り/湯割り1杯（100ml）：〜2ドリンク
• 水割り/湯割り1杯（200ml）：3〜4ドリンク
• 水割り/湯割り1杯（300ml）：5〜6ドリンク
• 水割り/湯割り1杯（400ml）：7〜9ドリンク

お疲れさまでした。回答の合計点数によって依存度が判定されます。依存度の各レベルは以下のとおりです。

上記の依存度の各レベルは、保健所などの特定保健指導で採用されているレベル分けです。幅広く網をかけて指導することを目的としているため、点数の幅がせまくなっています。

専門医療につなげる人を絞り込みたい場合や、依存症の特定をより厳密にする場合を想定したレベル分けとアドバイスは以下のとおりです。

アルコール依存症は、本人が気付かないうちに進行する病気と言われています。定期的に飲み方をチェックして、心身の健康を守りましょう。

参考：WHOのスクリーニングテスト「AUDIT」｜非営利活動法人ASK / AUDITアルコール使用障害特定テスト使用マニュアル｜WHO

① お酒の飲み方が危険であることを自覚してもらう

アルコール依存症の人は、自分の飲酒習慣に問題があると気付いていないケースが多いです。

本人に自覚がある場合でも、積極的に治療を始めるケースは少ないと言われています。

このような状況下では、いきなり断酒や治療をすすめるのではなく、チェックシートなどで本人に飲み方の危険性を自覚してもらうことが有効とされています。

決して非難せず、冷静に状況を伝えるように心がけましょう。

また、医療機関への受診を嫌がる場合は、保健所や自助グループ、断酒会への参加を促し、アルコール依存症経験者や家族の話を聞くのも有効な手段とされています。

② 医療機関への受診を促す

アルコール依存症が疑われる場合、タイミングを計り、依存症専門の医療機関、精神科・心療内科、精神保健福祉センターへの相談をすすめましょう。

ただし、アルコール依存症は「否認の病」とも言われるように、本人が病気を受け入れにくい傾向があるとされています。

無理に受診をすすめると、お酒の影響でつい攻撃的な言葉を発したり、暴力をふるう可能性もあります。

医療機関への受診をすすめる際は、 強制や高圧的な態度で臨むことを避け、「専門家に相談してみよう」「一緒に話を聞きに行こう」など、提案の形で促しましょう。

また、受診の際は家族が同席することで、不安を軽減する効果も期待できます。

アルコール依存症は恥ずかしいことではなく、飲酒に対するコントロールを失う病気なので、意志の弱さとは関係ありません。

家族だけで隠したり抱え込んだりせず、可能な限り早い段階で専門家に相談し、適切な治療を受けましょう。

③ 世話を焼き過ぎない

アルコール依存症の治療において、家族が世話を焼かない、干渉しないことが治療のひとつとされています。

「お酒による失態の後始末をする」「暴力・暴言が怖いから、お酒を買ってきてあげる」「周囲に知られると恥ずかしいから、家で一緒に飲む」など、家族が本人の飲酒を助長しないことが大切です。

毅然とした態度をとらないと、本人が家族に依存するようになり、治療がすすみづらいとされています。

サポートが辛くなった時は、行政機関や医療機関、自助グループなど、外部の力を借りることで家族の負担も楽になると考えられています。

身内だけで問題を解決しようとせず、周囲の力を上手に借りていきましょう。

④ 本人の回復を信じる

アルコール依存症の治療は本人だけでなく、家族もさまざまな問題に悩みながら、対処するケースが多いとされています。

回復の兆しが見えず、時には「やっぱりこの人はダメなんじゃないか」「もしかしたら、自分にも責任があるのでは」と思い悩むことがあるかもしれません。

しかし、本人にも「こんな飲み方はいけない」「もとの生活に戻りたい」と感じている健全な部分が存在していると言われています。

治療がすすめば症状は回復し、本来のその人自身の姿に戻ります。

回復を信じることは、治療をすすめる力につながると考えられているため、「この人は変われる」と信じ、小さな変化を喜びながら見守りましょう。

① アルコール依存症に関する正しい知識をもつ

アルコール依存症は、単なる飲み過ぎではなく、脳がアルコールに依存する病気です。

「お酒がやめられないのは、意志が弱いから」といった誤解をなくし、リスクを正しく理解することが予防の第一歩です。

厚生労働省や、専門機関の情報を参考に、正しい知識を身につけましょう。

参考：アルコール健康障害対策｜厚生労働省

② 適度な飲酒を心がける

厚生労働省では、「節度ある適度な飲酒」を推奨しています。

節度ある適度な飲酒とは、1日の純アルコール摂取量を20g程度に抑える飲み方です。

純アルコール20gをお酒の量に換算した場合、以下の目安になります。

※上記のお酒の量は、飲酒習慣がない人に対してすすめるものではありません。

体質的にアルコールに弱い方は、より少ない飲酒量を心がける必要があると考えられています。

最近では、手軽にアルコール耐性を調べられる体質検査キットが登場しています。

自分のアルコールの分解能力がわかるため、自分に合った飲酒量や飲み方を把握できます。

関連記事では、実際にアルコール体質検査を利用した体験談を紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
『【体験談】アルコール体質検査を体験｜適切な飲酒量を把握して上手に付き合おう』

参考：アルコール｜厚生労働省

③ 休肝日を設ける

アルコールは依存性薬物とされているため、飲酒習慣がある方はアルコール耐性がつくことがあり、徐々に飲酒量が増加する可能性があると言われています。

休肝日を設け、肝臓を休ませることで臓器が修復され、飲酒総量を減らすことが可能です。

厚生労働省による研究では、同じ飲酒量でも休肝日がない人とある人では、総死亡リスクが異なることが分かっています。

お酒を飲む習慣がある方は、週に2日の休肝日を設けるように心がけましょう。

以下の関連記事では、休肝日の設け方や、設ける上での注意点などについて解説しています。休肝日を設ける際の参考にしてください。
関連記事：『休肝日が肝臓にもたらす効果は？「意味がない」噂は本当？適切な方法・注意点を解説』

参考：休肝日｜厚生労働省 / 飲酒パターンと総死亡との関連について｜国立研究開発法人 国立がん研究センター

④ 兆候を感じたら早めに医療機関を受診する

アルコール依存症は「早期発見・早期対処・早期治療」が有効とされています。

発見と対処が早ければ早いほど、回復に要する時間や労力も軽くなると考えられています。

本人の状況次第では、受診を拒否したり、内科の受診だけで済ませるケースもあるようです。

まずは家族や周囲の人がアルコール依存症への理解を深め、本人と寄り添う形で治療に導くことが回復への第一歩となります。

医療機関への受診が難しい場合は、自助グループや断酒会への参加を促してみましょう。