免許停止になる条件は?違反点数や免停期間・講習や返還までの流れを解説
免許停止は、違反点数が一定の基準を超えると、車両の運転免許が一時的に停止される行政処分です。
前歴の有無や違反点数、講習の受講によって期間が異なりますが、詳しい内容を知らないドライバーは意外と多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、免許停止になる違反点数や免停期間、免許証の返還までの流れ、免停期間を短縮する方法について解説します。
一発で免許停止になる交通違反や、累積点数の確認方法についても紹介するので、過去に違反点数が加算されている方や、違反時の適切な対処について知りたい方は、参考にしてください。
目次 / このページでわかること
1.免許停止(免停)とは?
免許停止とは、交通違反や交通事故を起こした際に、その内容に応じて定められている点数によって、運転免許が一定期間使用できなくなる行政処分です。
また、重大違反のそそのかし行為や、道路外での事故など、点数制度によらない場合でも免許停止などの処分が科されます。
免許停止処分を受けると、運転免許証を一時的に返納しなければなりません。その後、停止処分者講習の受講で、免停期間を短縮できる場合があります。
免許停止は、交通ルールや法令遵守の大切さを再確認するための機会でもあります。最善なのは、日頃から安全運転を心がけ、交通ルールを守ることです。自分や他人の安全を脅かさないように、免許停止に該当する行為を未然に防ぎましょう。
2.免許停止(免停)になる違反点数と免停期間
免許停止になる違反点数と免停期間は、前歴の有無によって異なり、前歴がある場合は、再発防止のための厳しい規定が設けられています。
そこで本章では、前歴の有無による違反点数と免停期間の違いについて、詳しく解説します。
前歴がない場合
「前歴がない」というのは、「過去に、免許停止や免許取り消しの行政処分を受けたことがない」という意味です。
前歴がない人が「過去3年間の違反点数が6点以上14点以下」になった時、免許停止の行政処分が科されます。
違反点数ごとに免停期間が異なり、危険性の度合いに応じて、一発で免許取り消しの可能性が十分にあり得ます。前歴がない場合における、行政処分の内容は以下のとおりです。
違反点数 | 免許停止期間 |
---|---|
6点〜8点 | 停止30日 |
9点〜11点 | 停止60日 |
12点〜14点 | 停止90日 |
累積点数が15点を超えると免許取り消しになり、危険性の度合いによって取り消し期間が異なります。免許取り消しになる違反点数と、期間は以下のとおりです。
違反点数 | 免許取消期間 |
---|---|
15点〜24点 | 取消1年 |
25点〜34点 | 取消2年 |
35点〜39点 | 取消3年 |
40点〜44点 | 取消4年 |
45点以上 | 取消5年 |
交通違反には「一般違反行為」と「特定違反行為」の2つの区分があり、特定違反行為を行った場合、最長で10年の免許取り消しという、重い行政処分が科されます。
特定違反行為とは、
- 運転殺人傷害等
- 危険運転致死傷等
- 酒酔い運転
- 麻薬等運転
- 妨害運転
- 救護義務違反
が該当します。
前歴がある場合
前歴がある場合、違反点数の基準が厳しくなります。前歴がある場合における、行政処分の内容は以下のとおりです。
前歴の回数 | 違反点数 | 免許停止期間 |
---|---|---|
1回 | 4点〜5点 | 60日間 |
6点〜7点 | 90日間 | |
8点〜9点 | 120日間 | |
2回 | 2点 | 90日間 |
3点 | 120日間 | |
4点 | 150日間 | |
3回 | 2点 | 120日間 |
3点 | 150日間 | |
4回以上 | 2点 | 150日間 |
3点 | 180日間 |
前歴がある場合、免許停止処分のボーダーラインが低いため、信号無視や一時不停止などの交通違反を2回以上繰り返すと、免許停止になります。
また、前歴が1回の場合は10点以上、2回の場合は5点以上、3回・4回の場合は4点以上で、1年〜5年の免許取り消しの行政処分が科されます。
参考:行政処分基準点数|警視庁
【条件あり】免停後の違反点数はリセットされる
違反点数がいつまでも累積する仕組みだと、軽微な違反でも免許停止になるため、一定の条件を満たせばリセットされる仕組みになっています。
違反点数がリセットされる条件は3つです。
- 免停期間の終了後、1年間無事故・無違反
- 免停期間の終了後、2年間無事故・無違反で、3点以下の違反後に3か月以上無事故・無違反
- 違反者講習を受けること(条件あり)
どれかひとつを満たすことで、違反点数は0点にリセットされます。ただし、点数は消えるのではなく、違反歴として記録されることを覚えておきましょう。
また、違反者講習の対象となるには「3点以下の軽微な交通違反の累積である」など条件があるため、すべての違反者に適用される制度ではありません。
参考:点数計算の優遇|警視庁
3.免許停止(免停)から返還までの流れ
交通違反で警察から取り締まりを受けた場合、その場ですぐに免許停止が科されるわけではありません。
免許停止から返還までの手続きには、いくつかのステップがあります。通知書が届いたら速やかに指示に従わなければなりませんが、通知書の種類によって対応が異なるため注意が必要です。
そこで本章では、通知書が届いた後の出頭手続きから返還までの流れを詳しく解説します。
免許停止通知書が届く
警察から取り締まりを受けた1週間〜1か月後に、自宅に「免許停止通知書」が届きます。通知書が届いたら、指定された日時と場所に出頭してください。
通知書には「運転免許行政処分出頭通知書」と「意見の聴取通知書」の2種類があります。累積点数や行政処分の内容によって手続きが異なるため、次の項目でそれぞれ解説します。
運転免許行政処分出頭通知書の場合
運転免許行政処分出頭通知書は、累積点数が免許停止処分に達した人に郵送されます。通知を受け取ったら、指定された日時・場所に出頭する必要があります。
出頭場所は自治体によって異なりますが、免許センターが指定される場合が多いです。
出頭しない場合、懲役刑や罰金刑が科される可能性があるので、必ず出頭しましょう。なお、出頭には代理人(成人)を立てることも可能です。その際は「依頼者の免許証・委任状・身分証明書」を持って出頭してください。
出頭したら「運転免許停止処分書」を受け取り、免許証を提出します。免許の停止期間は、出頭した日から始まり、停止期間中は運転ができません。免停中に運転した場合、無免許運転として免許取り消しの対象になります。
意見の聴取通知書の場合
意見の聴取通知書は、運転免許の停止90日以上または、免許の取り消し処分が科される予定の人に郵送されます。
「意見の聴取」は、意見を述べ、本人に有利な証拠を提出する機会を与え、処分が公正適切に行われることを保障するための制度です。
通知書が届いたら、同封のハガキで出欠を返答し、記載された日時・場所に、通知書・免許証・印鑑を持って出席します。正当な理由がある場合を除き、期日を変更することはできません。
この日から累積点数に応じて免許停止期間がスタートします。
なお、意見の聴取も代理人を立てることが可能です。その際は「依頼者の免許証・委任状・身分証明書」を用意する必要があります。
また、弁護人や補佐人と一緒に出席することも可能ですが、その際は「補佐人出頭許可申請書」の提出が必要です。意見の聴取を欠席した場合、書面によって処分が決定されます。
参考:意見の聴取|警視庁
停止処分者講習を受ける
停止者処分講習とは、免許停止などの行政処分を受けた人に対する講習で、自動車の運転に関する危険性の高い運転者を再教育し、安全な運転者に育成するための講習です。
免許停止期間が開始したら、停止期間に当てはまる区分の「停止処分者講習」を受講します。講習の受講は任意です。
免停期間を短縮させる必要がない方は、受講する必要がありません。詳しい内容は次の章で説明します。
免停期間終了後に免許証が返還される
免停期間が満了になったら「運転免許停止処分書」を持参し、処分書に記載された場所に行き、免許証の返還手続きを行います。
代理人が手続きを行う場合は、委任状、および代理人の身分を確認できる書類や身分証が必要です。
停止期間が満了した翌日が土曜、日曜、祝日、休日にあたる場合は、その直前の平日に返還されます。ただし、この場合の代理人による返還は不可です。
なお、運転免許停止処分書があれば、免停中の更新手続きが可能です。ただし、新しい免許証の交付は免停期間の満了後になります。
参考:免許証の受取手続|警視庁
4.講習の受講で免停期間を短縮できる
免許停止処分を受けた場合、指定された講習を受講することで免停期間の短縮が可能です。免停期間に応じて講習の費用・内容・日数などが異なります。
そこで本章では、停止者処分講習の種類や受講内容、注意事項について解説します。
停止処分者講習の概要
停止処分者講習は、免許停止を受けた人を対象に、運転シミュレーターや座学での講義、運転の適正診断や適性検査を行う、任意の講習です。
講習を受けることで、20日〜80日間の免停期間の短縮が可能です。短縮日数は、講習の最後に行われる考査の成績によって決定します。
講習は、停止処分期間の区分ごとに、短期講座・中期講座・長期講座の3種類があり、手数料や講習時間などが異なります。
講習の種類 | 対象者 | 手数料 | 時間 | 短縮日数 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
優 | 良 | 可 | ||||
短期 | 39日以下 | 11,700円 | 6時間(1日) | 29日 | 25日 | 20日 |
中期 | 40日以上〜89日以下 | 19,500円 | 10時間(2日) | 30日 | 27日 | 24日 |
長期 | 90日以上〜180日以下 | 23,400円 | 12時間(2日) | 45日 | 40日 | 35日 |
60日 | 50日 | 40日 | ||||
70日 | 60日 | 50日 | ||||
80日 | 70日 | 60日 |
前歴なしで30日間の免停が科された人の場合、考査で「優」の評価を得れば29日の短縮が可能で、免許証はその場で返還され、翌日から運転ができます。
考査の結果が「不可」の場合、短縮は適用されません。ただし、講習終了後に考査を受けることができ、50%以上の評価を得れば短縮可能です。
受講する際の注意事項
中期講習と長期講習は、受講予約が必要です。講習では運転実技があるため、サンダル・下駄・ハイヒールなどの履物での受講はできません。そのほか、当日必要なものは以下のとおりです。
- 運転免許証停止処分書
- 受講申請書
- 印鑑
- 筆記用具
- 講習費
- メガネ(コンタクト)
なお、出頭期日に遅れた場合や、通知書に記載された違反日以降に違反した場合は、講習の受講ができない可能性があります。
短縮する意思がある方は、取り締まり後も交通ルールを守り、必ず指定された期日以内に、手続きを済ませるようにしましょう。
5.免許停止(免停)に関するよくある質問
本章では、免許停止に関するよくある質問について紹介します。
前歴がある方や、取り締まり直後で通知書がまだ届いていない方、自分の累積点数を知りたい方は参考にしてください。
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一発で免停になる交通違反は?
前歴がある人の場合、違反点数が2点〜4点以上になると一発で免許停止になります。一時不停止や追い越し、信号無視などの違反は1回で2点以上加算されるため注意が必要です。
前歴がない人が、一発で免許停止になる違反点数は6点以上であり、1回で6点の違反点数がつく行為は以下の4つが挙げられます。
1回で6点の違反点数がつく行為 違反行為 詳細 速度超過 一般道30km/h以上、高速道路40km/h以上50km/h以下で走行した場合 無車検運行 車検切れの自動車で走行した場合 無保険運行 自賠責保険・自賠責共済の期限切れ状態で走行した場合 携帯電話使用等(交通の危険) スマホ・カーナビ・ゲーム機などの画面注視により事故を起こすなど、交通に危険を生じさせる運転をした場合 また、酒酔い運転や酒気帯び運転などは、前歴の有無にかかわらず、一発で免許取り消しになります。年末年始の宴会シーズンで気がゆるみ、軽い気持ちで飲酒運転を行わないよう、十分気をつけてください。
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累積点数を確認するには?
累積点数を確認したい場合は、「累積点数等証明書」を申請すると確認可能です。
累積点数等証明書は、各都道府県の自動車安全運転センターに申請すると発行されます。発行の際は、670円(消費税非課税/2024年12月現在)の手数料が発生します。証明書を入手したら、必要事項を記入して、自動車安全運転センターの窓口、または郵送で申し込みましょう。
なお、スマートフォン用の申請アプリでも申し込み可能です。
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免許証を郵送で返還してもらうことは可能?
免許証は郵送不可なので、運転免許センターなどに直接出向いて受け取る必要があります。
違反者本人が、事故や怪我などのやむを得ない事情で動けない場合は、代理人に頼むことが可能です。ただし、委任状と代理人の身分証明書が必要です。
6.まとめ|免許停止は重い罰則!日頃から安全運転を心がけよう
本記事では、免許停止になる違反点数と停止期間、返還までの流れ、免停期間を短縮する方法について紹介しました。
免許停止は、軽微な交通違反の累積でも適用される可能性が十分にあります。非常に重い行政処分であり、一度免許停止になると再犯時の処分も厳しくなります。
日頃から交通ルールを守り、周囲の状況に注意を払うことが大切です。本記事の内容をきっかけに、免許停止処分の重大性を理解し、安全運転を心がけていきましょう。