電車(鉄道業界)の飲酒運転における罰則は?飲酒運転の判定基準や過去の事例を紹介
近年、飲酒運転による交通事故は、社会問題としてテレビやネットニュースで取り上げられています。
とくに鉄道業界においては、運転士の飲酒運転が発覚した場合、乗客の命や車両の安全を守る義務を怠ったとして、厳しい罰則が科されます。
電車の飲酒運転は、会社の信用を落とすだけでなく、他人の命をも奪いかねない大変危険な行為です。
そこで本記事では、鉄道業界の飲酒運転に関する基準や、電車の飲酒運転で科される罰則、過去に発生した飲酒運転の事例を紹介します。
各交通業界の飲酒運転に関する取り組みについても紹介するので、運行管理者の方や、大型車両のドライバーの方、船舶・飛行機・電車などの運転士の方は、参考にしてください。
目次 / このページでわかること
1.鉄道業界の飲酒運転に関する基準
車の飲酒運転の場合、呼気1リットル中のアルコール濃度の数値が0.15mg以上検出されると「酒気帯び運転」、あきらかに正常な判断ができない状態での飲酒運転は「酒酔い運転」と判断され、それぞれ明確な基準が設けられています。
では、電車の飲酒運転の場合、どのような基準が設けられているのでしょうか?
本章では、鉄道業界の飲酒運転に関する基準や、基準が設けられた背景について解説します。
基準が改正された背景
1980年代、運転士の飲酒運転による脱線事故が相次ぎ、鉄道業界の規律回復に向けた取り組みが企業や組織で行われました。しかし、法律上の基準や規定の大きな改正はなく、車のように、呼気中アルコール濃度の具体的な基準値などは定められませんでした。
2000年代に入ってから、社会全体における、各交通業界に対する飲酒運転の規制強化の動きがあり、国土交通省は、2019年10月18日より電車の飲酒運転に関する基準を改正しています。
運転士へのアルコールチェックに関する規定
2019年の改正により、事業者に対し、運転士の酒気帯びの確認について項目が追加されました。
アルコールチェックに関する重要な項目は以下の4つです。
- 仕業前後に酒気帯びの有無を確認
- 酒気帯びの有無の確認はアルコールチェッカー(ストロー式・マウスピース式)の使用に加え目視等により行う
- 仕業前に酒気を帯びた状態が確認された場合には当該係員の乗務禁止
- 「確認を行なった者および確認を受けた者の氏名・確認日時・方法・酒気帯びの有無」の記録と保存
事業者と運転士は、必ず運転前にアルコールチェックをしなければなりません。適切に行わない場合、行政処分の可能性があります。
飲酒運転の判断基準
国土交通省では、運転士に対し、酒気を帯びた状態で列車等を操縦した場合の、行政処分適用の目安を新たに定めています。
- 身体に血液0.2g/l以上又は呼気0.09mg/l以上のアルコール濃度を保有している場合
- 上記に関わらず、飲酒の影響により、反応速度の遅延など列車等の正常な操縦ができない場合
また、「呼気中アルコール濃度が0.05mg/l以下であること」「運転前の一定期間の飲酒を禁止する」といった独自の社内規定を設けている鉄道会社もあり、各社が飲酒運転防止に力を入れています。
2.電車の飲酒運転で科される罰則
電車の飲酒運転は、厳しい行政処分と会社による処分が科されます。
そこで本章では、電車の飲酒運転で科される処分や罰則について解説します。
電車の飲酒運転をした場合の行政処分
国土交通省が定めた基準である「血液0.2g/l以上又は呼気0.09mg/l以上のアルコール濃度が検出された場合」もしくは「飲酒による反応速度の遅れや、正常な操縦ができない場合」は、運転免許取り消しの行政処分が下されます。
呼気0.09mg/lのアルコール濃度は、二日酔いの状態で検知される可能性があります。「前日の夜に飲酒したけど、一晩寝たから大丈夫だろう」と判断して運転すると、免許取り消しになりかねません。
飲酒運転には厳しい処分が下されることを、改めて理解し、運転前に必ずアルコールチェックを行いましょう。
会社規定で減給や停職の可能性がある
電車の運転士が飲酒運転を行った場合、免許取り消しの行政処分に加え、会社規定による減給や停職、懲戒免職処分を受ける可能性が高いです。 懲戒免職処分を受けると、退職金が減額または不支給となるだけでなく、再就職も難しくなる現実があります。
また、会社が独自に設けた基準に該当した場合においても、減給や停職などの処分を受ける可能性があります。
知らぬ間に飲酒運転にならないよう、お酒を断る強い意志も必要です。付き合いの延長でどうしても飲まざるをえない場合は、飲酒量を減らしたり、適度に水を飲んだりするなど、工夫して飲むように心がけてください。
3.鉄道業界における過去の飲酒運転事例
鉄道業界では、飲酒運転の報告事例があとを絶ちません。そこで本章では、電車の飲酒運転の恐ろしさを理解するとともに、鉄道業界における過去に発生した飲酒運転による重大な事故や、近年発生した事故の事例を紹介します。
発生年 | 事故の概要 |
---|---|
1984年 | 寝台特急列車の運転士が飲酒運転を行い、高速でホームに入線・激突。12両の客車の脱線、負傷者32名。 |
1988年 | 機関士の大量飲酒による居眠り運転で、コンテナ貨車19両が脱線転覆。 |
2022年 | 運転士1名が車両基地内において繰り返し飲酒運転を行っていたことが発覚。国土交通省運輸局から改善指示が出された。 |
2024年 | 運転士1名がアルコール検査を行わず、代わりに同僚に検査を受けさせ、不正に乗車。検査を逃れていた運転士は懲戒解雇。役員を含む16名が減給処分。 |
2024年 | 社内規定のアルコール基準値を超える数値が出たが、虚偽の数値を報告し業務にあたる。会社による減給と訓戒処分が下される。 |
1990年以降、飲酒運転による電車の重大な事故は発生していませんが、現場におけるずさんなアルコールチェックの現状が問題視されています。
4.各交通業界における飲酒運転防止の取り組み
飲酒運転防止に向けた取り組みは、鉄道業界以外でも行われています。
本章では、自動車運送業界・船舶業界・航空業界における取り組みや、法律の改正について紹介します。
自動車旅客運送業界(緑ナンバー)
バス・トラック・タクシーなど、緑ナンバーに対するアルコールチェックの義務化が2011年5月より始まりました。
運転前の点呼において、アルコールチェッカーの使用が義務付けられ、2013年には運行管理者立ち合いのもと、アルコールチェックを行うことになっています。
また、所属する営業所以外の営業所で業務を開始・終了する場合、一定の条件のもとで、営業所に設置された高性能アルコールチェッカーの使用が認められています。
さらに、2022年4月から白ナンバーもアルコールチェックの義務化の対象になりました。
船舶業界
船舶の飲酒運転は法律によって禁止されており、違反した場合は行政処分が下されます。具体的には、「呼気0.15mg/l以上のアルコール濃度」が検知された場合、当直の禁止・指導・戒告の対象となります。
2018年に発生したクルーズ船の岸壁衝突事故において、乗組員が酒気帯び状態であったことが確認されたことを受け、アルコールチェッカーを用いたアルコールチェック体制の取りまとめが進められました。
また2020年4月より、船長は当直職務にあたる船員に対して、アルコールチェッカーを用いた酒気帯びの有無を確認することが義務付けられています。
航空業界
航空業界では、2019年1月よりすべての操縦士、客室乗務員に対する飲酒基準が定められました。
具体的には、「血液0.2g/l未満、呼気0.09mg/l未満」であることが求められ、違反した場合、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される可能性があります。
加えて、操縦士・客室乗務員・運転前整備を行う整備士・対空通信を行う管理者に対して、アルコールチェッカーを用いたアルコールチェックが義務化されています。
次の章では、法令を遵守しつつ適切にアルコールチェッカーを使用するために、重要性の高い検知器の機能について紹介します。
5.業務用アルコールチェッカーに必要な機能
鉄道業界、および旅客運送自動車、船舶、航空業界では、飲酒運転防止に向けた取り組みが強化され、アルコールチェッカー(アルコール検知器)を用いたアルコールチェックが義務化されています。
現在、さまざまな性能を備えたアルコールチェッカーが販売されていますが、交通業界では業務用アルコールチェッカーを採用しているケースが一般的です。
しかし、業務用アルコールチェッカーと言えど、適切に運用する上で必要な機能を備えていない検知器もあります。
そこで本章では、業務用のアルコールチェッカーに必要な機能や条件を3つ紹介します。また、高性能な業務用アルコールチェッカーが採用されている理由やメリットについても触れていきます。
検知精度が高い
業務の中で使用するアルコールチェッカーの検知精度は重要です。
高性能な業務用アルコールチェッカーは、検知精度が高く、何度息を吹きかけても安定した数値を検知できます。とくに「J-BAC認定機器」と表記されている場合は、高性能と認定されたアルコール検知器の証明なので、アルコール検知器を選ぶ際の目安にして良いでしょう。
一般的に高性能な業務用のアルコールチェッカーは高額なものが多いですが、定期的なメンテナンスサービスを行っているメーカーもあり、精度を保ちつつ、コストを抑えられるメリットがあります。
なりすまし防止が可能
業務用アルコールチェッカーの中には、アルコールチェックの際に顔写真を撮影し事前に登録されたデータと照合したり、パスワードや社員IDを用いて特定の人物しか検査を受けられない機能が搭載されている検知器があります。
電車の運転士による、替え玉のアルコールチェックが過去に問題になりましたが、なりすまし防止機能が搭載されたアルコールチェッカーを選ぶことで、未然に不正を防げます。
データ(クラウド)で管理が可能
業務で使用するアルコールチェッカーは、管理業務が効率的に行えることも大切です。アルコールチェッカーを選ぶ際、データ管理ができる機種を選びましょう。
データ管理には、主に2つの管理方法があり、検査結果が自動でクラウド上にアップロードされる「クラウド保存」と、USBや管理ソフトを用いて検査結果を保存する「ローカル保存」があります。
運転士や管理者が、記録用紙を整理する負担を大幅に削減でき、数値の虚偽報告や改ざんを防ぐことが可能です。
6.業務用クラウド型アルコールチェッカーは「アルキラーNEX」
日本製センサーを搭載したアルキラーNEXは、検知精度が高く運用方法に合わせて検知器を選んでいただけます。
「いつ・どこで・誰が・どの検知器で」アルコールチェックしたかをクラウドで確認でき、顔認証やワンタイムパスを用いることで、なりすましの防止も可能です。
さらに、「カートリッジ交換」「センサー洗浄」「故障修理(※保証範囲内の故障に限る)」にかかる費用が0円なので、コストを抑えて利用できます。
法令遵守しながら、管理者の負担軽減や会社のコスト削減が期待できるため、業務用アルコールチェッカーの導入をお考えの方は、下記のリンクから詳しい内容をご確認ください。
7.まとめ|電車(鉄道業界)における飲酒運転は厳罰の対象に
本記事では、電車の飲酒運転について、飲酒運転の基準や罰則内容、各交通業界における飲酒運転防止への取り組みを紹介しました。
飲酒運転は、鉄道業界において重大な過失であり、「免許取り消し」という厳しい罰則が定められています。会社によっては減給・停職・解雇などの処分が下される可能性があるため、一人ひとりが飲酒運転への危険意識を持つことが重要です。
また、2019年10月からアルコール検知器を使用したアルコールチェックが義務化されており、各企業に対して徹底した法令遵守が求められています。
円滑なアルコールチェック体制を整え、利用者が安心して乗車できる運行を目指しましょう。